脂質過酸化反応の代表は「自動酸化」で、実体はフリーラジカルの連鎖反応として説明されます。一次的に狙われやすいのは不飽和脂肪酸で、二重結合の配置のために水素が抜かれやすく、ここが“連鎖”の起点になりやすい、というのが現場理解の出発点です。あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センターの解説でも、不飽和脂肪酸の自動酸化はラジカル連鎖反応として整理され、光や熱で水素が引き抜かれて脂質ラジカルが生じ、酸素と反応して過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)になる流れが示されています。
農業従事者の視点では「畑の中の反応」よりも「収穫後の品質低下」と結びつけると理解が速いです。例えば、油脂を含む加工・貯蔵では、酸化が進むと風味が落ち、さらに分解生成物が悪臭の原因にもなります。ここで重要なのは、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)は“最終生成物”ではなく、むしろ次の分解・連鎖を呼ぶ“中間体”だという点です。食品工業技術センターの資料でも、生成した過酸化脂質は不安定で、分解して低級アルコール、ケトン、アルデヒドなどになり悪臭原因になる、と整理されています。
また、脂質過酸化は「非酵素的(ラジカル連鎖)」だけでなく、酵素反応や一重項酸素による酸化も絡み得ます。徳島大学の寺尾らの総説では、生体内の脂質過酸化は非酵素的なフリーラジカル連鎖反応に加え、リポキシゲナーゼ(LOX)反応や一重項酸素も関与し得る、と述べられています。農産物でも、植物由来の酵素(LOX)が関わる香気・青臭みの形成など、実務に直結する場面があるため、「ラジカル連鎖だけ覚えて終わり」にしないのがコツです。
脂質過酸化反応メカニズムを「どこから始まるか」で見ると、開始反応の本質は“水素が抜かれてラジカルができる”ことです。特に不飽和脂肪酸では、二重結合の間のメチレン基の水素が引き抜かれやすく、ここが開始点になりやすい、というのが反応のクセになります。食品工業技術センターの資料でも、二重結合の間のメチレン基の水素が光や熱などで引き抜かれて脂質ラジカルが発生する、と明確に書かれています。
さらに現場的に役立つのは「同じ脂肪酸でも、どの水素が抜かれやすいかに順序がある」ことです。資料では、不飽和脂肪酸におけるC-H結合の相対的な強さとして、二重結合の間の炭素に結合した水素(H1)が最も弱く、次いで隣(H2)、さらに離れた位置(H3)ほど強い、つまりH1が開始点になりやすい傾向がある、と説明されています。ここを押さえると、例えば「多価不飽和が多い原料ほど酸化に弱い」理由が、栄養学ではなく化学として腑に落ちます。
農産物の品質管理では、開始反応を強める要因(熱・光・金属・酸素)をできるだけ削るのが実務です。特に「光」は、油脂だけでなく、クロロフィルなどの色素が関わると“光増感酸化”として一重項酸素が生成し、二重結合に直接結合して過酸化脂質を作るルートが出てきます。食品工業技術センターの資料でも、光増感物質が関与すると三重項酸素が励起され一重項酸素となり、反応性が高く不飽和脂肪酸の二重結合に直接結合して過酸化脂質を生成する、と整理されています。
進行反応(伝播)は、いったんできたラジカルが酸素と反応して、さらに次のラジカル生成を呼ぶ“回転ドア”のような段階です。開始で生じた脂質ラジカルが酸素と反応し、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)へ向かう流れが、連鎖反応を成り立たせます。食品工業技術センターの資料では、脂質ラジカルが酸素と反応することで過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)となる、と明示されています。
このヒドロペルオキシド(過酸化脂質)が厄介なのは、見た目には“まだ油として残っている”のに、内部では分解の火種になっている点です。資料では、過酸化脂質は不安定で分解して低級アルコール・ケトン・アルデヒドなどになり、悪臭の原因になる、と説明され、金属や光、熱で分解が促進されるとも述べられています。つまり、農産物や加工品の「臭いが出てから対策」では遅く、ヒドロペルオキシドが増え始める前段階(あるいは増えても分解しにくい条件)を作るのが品質設計になります。
もう一つ、意外に知られていないポイントとして、「過酸化脂質の生成=必ずしも即座に強い臭い」ではありません。一次生成物(LOOH)は比較的“溜まる”ことがあり、分解が進んだ時にアルデヒド類などが増えて、においとして表面化します。寺尾らの総説でも、脂質過酸化の一次生成物としてLOOH(lipid hydroperoxide)が中心に論じられ、生成と消去のバランスが重要だと整理されています。
停止反応は、ラジカル同士が結合して“連鎖が切れる”段階で、ここが強いほど酸化劣化が伸びにくくなります。逆に言えば、開始や進行が少し起きても、停止がうまく働けば実害(におい・風味低下)まで進みにくい、という設計が可能です。寺尾らの総説では、生体内ではLOOHが酵素により還元されて不活性化される(解毒される)経路があり、GPxなどが関与すると述べられていますが、考え方としては「連鎖を止める仕組みがあるか」が重要だと読み替えられます。
農業・食品の現場での“停止”の実体は、抗酸化の工夫と、分解を進める因子(特に金属、光、熱)を近づけないことです。食品工業技術センターの資料でも、過酸化脂質は金属や光、熱で分解が促進されるとされ、分解が進むほど悪臭成分につながりやすいと説明されています。つまり「停止反応を増やす」だけでなく、「停止する前に分解へ落ちない」環境を作るのがコツになります。
ここで農業従事者に役立つ実務の見立てとして、劣化の評価指標を“数値で持つ”のは強いです。食品工業技術センターの資料では、脂質劣化の評価に過酸化物価(POV)と酸価(AV)が規格基準として用いられ、賞味期限設定や品質管理の指標になる、と説明されています。POVが上がるのは主に過酸化脂質が増える段階を反映し、AVは遊離脂肪酸の増加(加水分解や酸化の進行)を反映しやすいので、「いまは酸化のどの相にいるか」を掴む助けになります。
脂質過酸化反応メカニズムというとラジカル連鎖反応(開始・進行・停止)に意識が寄りがちですが、農業現場で意外に盲点になりやすいのが「光増感酸化」です。特に、緑色の色素(クロロフィルなど)やビタミンB2のような光増感物質が存在すると、光が当たるだけで一重項酸素が発生し、ラジカル連鎖の“前提”をすり抜ける形で不飽和脂肪酸の二重結合へ直接付加し、過酸化脂質を作り得ます。食品工業技術センターの資料では、光増感物質が光を吸収して励起され、酸素分子が励起されて一重項酸素となり、接触した不飽和脂肪酸の二重結合に直接結合して過酸化脂質を生成する、と説明されています。
このルートの怖さは、温度管理がうまくいっていても、遮光が弱いと品質が落ちる可能性がある点です。例えば、油脂を含む加工品だけでなく、種子・ナッツ・穀類の製品や、葉緑素が残る原料(青汁原料や緑色野菜由来の加工品など)では、光の取り扱いが想像以上に効いてきます。ラジカル連鎖に比べて“一重項酸素は寿命が短いが反応性が高い”という性質があり、接触した瞬間に進む可能性があるため、「短時間の光曝露なら大丈夫」という感覚が外れる場合があります。食品工業技術センターの資料でも、一重項酸素は寿命は短いが反応性に富む、とされています。
実務の工夫としては、遮光(包装材・保管場所)、光増感物質の管理、金属の混入抑制(装置材質・水の金属イオン)、そして酸素の低減(脱酸素剤・ガス置換など)を“セット”で考えるのが現実的です。特に農業関連の加工現場では、原料ロット差で色素量が変動することがあるため、色の濃いロットほど光に敏感になる可能性があります。光増感酸化を疑うときは、「温度は低いのに、光の当たり方で劣化の出方が違う」「同じ温度・同じ期間でも、透明容器の方が香りが早く変わる」といった現象が手がかりになります。
必要に応じて、論文の背景理解として寺尾らの総説(脂質過酸化の生成機構に一重項酸素が関与し得る点を含む)も確認すると、ラジカル連鎖だけでは説明しにくい現象の整理に役立ちます。
有用(脂質過酸化の生成と消去、LOOH・一重項酸素などの整理): 生体内における過酸化脂質の発生と消去(寺尾純二, 2009)
有用(自動酸化・光増感酸化・POV/AVなど品質指標の実務整理): 食品脂質の様々な劣化反応(あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センターニュース)

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