粗飼料と濃厚飼料の違いと種類と給与

粗飼料と濃厚飼料の違いを、定義・栄養・役割・与え方の実務まで整理し、事故やコストの落とし穴も含めて解説します。自分の農場の設計に落とし込めていますか?

粗飼料と濃厚飼料の違い

粗飼料は繊維の供給、濃厚飼料はエネルギーやタンパク質の補給を主な役割とする区分です。ただし、どちらか一方だけで栄養が整うわけではありません。比較するときは、水を含む重さではなく、乾物量と養分、実際の食べ方まで確認します。


粗飼料の定義と種類と役割


粗飼料には牧草、乾草、作物全体を利用するホールクロップサイレージなどがあります。「粗」は品質が悪いという意味ではありません。牛などの反芻動物にとって、繊維を含む飼料は反芻やルーメンの働きを支える重要な材料です。
濃厚飼料には、穀類や大豆粕などが含まれます。穀類は主にエネルギー、大豆粕は主にタンパク質の補給に使われますが、濃厚飼料すべてが同じ成分ではありません。
飼料用イネは、利用部位で区分が変わります。茎葉と子実を一緒に収穫・調製する稲発酵粗飼料、いわゆる稲WCSは粗飼料です。一方、子実を利用する飼料用米は濃厚飼料です。同じイネだから同じ代替飼料になる、とは考えないでください。
参照:飼料用イネと飼料用米

粗飼料と濃厚飼料の栄養成分の違い(繊維・炭水化物・タンパク)

成分表は、名称だけでなく単位と表示基準をそろえて読みます。繊維も炭水化物の一種ですが、穀類に多いデンプンとは分解のされ方が違います。「炭水化物が多い」という説明だけでは、ルーメンでの働きまで比較できません。

表示 意味と確認点
DM・乾物 水を除いた量。水分の違う飼料を比較する土台になります。
TDN・可消化養分総量 利用できるエネルギー量を考える目安です。
CP・粗タンパク質 タンパク質供給を検討する指標です。
NDF・中性デタージェント繊維 繊維の量を見る指標です。数値だけでは繊維の長さや反芻への働きは決まりません。

乾物量は、現物重量に「100から水分率を引いた値」を掛け、100で割って求めます。仮にどちらも現物10kgなら、水分15%では乾物8.5kg、水分65%では乾物3.5kgです。これは計算説明用の仮定であり、実際の標準水分や給与量の推奨ではありません。
現物で同じ重さでも、食べられる養分量は同じとは限りません。成分表のCPやTDNも、乾物当たりか現物当たりかを確認します。
参照:乾物量で比較する考え方

給与量の決め方と急な増量を避ける理由

粗濃比や一頭当たりの給与量は、畜種、体重、生育段階、乳量などで変わります。全国共通の比率やkgを置くのではなく、必要な養分と採食量を基に設計します。
ルーメンは、微生物が飼料を分解する第一胃です。濃厚飼料を急に増やしたり、一度に偏って食べたりすると、その環境へ影響します。一日分の配合が適切でも、食べる時間が偏れば、設計どおりの摂取とはいえません。
粗飼料と濃厚飼料を分けて与える場合は、濃厚飼料の少量多回給与や、飼料を食べやすい位置へ寄せる作業も検討します。一方、TMR(粗飼料と濃厚飼料などをあらかじめ混ぜた完全混合飼料)では、混ざり方と選び食いへの対応が中心です。別々の給与方式の作業を混同しないでください。
農林水産技術会議の設計例も、頭数、目標乳量、購入単価、自給飼料の生産費、利用できる面積などを条件にしています。安い飼料へ置き換える場合も、養分の過不足と必要な生産・調製量を同時に確かめる仕組みです。
参照:条件に合わせた飼料設計

粗飼料と濃厚飼料のコストと自給と飼料用イネ

粗飼料と濃厚飼料のコストと自給と飼料用イネ
コストは、現物一kgの価格だけでなく、乾物やTDNをどれだけ確保できるかで比較します。先の仮定で、現物10kgの購入額が同じなら、乾物3.5kgの飼料のほうが、乾物一kg当たりの価格は高くなります。ただし、それだけで優劣は決まらず、養分組成や品質も確認が必要です。
自給飼料も無料ではありません。種苗、肥料、作業、機械に加え、排水、収穫調製、運搬、保管の費用がかかります。収穫量が多くても、保管中の損失や食べ残しが多ければ、利用できる養分の単価は上がります。
農研機構の現地飼料作の資料は、こうした工程や損失を含め、TDNを基準にコストを評価しています。稲WCSと飼料用米も、役割の違いを踏まえ、何を代替できるか、調達が安定するかまで比較することが重要です。
参照:養分量を基準にした生産費評価

残飼と握った状態から選び食いを確かめる


自給飼料生産・流通革新と日本酪農の再生 (日本農業市場学会研究叢書 No. 18)
配合表だけでなく、給餌直後と時間経過後の残飼を比べると、実際の摂取のずれが見えます。長い繊維が残り、細かい部分から消えていれば、牛が均等に食べていない可能性があります。
宗谷農業改良普及センターは、乳牛の低水分TMRへの加水で飼料の分離を防ぐ説明の中で、スクイーズテストを紹介しています。手で握ったTMRが団子状にまとまってほぐれず、飼料同士が付着しているかを確認する方法です。これは混合した飼料の分離しやすさを現場で確かめるもので、手で握るだけで水分率や栄養成分を測定できるわけではありません。すべての飼料を濡らす指示ではなく、過度な加水や二次発酵にも注意が必要です。

  • 長い繊維だけ残っていないかを見ます。
  • 給餌から何時間後に偏りが目立つかを記録します。
  • 牛が一度に集中して食べていないか、飼槽へ近づける状態かを観察します。

偏りがある場合、低水分TMRなら混合と水分状態、分離給与なら給与回数やエサ寄せを見直します。同じ対策を一律に使わず、給与方式に応じて「配った量」と「食べた内容」の差を小さくすることが目的です。
参照:宗谷・低水分サイレージの管理と給与
あわせて読む:ルーメンアシドーシス

関連する資料粗飼料と濃厚飼料の種類・役割について。 - 有限会社矢野畜産 / www.jstage.jst.go.jpの関連資料 / 飼料の種類 - 酪農ジャーナル電子版【酪農PLUS+】 / 飼養管理を再考~ルーメンアシドーシスを見つける~ - 釧路総… / www.nissangosei.co.jpの関連資料 / 東北農業研究センター:家畜のエサにする飼料用イネ / jaccnet.zennoh.or.jpの関連資料 / 飼養管理を再考~ルーメンアシドーシスを見つける~ - 釧路総…