赤ちゃんの食物アレルギーで最も一般的なのが即時型反応です。原因となる食べ物を口にしてから2時間以内(多くは食べた直後から30分間)に、皮膚や粘膜、消化器、呼吸器などに症状が現れます。
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最も頻度が高い症状は皮膚症状で、じんましん・かゆみ・赤み・むくみなどが見られます。次いで多いのが口唇の腫れや口や喉の違和感といった粘膜症状です。消化器症状としては嘔吐・吐き気・腹痛・下痢などが現れ、呼吸器症状では咳やゼーゼーとした喘鳴、声枯れ、呼吸困難などが起こります。
参考)小児・乳幼児食物アレルギー
即時型食物アレルギーは1歳未満の乳児で最も多く発症し、約10%の赤ちゃんに見られます。食物アレルギーの原因となる食べ物は年齢によって異なりますが、0歳児では鶏卵が最も多く、牛乳、小麦の3つで全体の96%を占めています。
参考)食物アレルギーの一種 即時型食物アレルギー|食物アレルギー5…
消費者庁の調査によると、赤ちゃんの食物アレルギーの原因食物で最も多いのが鶏卵で33.4%、その後に牛乳(18.6%)、木の実類(13.5%)、小麦(8.8%)と続きます。
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乳幼児期に多い鶏卵、牛乳、小麦が原因のアレルギーは、成長とともに治りやすいという特徴があります。6歳までにその食物を食べられるようになった割合は、鶏卵が73%、牛乳と小麦が約70%という報告があります。一方で、幼児期以降になると木の実類、魚卵、ピーナッツ、甲殻類なども原因食物として増えてきます。
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新生児期や乳児期には、血便や嘔吐、下痢などの消化器症状がメインとなる「新生児乳児消化管アレルギー」というタイプもあります。原因食物はほとんどが牛乳(乳児用粉ミルク)ですが、完全母乳栄養児に発症することもあります。
参考)小児の食物アレルギーについて
食物アレルギーの診断には、まず血液検査で特定の食べ物に対するIgE抗体の値を確認します。IgE抗体が高い場合は感作されている可能性がありますが、この数値が高いだけでは「食物アレルギーである」と確定することはできません。血液検査で陽性でも食べて問題がないこともあり、逆に陰性でも食べられないこともあります。
参考)赤ちゃんに多い食物アレルギー|平塚市の小児科のこどもクリニッ…
より正確に診断するために「食物経口負荷試験」という検査を行うことがあります。これは、原因と思われる食べ物を実際に医療機関で少しずつ食べて、症状が出るかを確認する検査です。食物経口負荷試験は専門の医療機関で行われ、最も確実な診断方法と言われており、安全に食べることのできる量を調べることもできます。
参考)赤ちゃんの食物アレルギー|病院に行く目安・検査・診断について…
検査の目的は、①原因食物の確定診断、②安全に摂取できる量の決定、③耐性獲得(食べられなかったものが食べられるようになっているか)の確認の3つです。少量ずつ30分以上あけて4段階に分けて食べていくのが一般的な方法です。
参考)食物経口負荷試験
最近の研究では、離乳食の開始や特定の食物の摂取開始を遅らせることでの食物アレルギー予防効果は証明されておらず、科学的根拠はないとされています。むしろ、遅らせることで食物アレルギーの発症リスクが上がる可能性も指摘されています。
参考)食物アレルギーの予防|離乳食の進め方・注意点|豊田市・みよし…
食物アレルギーがあっても離乳食の開始を遅らせる必要はなく、通常通り生後5~6か月頃から始めることが推奨されています。生後5~6か月から卵などのタンパク質を少量ずつ取り入れることが予防に有効であり、ピーナッツについても早期摂取でリスクが減るという研究結果があります。
参考)離乳食の進め方と授乳中のお母さんの食事|食物アレルギーの食事…
離乳食は、まずつぶしたお粥から開始し、慣れてきたら芋類や野菜・果物を始めます。野菜や芋類はアレルギーを起こす頻度が低いと言われています。さらに慣れたら豆腐や白身魚、固ゆでした卵黄などと種類を増やしていき、小麦はうどんを少量から開始します。
参考)離乳食の進め方~気をつけたいアレルギーの知識もつけよう
食物アレルギーの予防には、授乳中の母親への食物制限は不要であり、むしろ生後4か月までは完全母乳が勧められています。また、生後早期から保湿剤によるスキンケアを行うことで、アトピー性皮膚炎を30~50%程度予防できる可能性が示唆されており、間接的に食物アレルギー予防にもつながると考えられています。
参考)母乳と食物アレルギーの予防 - 関野小児科内科クリニック 神…
日本小児アレルギー学会のガイドライン:離乳食開始時期や鶏卵などの摂取開始を遅らせることは逆効果となる可能性について
稀ではありますが、赤ちゃんが重いアレルギー反応であるアナフィラキシーを起こすことがあります。アナフィラキシーは複数の臓器に症状が現れ、血圧低下などのショック症状を伴うこともある生命に関わる状態です。
参考)離乳食でアレルギー反応が出たらどうする?救急車を呼んでいい?…
アナフィラキシーを疑う症状としては、全身のじんましん、顔色が悪くぐったりしている、呼吸が苦しそう、繰り返す嘔吐、強い腹痛、意識がおかしいなどがあります。これらの症状がある場合はすぐに救急車を呼ぶ必要があります。
参考)乳幼児期のアレルギーについて|乳幼児検診
アナフィラキシーと診断された場合、直ちにアドレナリン(エピネフリン)0.3mg(小児では体重kg当たり0.01mg)を筋肉注射するとともに、酸素吸入や点滴を使うのが標準的な対応です。あらかじめ医師からアドレナリン自己注射薬を処方されている場合は、すぐに使用することが重要です。
参考)アナフィラキシー|一般社団法人日本アレルギー学会
軽い症状の場合でも、全身をよく観察し、皮膚症状が出て痒がっていたら冷やし、嘔吐や吐き気がみられたら顔を横向きにして寝かせるなどの対処を行います。食事後2時間以内に体調を崩した場合など、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。
日本アレルギー学会によるアナフィラキシー緊急対応の標準的な方法について