濃厚飼料は、一般に「繊維(NDF)が少なく、でんぷんなど消化が速い成分(NFC)が多く、エネルギー濃度を上げやすい飼料」と理解すると現場で迷いにくくなります。濃厚飼料の中心的なエネルギー源はデンプンで、ルーメン内で速く発酵しやすいのが特徴です。
一方で、濃厚飼料は“栄養が濃い=万能”ではありません。発酵が速いほどルーメンpHが下がりやすく、粗飼料側の「反芻を促す物理的な機能」が不足すると、消化の安定が崩れます(後述)。
ここで、飼料のエネルギーを現場の共通言語にするのがTDN(可消化養分総量)です。TDNは「飼料中に含まれるエネルギー量の大まかな指標」とされ、粗タンパク質・粗炭水化物・粗脂肪などから推定されます。北海道十勝の資料では、TDNは『粗タンパク質+粗炭水化物+(粗脂肪×2.25)』で求められ、NDFと反比例の関係にあることも示されています。
つまり、濃厚飼料は“TDNを上げる役”になりやすい反面、繊維(NDF)や物理性が不足すると、牛の側(ルーメン)が受け止めきれない局面が出ます。ここが「濃厚飼料=乳量の味方」でもあり「濃厚飼料=トラブルの火種」でもあるポイントです。
参考(分析項目・NDFとTDNの関係、ルーメン内の説明がまとまっている)。
北海道十勝の資料(飼料分析の見方) https://www.tokachi.pref.hokkaido.lg.jp/fs/2/1/9/0/3/9/4/_/tikusan02.pdf
粗飼料は、牧草サイレージ・乾草・稲わらなどのように、繊維(NDF)が多く「ガサ(かさ)」を作りやすい飼料です。十勝の資料ではNDFは「総繊維」とも呼ばれ、NDFが多いほど牛が満腹になりやすく、食い込み(乾物摂取量)が落ちる方向に働くと整理されています。
ただし、粗飼料は“食い込みを邪魔する存在”ではなく、ルーメン内の消化を安定させるための土台です。資料では、NDFがルーメン内でマットを形成して微生物の住処になること、濃厚飼料がそのマットに絡んで滞留時間が確保されること、繊維が反芻を起こして唾液分泌が増えpH維持に役立つことなど、役割が具体的に説明されています。
さらに重要なのは、粗飼料の“質”は一定ではない点です。十勝の資料は、収穫時期が遅れるとNDFが高くなり、逆にCP(粗タンパク)やTDNが低下して「消化しにくいエサ」になりやすいことを示しています。現場の感覚としては「同じロール(同じ草地)でも、刈り遅れた年は“腹はふくれるが乳が伸びない”」が起きやすい、という理解につながります。
目安の一例として、同資料では粗飼料のNDF目標を60%以下、TDN目標を60%以上と示しており、分析値を見た時の一次判断に使えます。
「粗濃比(粗飼料:濃厚飼料)を何対何にするか」は、牛群のステージや粗飼料の質で変わるため、“固定の正解”はありません。重要なのは、反芻が回っているか(=唾液が出てpHが保たれるか)、そして乾物摂取量(DMI)が伸びる設計になっているか、です。
反芻の観点では、粗飼料の繊維がルーメンを刺激し、反芻を誘起し、唾液でルーメンpHを保つ、という流れが基本です。酪農学園大学の解説では、NDFはエネルギー供給だけでなく「ルーメン壁に物理的刺激を与え、反すうを誘起し、微生物による飼料消化を補助する役割を担う」ため、一定量欠かせない成分とされています。
同解説では、TMR給与を前提に、飼料乾物中NDF含量の望ましい水準(高泌乳時で35%程度)や、粗飼料由来NDFが減るほど全体NDFの下限を高める考え方(NRCの整理)も紹介されており、「濃厚飼料を増やすほど、NDF(特に粗飼料由来)の価値が上がる」という逆説的な理解ができます。
また、粗飼料と濃厚飼料の比率だけでなく、「急な飼料メニュー変更」も反芻胃の安定性を崩す要因になりえます。ルーメン内の菌叢は、急変に弱い“発酵工場”なので、濃厚飼料の増給は1〜2kgでもpH変動が大きくなることがある、という現場報告・考察も出ています。
粗濃比を議論する時は、比率そのものより、(1)粗飼料の質(NDF/TDN/発酵)、(2)濃厚飼料の“入れ方”(増減スピード、給与回数、TMRか分離か)、(3)反芻の見える指標(反芻時間、糞性状、乳脂率など)をセットで見るのが安全です。
参考(NDFの役割、粗飼料由来NDFと下限値、peNDFの研究例まで読める)。
酪農学園大学(高泌乳牛管理の注意点とその栄養) https://rp.rakuno.ac.jp/archives/feature/858.html
飼料設計の精度を上げる最短ルートは、「現物の印象」より「飼料分析(特に乾物ベース)」を先に置くことです。十勝の資料でも、分析結果は原物中と乾物中が並ぶが、栄養評価は乾物中の値を見るよう明確に書かれています。水分が変わると、同じ30kgを給与しても乾物摂取量が変わり、実際の栄養摂取がズレるためです。
分析表で特に押さえたいのは、次の“見落としやすい”観点です。
「あまり知られていないが効く」ポイントとして、溶解性タンパク(SIP)も知っておくと差が出ます。十勝の資料では、溶解性タンパクが高い粗飼料はアンモニアが増えやすく肝臓負担が大きいので注意が必要、また高水分サイレージで高くなる傾向がある、と説明されています。
つまり、同じ粗飼料でも「水分が高い→SIP高め→アンモニア増→肝臓負担」という連鎖があり、濃厚飼料を増やす前に“粗飼料側の性格”を把握しておくと、事故を減らしやすくなります。
検索上位では「濃厚飼料=穀類」「粗飼料=牧草」など分類で終わりがちですが、現場ではもう一段深い落とし穴があります。それが「同じNDFでも効き方が違う」という問題で、原因は“物理性(切断長・粒度・マット形成のしやすさ)”です。
十勝の資料は、NDFの役割としてルーメン内マット形成や反芻誘起を挙げつつ、サイレージの切断長が細かすぎたり切断面が粗く毛羽立っていると、繊維の役割が十分発揮できないため収穫機の刃の調整も重要、と踏み込んでいます。これは、分析値だけ見て「NDFは足りているはず」と判断しても、現物の形状が悪いと反芻が回らず、結果としてpH維持やマット機能が弱くなる可能性がある、という示唆です。
さらに酪農学園大学の解説でも、化学成分としてのNDFだけでなく、有効繊維(eNDF)や物理的有効繊維(peNDF)といった概念が紹介され、一定サイズ以上の飼料片の比率がルーメンpHと相関する研究(Zebeliら2006)の話まで出ています。
この“物理性の視点”を入れると、濃厚飼料と粗飼料の違いは単なる分類ではなく、次のような「設計思想」の違いになります。
最後に、現場で使えるチェックの例を置きます(牛の観察と組み合わせる前提)。
こうして見ると「濃厚飼料 粗飼料 違い」は、単語の定義を覚えるだけでは片手落ちで、数値(NDF/TDN)とルーメン内の機能(マット・反芻・pH)と、現物の物理性(切断長・粒度)までつなげて初めて“経営に効く知識”になります。

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