ばれいしょ収穫機と掘取機作業能率

ばれいしょ収穫機の種類や掘取機の特徴、作業能率と損傷を減らす使い方、傾斜地での注意点まで整理し、現場で失敗しない選び方と段取りを具体化しますが、あなたのほ場条件では何を優先しますか?

ばれいしょ収穫機と掘取機

ばれいしょ収穫機の要点
⏱️
作業能率の見える化

「a/h」や「kg/時」の指標で、段取り・旋回・荷降ろしまで含めて現実的に比較します。

🛠️
損傷・皮むけ対策

掘り深さ、土の乾き、チェーン・ふるいの設定で、商品率に直結する傷を抑えます。

⛰️
傾斜地と重粘土の勘所

傾斜角と必要馬力、土塊混入への対処を押さえ、転倒リスクと選別負荷を下げます。

ばれいしょ収穫機の種類と掘取機の違い

ばれいしょの収穫機械は大きく分けると、「掘取機(ディガー/掘り取り)」と「ポテトハーベスタ(掘取り+搬送+選別+収納まで)」の考え方になります。ヤンマーの機械化カタログでも、収穫・運搬工程に「掘取機(BLシリーズ等)」と、拾い上げや荒選別・収納・運搬まで担う「いも類収穫機(例:GRA650など)」が同じ工程内で併記されており、役割の違いが整理されています。
掘取機は構造が比較的シンプルで、導入費・整備負担を抑えやすい一方、拾い上げ(人力)や後工程の段取りが必要になりやすいのが一般的です。ポテトハーベスタ側は「掘取り→搬送→選別」を一度で行えるため省力化しやすい、という方向性がカタログ上でも明確に示されています。


参考)https://nitinoki.or.jp/bloc2/riyou/guide/10hatasaku/02.pdf

現場で重要なのは「収穫できる」よりも、「どこまで機械にやらせるか」です。作業者の確保が難しい年は、拾い上げ・コンテナ詰め・運搬までを含めた動線設計ができる機械体系のほうが、結果として損失(拾い残し・打撲・日没による中断)を減らせます。


ばれいしょ収穫機の作業能率と作業速度の目安

作業能率はカタログ値だけでなく、旋回・荷降ろし・停止(調整)を含めた「全作業」で見ないと、導入判断を誤りがちです。北海道立総合研究機構(HRO)の傾斜地用ばれいしょ収穫機のデータでは、作業速度0.42m/sで7.7a/h、0.30m/sで4.5a/hと、速度差がそのまま能率差として出ています。
さらに同資料の表では、全作業時間の内訳として「実作業」「旋回」「荷降ろし」「停止(調整)」が並び、実作業だけを速めても、旋回・荷降ろし・調整が重いと全体が伸びないことが読み取れます。つまり、ほ場形状(短辺が短い=旋回が多い)、搬出路(荷降ろしに時間がかかる)、土塊混入(調整停止が増える)など、ほ場側の条件が能率を強く支配します。


参考)https://www.yanmar.com/media/news/2022/03/31062318/mechanization_bareisho_2203.pdf

実務上は、同じ機械でも「1時間で何a」ではなく、以下の3点をセットで把握すると計画が立てやすくなります。


  • ほ場1枚あたりの旋回回数(長辺・枕地の取り方で変わる)
  • 荷降ろしの頻度(コンテナ容量・運搬距離・道路状況)
  • 調整停止の頻度(雑草・茎葉残り・土塊・石の有無)

とくに「荷降ろし」と「調整停止」を減らすのが、機械を買い替えずに能率を上げる最短ルートです。


ばれいしょ収穫機で損傷と皮むけを減らす設定

ばれいしょは「掘り残し」をゼロに近づけようとして過度に攻めると、今度は傷(切傷・打傷・擦傷)や皮むけが増えて商品率が落ちます。HROの試験データでは、収穫損失割合は0.5%以下という低水準が示される一方、品種によって損傷発生割合や皮むけの値が変動しており、「同じ機械でも品種で結果が変わる」ことが数字で確認できます。
損傷を減らすための考え方は、単純に「優しく扱う」ではなく、衝撃が生まれる原因を潰すことです。


  • 掘り深さ:浅いと刃・爪との接触が増え、切傷・擦傷が増えやすい。深すぎると土量が増え、ふるい負荷が増えて落下衝撃が増える。
  • 土の状態:ヤンマーの資料では「乾燥状態で収穫」する旨が明記されており、湿土での付着・土塊化は選別負荷と傷の両方を悪化させやすい。​
  • 茎葉・マルチ:茎葉やマルチ残りは搬送部で詰まりやすく、停止(調整)を増やして能率も落とす。マルチ巻取機などの工程が提案されているのは、収穫機の前で障害物を減らす狙いがある。​

意外に見落とされがちなのが「掘ってから土を落とすまでの距離」です。土が落ちる前に塊茎同士がぶつかると、表皮の擦れ(皮むけ)になりやすいので、ふるい・ラセン・ローラー等の設定は「土を先に落としてから、いもを分離・整列させる」流れを意識すると事故が減ります。ヤンマーの資料にも、ラセンブラシで表皮を傷めず土を落とす、といった“傷を出さない除土”の思想が書かれています。

ばれいしょ収穫機の傾斜地・重粘土対策(独自視点:転倒リスクと土塊)

傾斜地では、作業能率より先に「安全に走れるか」が最優先です。HROの成果では、傾斜地での作業安定化のために軽量化(フレコンバッグ方式、ロータリバケット方式)や土塊粉砕装置の角度可変などの工夫が説明され、傾斜地圃場では重心が高いポテトハーベスタの使用が難しい背景も示されています。
また同資料では「圃場の傾斜度は10°以内」「適応トラクタは50ps以上」といった適用条件が明記されており、ここを外すと能率以前に危険側へ振れます。

傾斜地での独自視点として強調したいのは、転倒リスクだけでなく「土塊混入が増えたとき、誰がどこで処理するか」を先に決めることです。重粘土では、ばれいしょと同形の土塊が混入しやすいとされ、土塊粉砕装置の必要性が背景に書かれています。

この“同形土塊”が厄介なのは、後工程(選別台や人の目)での負荷が急増し、結果的に「拾い遅れ→日没」「選別疲れ→見落とし」「無理なスピードアップ→傷増加」という連鎖が起きやすい点です。機械側で粉砕・分離の工夫を入れるか、あるいは収穫前のほ場条件(排水・乾燥・土寄せの精度)を整えるか、どちらに投資するかで戦い方が変わります。


ばれいしょ収穫機の導入前チェックリスト(買う前に決める)

同じ「ばれいしょ収穫機」でも、作業体系が違うと必要な機能がまるごと変わります。ヤンマーの機械化体系のように、植付け〜茎葉処理〜マルチ除去〜収穫〜調製・出荷までを一連で見て、どこを機械化するかを先に固定すると、収穫機だけ過剰・不足になる事故を減らせます。
導入前に最低限そろえておきたいチェック項目を挙げます(現場で決裁を通すときにも使えます)。


  • ほ場条件:面積、枕地幅、傾斜(10°以内か)、石・土塊の出方
  • トラクタ適合:必要馬力(例:50ps以上条件など)、PTO・油圧・装着方式、車幅
  • 収穫後動線:圃場からの搬出路、荷受け場所、コンテナ規格、運搬手段
  • 労働力:拾い上げ要員の確保可否(掘取機中心か、ハーベスタ中心か)
  • 品質目標:加工用か青果用か、皮むけ許容、打撲の許容、洗浄・調製の方法(乾式が基本か)

とくに青果・直売系は「少しの擦れでもクレーム」に直結しやすいので、能率を追う年ほど“傷を出さない設定”を先に固定し、速度は後から上げるほうが結果的に得をします。


傾斜地・重粘土での機械改良と、損失・損傷・皮むけ・作業能率の具体データ(公的機関の試験成績)。
https://www.hro.or.jp/agricultural/center/result/kenkyuseika/seikajoho/h07s_joho/h0700025.htm
ばれいしょの機械化一貫体系(掘取機、いも類収穫機、マルチ除去、調製など工程全体の考え方と機械例)。
https://www.yanmar.com/media/news/2022/03/31062318/mechanization_bareisho_2203.pdf