バラ科アレルギーの野菜と果物とは?症状や加熱の対策

バラ科アレルギーで食べられない野菜や果物は何?シラカバ花粉症との意外な関係や、加熱すれば食べられるのか、豆乳による危険性まで詳しく解説します。あなたのその喉の違和感、実はアレルギーかも?

バラ科アレルギーの野菜と果物

バラ科アレルギーの要点チェック
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主な原因食物

リンゴ、モモ、サクランボ、イチゴなどの果実や、アーモンドなどの種子。

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花粉症との関連

シラカバやハンノキ花粉症の人は、交差反応で発症しやすい。

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加熱の有効性

アレルゲンは熱に弱いため、ジャムや缶詰なら食べられる場合が多い。

花粉症に関連して起こる食物アレルギーについて詳しく解説された記事です。

 

一般社団法人日本アレルギー学会「特殊な食物アレルギー/Q&A」

バラ科の野菜と果物の一覧!リンゴやイチゴに注意

 

バラ科アレルギーにおいて、注意が必要な「野菜」と「果物」は多岐にわたります。一般的にスーパーなどで「果物」として扱われているものの多くがバラ科に属していますが、農林水産省の分類ではイチゴなどは「果実的野菜(果菜)」として扱われるため、農業分野に関心がある方にとっては「野菜」という認識の方が正しいかもしれません。

 

バラ科の植物は、私たちの食卓に非常に身近な存在です。アレルギー症状を引き起こす可能性のある主なバラ科の食べ物を以下の表にまとめました。自分が普段好んで食べているものが含まれていないか確認してみてください。

 

分類 具体的な食物名 特徴
果物(果樹) リンゴモモサクランボ、ナシ、洋ナシ、スモモ(プラム)、アンズ、ビワ、カリン、マルメロ 生で食べると口の中がかゆくなりやすい代表的なグループです。皮の近くにアレルゲンが多い傾向があります。
野菜(果菜) イチゴ、キイチゴ(ラズベリー)、ブラックベリー 一般的には果物扱いですが、農業上は野菜に分類されます。生食の頻度が高いため注意が必要です。
種実類(ナッツ) アーモンド バラ科の種子です。粉末状で洋菓子に使われることも多く、気づかずに摂取してしまうことがあります。

バラ科のアレルギー反応は、これらの食物に含まれるタンパク質が、特定の花粉のアレルゲンと構造が似ていることによって起こります。特にリンゴモモサクランボは、食べた直後に唇が腫れたり、喉の奥がイガイガしたりする「口腔アレルギー症候群(OAS)」を引き起こす頻度が高い食品です。

 

また、意外と見落とされがちなのがアーモンドです。ナッツ類のアレルギーといえばクルミやピーナッツ(マメ科)が有名ですが、アーモンドもバラ科に属するため、リンゴやモモでアレルギー症状が出る人は、アーモンドでも同様の反応を示すことがあります。アーモンドプードルとしてケーキやクッキーに含まれている場合や、アーモンドミルクなどの加工品にも注意が必要です。

 

バラ科アレルギーの人のための除去食や代替食に関する情報が掲載されています。

 

公益財団法人ニッポンハム食の未来財団「野菜・果物類|除去食と代替食」

バラ科とシラカバ花粉症の交差反応とは?原因と仕組み

バラ科のアレルギーを理解する上で欠かせないキーワードが「交差反応」と「シラカバ(カバノキ科)」です。なぜ、バラ科の果物を食べてアレルギーが起こるのでしょうか。その原因の多くは、実は花粉症にあります。

 

北海道や長野県などの寒冷地に多いシラカバ(白樺)や、全国の湿地などに生息するハンノキの花粉には、「Bet v 1」や「PR-10」と呼ばれるタンパク質が含まれています。このタンパク質の構造が、バラ科の果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)に含まれるアレルゲンタンパク質と非常によく似ています。

 

  1. 感作(かんさ): まず、シラカバやハンノキの花粉を吸い込むことで、体内でその花粉に対する「IgE抗体」が作られ、花粉症になります。
  2. 交差反応: その後、構造が似ているバラ科の果物を食べると、体内のIgE抗体が「花粉が侵入してきた」と勘違いして攻撃を開始します。
  3. 発症: その結果、口の中や喉でアレルギー反応が起こり、かゆみや腫れといった症状(口腔アレルギー症候群)が現れます。

このメカニズムにより、シラカバ花粉症患者の約30〜50%が、バラ科の果物に対してもアレルギー反応を示すと言われています。特に北海道ではシラカバ花粉の飛散量が多いため、このタイプの果物アレルギーが非常に多く見られます。

 

「自分は花粉症だけど食べ物アレルギーはない」と思っていても、ある日突然、リンゴを食べて喉がかゆくなることがあります。これは、花粉症のキャリアが長くなるにつれて、交差反応を起こすリスクが高まるためです。また、ハンノキの花粉は1月から4月頃にかけて飛散するため、スギ花粉症だと思っていたら実はハンノキ花粉症も併発しており、それが原因でバラ科アレルギーを発症するというケースも珍しくありません。

 

花粉と食物の交差反応について、主な組み合わせが一覧で紹介されています。

 

同友会メディカルニュース「花粉と交差反応を示す食物」

バラ科アレルギーの症状は加熱で変わる?生と加工の違い

バラ科アレルギーの大きな特徴の一つに、「加熱すると食べられることが多い」という点があります。これは、原因となるアレルゲンタンパク質(PR-10など)が、熱に対して非常に不安定で壊れやすい性質を持っているためです。

 

  • 生の状態: アレルゲンタンパク質の構造が保たれているため、食べると口の粘膜で直接反応が起き、かゆみ、イガイガ感、唇の腫れなどの症状が出ます。
  • 加熱・加工後: 加熱によってタンパク質の構造が変化(変性)し、抗体が反応しなくなります。そのため、多くの人は症状が出ずに食べることができます。

例えば、生のリンゴを丸かじりすると喉がかゆくなる人でも、以下のような加工品であれば問題なく食べられるケースが一般的です。

 

  • アップルパイ(オーブンでしっかり加熱)
  • リンゴジャム(煮込んで加熱)
  • リンゴジュース(濃縮還元などで加熱殺菌されているもの)
  • 缶詰のモモやサクランボ(シロップ漬けの工程で加熱殺菌済み)

ただし、加熱の程度や個人の敏感さによっては、完全に安全とは言い切れません。例えば、レアチーズケーキに乗っている半生のフルーツや、加熱時間の短いコンポート、フリーズドライのイチゴなどは、アレルゲンが残存している可能性があります。また、ごく稀に、加熱しても壊れにくい別のアレルゲン(LTPなど)に反応してしまうタイプの人もいます。この場合は、加熱しても重篤な症状(アナフィラキシーショックなど)を起こす可能性があるため、医師の診断を受けて自分のタイプを把握しておくことが重要です。

 

「加熱すれば大丈夫」と自己判断せず、最初はごく少量から試すか、専門医に相談することをおすすめします。特に小さなお子様や、過去に強い症状が出たことがある方は慎重な対策が必要です。

 

果物アレルギーの症状や加熱による変化について、医師が詳しく解説しています。

 

草ヶ谷医院「口腔アレルギー症候群って,ご存知ですか?」

バラ科以外も危険?豆乳とカバノキ科の注意点

バラ科アレルギー(シラカバ・ハンノキ花粉症)の人にとって、意外な盲点となり、かつ最も警戒しなければならないのが「豆乳」です。

 

豆乳の原料である大豆はマメ科であり、バラ科ではありません。しかし、大豆に含まれるアレルゲンタンパク質「Gly m 4」は、シラカバ花粉のアレルゲン(Bet v 1)と構造が酷似しています。そのため、バラ科の果物に反応する人は、高い確率で大豆、特に豆乳にも交差反応を示すリスクがあります。

 

ここで重要なのは、豆乳のリスクが他の加工品(豆腐や味噌、醤油)に比べて格段に高いという点です。

 

  1. 加工度が低い: 豆腐や味噌は、製造過程で十分に加熱されたり発酵したりすることで、アレルゲンタンパク質が分解・低減されています。しかし、豆乳は加熱処理が比較的緩やかであるため、アレルゲンが活性を保ったまま残っていることが多いのです。
  2. 液体である: 液体は固形物に比べて消化管の粘膜に触れる面積が広く、吸収されるスピードも速いため、アレルギー症状が急速に全身に広がりやすい傾向があります。

実際に、普段は豆腐や納豆を食べても平気な人が、美容や健康のために初めて豆乳を飲んだ直後に、呼吸困難や意識消失などの重篤なアナフィラキシーショックを起こして救急搬送される事例が報告されています。国民生活センターからも、カバノキ科花粉症患者への注意喚起が出されています。

 

バラ科の果物で口がかゆくなる症状がある人は、豆乳を飲む前に必ず医師に相談するか、少量から慎重に試すようにしてください。「野菜ジュース」や「スムージー」に豆乳がミックスされている場合もあるため、成分表示の注意書きをよく確認することが大切です。
シラカバ花粉症患者が豆乳を摂取した際のリスクについて、公的機関からの注意喚起です。

 

東京保健生活協同組合「病気Q&A 大人の食物アレルギー」

バラ科の珍しい野菜「ワレモコウ」や杏仁豆腐の落とし穴

最後に、検索上位の記事ではあまり触れられていない、少しマニアックなバラ科野菜と加工品について解説します。農業や家庭菜園に興味がある方なら、「サラダバーネット」というハーブをご存知かもしれません。

 

  • サラダバーネット(オランダワレモコウ):

    これは地中海沿岸原産のバラ科の多年草で、その名の通り若い葉をサラダとして生で食べる「野菜(ハーブ)」です。葉をちぎるとキュウリのような爽やかな香りがするのが特徴で、欧米では料理の風味付けによく使われます。

     

    バラ科アレルギーの人がこのサラダバーネットを生で食べた場合、理論的にはアレルギー反応が出る可能性があります。日本での一般流通は少ないですが、ハーブ園や家庭菜園、こだわりのイタリアンレストランなどで遭遇する可能性があります。「キュウリの香りがするハーブ」が出てきたら、それがバラ科の植物であることを思い出してください。

     

  • 杏仁豆腐の落とし穴:

    中華料理のデザートでおなじみの杏仁豆腐。「杏仁(きょうにん)」とは、アンズ(アプリコット)の種の中にある仁(さね)のことです。アンズは立派なバラ科サクラ属の果物です。

     

    本格的な杏仁豆腐には、このアンズの種を粉末にしたものが使われています。また、安価な製品では、香りが似ているアーモンド(これもバラ科)の粉末で代用されていることもあります。つまり、杏仁豆腐は「バラ科の濃縮エキス」のようなものです。

     

    加熱加工されていることが多いため、果肉を生で食べるよりはリスクが低い場合もありますが、種子のアレルゲンは果肉よりも耐熱性が高いことがあるため油断は禁物です。リンゴやモモで強い症状が出る人は、杏仁豆腐でも口の中がピリピリするなどの違和感を感じることがあるかもしれません。

     

このように、一見関係なさそうなハーブやデザートの中にも、バラ科の植物が潜んでいます。アレルギーを持つ方は、原材料や植物の分類に少しだけ敏感になることで、思わぬ体調不良を防ぐことができるでしょう。

 

アーモンドアレルギーと杏仁豆腐の関係について詳しく書かれています。

 

CAN EAT「アーモンドアレルギーの症状・対策・注意すべき食べ物」

 

 


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