農作業で酷使した体には、腰痛や関節痛、筋肉痛がつきものです。痛みを我慢して作業を続けると、不自然な姿勢になり新たな怪我の原因にもなりかねません。ここでは、市販されている主な鎮痛剤の成分ごとの特徴、効果の強さ、副作用のリスク、そして農業従事者にとって重要な「眠気」の有無を一覧表にまとめました。
市販の解熱鎮痛薬は、大きく分けて「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と「アセトアミノフェン」の2つのグループに分類されます。NSAIDsは炎症を抑える力が強く、筋肉痛や関節痛に高い効果を発揮しますが、胃腸への負担に注意が必要です。一方、アセトアミノフェンは脳に作用して痛みを伝わりにくくするもので、抗炎症作用は弱いものの、胃腸への負担が少なく安全性高いのが特徴です。
参考)アセトアミノフェンとは?どんな成分?
以下の表は、代表的な成分と製品例、そして農業現場での使用における適性をまとめたものです。
| 成分系統 | 主な成分名 | 代表的な市販薬 | 鎮痛効果 | 抗炎症作用 | 胃への負担 | 眠くなる成分 | 農作業との相性 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| NSAIDs | ロキソプロフェン | ロキソニンS | 強い | あり | 中~大 | 含まないものが多い | ◎(痛み止めとして優秀) |
| NSAIDs | イブプロフェン | イブA錠、リングルアイビー | 中~強 | あり | 中 | 製品により含む | ○(成分確認が必要) |
| NSAIDs | アスピリン(アセチルサリチル酸) | バファリンA | 中 | あり | 大 | 含まないものが多い | △(胃荒れに注意) |
| アセトアミノフェン | アセトアミノフェン | タイレノールA、カロナール(処方薬) | 穏やか | ほぼなし | 小 | 含まない | ○(軽度の痛みや高齢者向け) |
| 複合成分 | イソプロピルアンチピリン | セデス・ハイ | 強 | 弱い | 中 | 含むことが多い | ×(運転時は避ける) |
厚生労働省:市販の解熱鎮痛薬の選び方(成分ごとの特徴や注意点が公的にまとめられています)
農業従事者が鎮痛剤を選ぶ際、最も理解しておくべきなのが「NSAIDs」と「アセトアミノフェン」の決定的な違いです。これらは痛みを止めるメカニズムが根本的に異なります。
参考)日本ペインクリニック学会
「とにかく今の激痛をなんとかして作業を終わらせたい」という場合はNSAIDs(ロキソプロフェンなど)が選ばれることが多いですが、「胃が弱い」「高齢である」「インフルエンザの疑いがある」といった場合はアセトアミノフェンが第一選択肢となります。
日本疼痛緩和医療学会:NSAIDsとアセトアミノフェンの作用機序の詳細解説
ドラッグストアには数え切れないほどの種類の市販薬が並んでいますが、実は主成分で見ると数種類に絞られます。ここでは代表的なブランドと、その成分の特徴を深掘りします。
選び方のコツとして、パッケージの「頭痛に」「生理痛に」という表記にとらわれすぎないことが重要です。成分がロキソプロフェンやイブプロフェンであれば、腰痛や筋肉痛にも同様に作用します。ただし、「腰痛専用」と書かれた薬には、ビタミンB群(神経修復)や血流改善成分がプラスされていることがあり、長期的なケアには向いている場合があります。
大正製薬:アセトアミノフェンの詳細な特徴と中枢神経への作用について
農業従事者にとって、鎮痛剤選びで最も警戒しなければならないのが「眠気」という副作用です。トラクター、コンバイン、田植え機、刈払機、チェーンソーなど、農業機械の操作中に一瞬でも意識が散漫になれば、命に関わる重大事故につながります。
多くの人が誤解していますが、「痛み止め=眠くなる」わけではありません。眠くなるのは、鎮痛効果を補助するために配合されている「鎮静成分」が原因です。
参考)https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/report_2023_1_T001.pdf
「いつも飲んでいる薬だから大丈夫」と過信せず、必ず箱の裏面の「使用上の注意」を確認してください。「運転操作禁止」の記載がある薬を飲んだ日は、事務作業や選別作業に切り替えるか、服用を控える勇気が必要です。
焼津市立総合病院:自動車の運転等危険を伴う作業に注意が必要な薬剤一覧
「痛み止めを飲むと胃が痛くなる」という悩みは、多くの農業従事者が抱えています。特に繁忙期には、空腹のまま作業を続け、慌てて痛み止めを流し込む…というシチュエーションが発生しがちですが、これは胃にとって最悪の条件です。
胃への負担を最小限にするための正しい選び方と飲み方を紹介します。
第一三共ヘルスケア:解熱鎮痛薬の正しい飲み方と胃を守るポイント
飲み薬(内服薬)だけでなく、湿布(外用薬)も農業従事者の必須アイテムです。これらを組み合わせることで、飲み薬の量を減らし、副作用のリスクを下げつつ腰痛や関節痛をコントロールすることが可能です。
外用薬であっても、成分は皮膚から血管に入り全身に回ります。アスピリン喘息(NSAIDs過敏症)の人は、飲み薬だけでなく、湿布でも発作が起きる可能性があるため、絶対に使用してはいけません。
EPARKくすりの窓口:腰痛に効く成分別湿布の選び方と強さ比較