アシドーシスは、第一胃(ルーメン)内での発酵により有機酸(揮発性脂肪酸や乳酸など)が過剰に増え、吸収・中和が追いつかず、ルーメン液pHが低下する状態として整理できます。
特に穀類など濃厚飼料の多給は有機酸産生を増やし、粗飼料不足は咀嚼・反芻を減らして唾液分泌(重炭酸による緩衝)を減らし、結果としてpH低下を招きやすい、という「二段階の落とし穴」があります。
さらに、SARA(亜急性)では「ずっと強い酸性」ではなく「pHが下がる時間が長い」ことが問題になり、群としての慢性的なパフォーマンス低下につながりやすい点が現場で厄介です。
急性のルーメンアシドーシスでは、食欲低下、下痢・軟便、脱水、反芻停止、ふらつき(跛行)などが代表例として挙げられています。
SARAでも採食量低下や下痢に加え、ルーメン粘膜の損傷、蹄葉炎、肝膿瘍などの病態が問題になり、見た目が「何となく不調」で終わってしまうことがあります。
「乳脂の低下(低乳脂)」はルーメン発酵の偏り(酢酸比率低下など)と同時に起こり得るため、乳成分の推移を“症状の一部”として扱うと早期に疑いやすくなります。
ルーメンアシドーシスは、ルーメン液pHが一定以下に低下し、採食量低下や下痢、粘膜損傷、蹄葉炎、肝膿瘍などを特徴とする、と獣医領域の解説でも整理されています。
一方で、現場では「pHをいつ測るか」「群のどの牛を測るか」で見え方が変わり、SARAは“たまたま測ったら正常”になりやすい点が落とし穴です。
そのため、日々の観察(反芻、便性状、跛行、乳脂の変動、選び食いの有無)をセットにして疑い、必要に応じてpH測定や獣医師の評価に繋げる設計が実務的です。
参考:ルーメンアシドーシスの概要、見つけ方(飼養管理の再考・現場の観察ポイント)
飼養管理を再考~ルーメンアシドーシスを見つける~(北海道 釧路総合振興局)
予防の基本は「急に発酵が速い炭水化物(デンプン等)に寄せない」「咀嚼と唾液を確保する」ことで、濃厚飼料多給と粗飼料不足が同時に起きる設計を避けることが柱になります。
繊維側ではNDFなど繊維成分の設計が乾物摂取量や乳量・乳脂に影響することが示されており、繊維を“入れるだけ”でなく「牛が咀嚼する形で入っているか(物理性)」まで含めて考えるのが重要です。
デンプン源についても、分解が速いものを多給するとアシドーシスの危険性が高まる可能性がある、と飼料用米の解説資料でも注意喚起されており、配合割合や切り替え速度の管理が予防の現実的なポイントになります。
意外に見落とされやすいのが、分娩前後の生産ステージでルーメンpHが下がりやすいという点で、分娩後3週間はアシドーシスの状況が深刻になり得る、という指摘があります。
つまり「高泌乳=濃厚飼料を上げる」だけでなく、乾乳期から泌乳期への移行設計(切り替えの滑らかさ、採食の安定、選び食いの抑制)を“アシドーシス予防の主戦場”として扱うと、群のトラブルが減りやすくなります。
現場で実装するなら、①分娩後の採食ムラ(かため食い)を減らす、②粗飼料の切断長と給与方法で選び食いを抑える、③乳脂の落ち方を早期警戒にする、の3点を「移行期チェック」として固定化すると運用しやすいです。