デュラム小麦100%だと生地がまとまりません。
デュラム小麦は「超硬質小麦」と呼ばれるほど硬い種類の小麦です。普通の小麦の製粉機で製粉すると機械が壊れるくらいの硬さを持っています。この硬さのため、デュラム小麦は細かい粉状にできず、粗い砂状の「セモリナ」という状態で流通します。
デュラムセモリナ粉は鮮やかな黄色が特徴です。この色は小麦そのものの色で、着色料は一切使われていません。粒子はつぶつぶとした粗めの質感で、手に取るとザラザラした感触があります。タンパク質含有量は約12~14%と強力粉より高く、グルテンも強力ですが、普通の小麦とは性質が異なります。
伸びにくく歯切れがよいのが最大の特徴です。
薄力粉や強力粉と比べるとグルテンの質が強く、弾力とコシを生みやすい性質を持ちます。調理時にゆでても形が崩れにくく、アルデンテの食感を長く保てるのはこのためです。モチモチした食感と小麦の香りが強いパスタを作るなら、デュラムセモリナ粉は欠かせない材料といえます。
ただし注意点があります。デュラム小麦100%では家庭で生地がまとまりにくいという問題です。業務用の押し出し成形機があればセモリナ粉100%でも製麺できますが、手打ちの場合は強力粉や00粉とブレンドする方が扱いやすくなります。セモリナ粉と強力粉を3対1の割合で混ぜるのが基本です。
デュラム小麦は北アメリカ、北アフリカ、地中海沿岸などで栽培されています。日本では主にカナダ産のデュラム小麦を使用していますが、最近では国産デュラム小麦「セトデュール」も兵庫県などで生産されるようになりました。純国産パスタを作りたい農家にとって、セトデュールの栽培は新しい選択肢となっています。
辻調理師専門学校の小麦粉解説ページでは、デュラム小麦の蛋白質含有量や物性について詳しく説明されています。
パスタ生地の基本配合は、粉100gに対して卵1個です。卵のサイズはMサイズ(約63g)を基準にします。全卵は約76%が水分なので、卵M1個で約48gの水分が加わる計算になります。デュラムセモリナ粉100gと卵1個だけでは水分が足りないため、水を小さじ1~大さじ1程度(5~15ml)追加します。
加水率は40~50%が扱いやすい目安です。加水率とは粉に対する水分の割合のことで、たまご100g(約76gの水分)と粉200gだと約50%になります。この比率を守ればオリーブオイルなしでもまとまりやすい生地ができます。イタリアの伝統的な生パスタは卵ベースで45%前後の加水率が多く、この範囲に収めることでプロに近い仕上がりが実現できます。
卵を少なくする場合は水で調整してください。
卵黄だけを使う場合もあります。
卵黄は脂肪が多いので麺がやわらかくなり、濃厚な味わいになる利点がありますが、麺のコシは弱くなっていきます。全卵を使う方がバランスのよい食感になるため、初心者には全卵での配合をおすすめします。
セモリナ粉と強力粉の配合比率は用途によって変えられます。セモリナ粉100gと強力粉100gの合計200gに、卵2個(約100g)と水を少量加える配合が作りやすいですね。強力粉の割合を増やすとコシと粘り気が強い食感になり、セモリナ粉の割合を増やすとモチモチで歯切れのよい食感になります。
お好みに応じて調整してみてください。
塩は粉200gに対して小さじ1程度(約4g)加えます。塩にはグルテンを引き締めて生地にコシを出す役割があります。オリーブオイルは小さじ1~大さじ1(5~15ml)を加えると、生地がなめらかになり、茹でたときにパスタ同士がくっつきにくくなります。
ただしオリーブオイルは必須ではありません。
配合の微調整は気温や湿度によって必要です。生地がまとまらずパサパサする場合は水を小さじ1ずつ追加し、逆にベタつく場合は打ち粉として強力粉を少量振ります。この調整を繰り返すことで、季節を問わず安定した生地が作れるようになります。
生地をこねるとき、いきなり塊を作ると全体に卵の水分が馴染みません。ボウルに粉と塩を入れて混ぜ、中央をくぼませて溶いた卵とオリーブオイルを加え、菜箸でポロポロになるまで混ぜます。小さい塊を作り、しっかり卵を全体にいき届けさせてから、一つの塊にしましょう。
ある程度まとまったら作業台に移して力強くこねます。しっかりとこねて休ませることがもちもち感を生み出すコツです。こねることでグルテンが発生し、生地が弾力を持つようになります。目安としては最低でも10分程度こねることが推奨されます。表面がなめらかでツヤが出てくるまでこね続けてください。
生地をこねたら30分~1時間寝かせます。
これはグルテンを落ち着かせ、伸ばしやすくするために必要な工程です。こねた直後の生地はグルテンが緊張状態にあり、伸ばそうとしても縮んで戻ってしまいます。寝かせることによって生地が落ち着いて、きれいに延ばせるようになります。長く休ませるほど生地の中の小麦粉が水分を吸収して柔らかくなるんです。
寝かせる際はラップで包んで乾燥を防ぎます。室温で30分~1時間が基本ですが、冷蔵庫で一晩寝かせる方法もあります。一晩冷蔵庫で寝かせたことで、生地のグルテンが落ち着いて水分が均一に馴染み、驚くほど扱いやすい生地になるという報告があります。時間に余裕があれば冷蔵庫で寝かせる方法を試してみてください。
ただし寝かせすぎには注意が必要です。もし休ませなければ生地が切れやすくなり、逆に休ませすぎればコシを失います。
つまり重要なのは鍛錬と休息のバランスです。
衛生面も考えると、常温なら1~2時間、冷蔵庫なら一晩までが目安といえます。真空パックをかけることで保存性を高めることもできますが、家庭ではラップで包む方法で十分です。
生地が休んだら麺棒で伸ばすか、パスタマシンに通します。麺棒で伸ばす場合は、生地を4分割して薄く伸ばし、3つ折りにして包丁で切ります。パスタマシンがあれば効率的ですが、なくても手打ちパスタは十分作れますね。
日本初の国産デュラム小麦品種「セトデュール」は、農研機構西日本農業研究センターが育種した品種です。2016年に品種登録され、兵庫県加古川市の農事組合法人八幡営農組合が中心となって栽培が始まりました。当初は0.2ヘクタールの面積でスタートしたセトデュールの栽培も約40ヘクタールに拡大し、品質も劇的に向上しました。
デュラム小麦が国内でほとんど作られていないのは赤カビ病の発生など栽培が難しいためです。出穂期が梅雨に当たる日本での栽培には適していないため、日本での栽培技術がないとのことでした。セトデュールは早生品種で、成熟期は普通小麦「農林61号」と同程度になるよう改良されています。稈長が短いため倒伏に強く、単位面積あたりの収量は約60kg/aで「農林61号」と同程度と実用的な水準です。
赤カビ病対策が最重要課題になります。これまで作られていない品種の小麦を栽培することから、病害等の被害もありましたが、デュラム小麦を栽培する農家が増えることによって淡路島の荒廃農地が減少していくことが期待されています。兵庫県では淡路県民局北淡路農業改良普及センターの指導を受けながら試行錯誤を重ね、栽培技術を確立してきました。
施肥と赤かび病対策は必須です。現在、兵庫県では八幡営農組合が「セトデュール」の種子を生産し、その種子で同組合のほか複数の農家も栽培しています。種子の供給体制が整えば、新規参入する農家も安心して栽培を始められます。
農研機構の事例紹介ページでは、セトデュールを100%使った乾麺パスタの製品化について詳しく紹介されています。
栽培面積を瀬戸内地域で10倍に拡大できると、総売上高は4.7億円になるという試算があります。八幡営農組合では3年後に小麦100tの生産、パスタ販売6tを目標としています。純国産パスタは付加価値が高く、学校給食や地域ブランド商品として販路が広がっています。加古川パスタは「食品産業技術功労賞」を受賞し、地域経済の活性化に貢献しています。
農家にとってデュラム小麦栽培のメリットは、普通の小麦より高値で取引される点です。パスタ用として需要が安定しており、契約栽培であれば販路も確保されます。一方で赤カビ病対策のコストと手間がかかるため、普及センターや農協のサポートを受けながら栽培技術を学ぶ必要があります。栽培を検討する場合は、まず地域の農業改良普及センターに相談してみてください。
手打ちパスタの茹で時間は2~4分が目安です。乾燥パスタが7~11分かかるのに対し、生パスタは水分を含んでいるため短時間で茹で上がります。麺の太さによって時間を調整し、アルデンテの食感を目指すなら少し硬めで湯から上げましょう。
お湯の量はパスタ100gに対して1リットルが基本ですが、フライパンで茹でる場合は400mlでも十分です。塩は湯1リットルに対して大さじ1(約10g)加えます。塩を加えることでパスタに下味がつき、コシも出ます。沸騰したお湯にパスタを入れ、くっつかないように最初の1分間は菜箸でかき混ぜてください。
茹で上がったら湯切りしてすぐにソースと絡めます。生パスタは乾燥パスタより水分が多いため、ソースの濃度を少し濃いめに調整すると味がぼやけません。オリーブオイルベースのシンプルなソースでも、デュラムセモリナ粉の小麦の風味が引き立ちます。
手打ちパスタは作ったその日に食べるのがおすすめです。どうしても保存したい場合は、打ち粉をしっかりまぶして密閉容器に入れ、冷蔵庫で1~2日保存できます。
長期保存したい場合は冷凍保存が可能です。
パスタを一食分ずつ小分けにしてラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ入れます。
冷凍した生パスタは解凍せずそのまま茹でられます。凍ったまま沸騰したお湯に入れ、茹で時間を1~2分長くすれば茹で上がります。解凍してから茹でると麺がベタついて食感が悪くなるため、凍ったまま調理するのがコツです。
冷凍保存なら1ヶ月程度は品質を保てます。
市販の乾燥パスタと手打ちパスタの違いは、食感と香りです。乾燥パスタは100%セモリナ粉で卵は入っていませんが、手打ちパスタは卵を使うことでモチモチした食感と濃厚な風味になります。お店で食べるような生パスタの食感を家庭で再現できるのが、手打ちパスタの大きな魅力といえます。
デュラムセモリナ粉の手打ちパスタには、シンプルなソースが小麦の風味を引き立てます。オリーブオイルとニンニク、唐辛子だけのペペロンチーノは、生パスタのモチモチ食感を最大限に楽しめる組み合わせです。フレッシュなトマトを使ったトマトソースも相性抜群で、自家栽培のトマトがあればさらに贅沢な一品になります。
クリームソース系もよく合います。生クリームとパルメザンチーズで作るカルボナーラは、卵入りの生パスタと相性がよく、濃厚でまろやかな味わいになります。バターと醤油のシンプルな和風ソースも、デュラム小麦の香りが引き立つのでおすすめです。自家栽培の葉物野菜やキノコ類を加えれば、農家ならではの贅沢なパスタ料理が完成します。
地域の農産物を活かしたオリジナルソースの開発も可能です。兵庫県加古川市では地元産の野菜を使ったパスタソースを学校給食に提供し、地産地消の取り組みとして評価されています。自分で栽培したデュラム小麦と野菜を組み合わせることで、完全自給自足のパスタ料理が実現できます。
パスタに合わせる野菜は季節によって変えられます。春は菜の花やアスパラガス、夏はズッキーニやナス、秋はキノコ類、冬は白菜やほうれん草など、旬の野菜を使うことで年間を通じて多彩なパスタメニューが楽しめます。農家の強みは新鮮な食材がすぐに手に入ることです。この利点を活かして、レストラン顔負けの本格パスタを自宅で味わってください。
パスタ作りが軌道に乗れば、農産物直売所での販売も視野に入ります。手打ち生パスタや乾燥パスタを製品化し、地域ブランドとして販売する農家も増えています。加工品として販売することで農産物の付加価値が高まり、所得向上につながる可能性があります。まずは自家消費から始めて、技術が安定したら事業化を検討してみてください。
スマート農業の事例紹介記事では、デュラム小麦による町おこしの成功事例が詳しく紹介されています。