特用作物の乾燥は、単に水分を抜く作業ではなく、香り・色・有効成分・歩留まりを同時に守る工程です。特に薬用作物では、乾燥が品質に大きく影響するため、乾燥方法・温度・時間を徹底管理し、記録することが求められ、乾燥温度は通例60℃以下とされています。
これは「60℃以下なら絶対安全」という意味ではなく、精油の揮散(香り成分の飛び)や品質変化を起こしにくい上限の目安として理解すると現場で使いやすい基準です。
薬用作物は、香り成分(精油)や熱に弱い成分を含むものがあり、温度を上げて時間を短縮すると、乾いた後に“軽い香り”“薄い色”“基準外の成分値”として跳ね返ってくることがあります。乾燥機側の設定では、送風温度だけでなく、実際に作物が感じる「品温(穀温)」が重要で、機種・張り込み量・風量・攪拌状態で品温はズレます。だからこそ、乾燥機の表示温度だけで判断せず、代表点の温度計測と記録を残す運用が強いです。
有名どころの失敗は「最初だけ強火で一気に水分を飛ばす」運転です。表面が先に乾いて内部の水分移動が追いつかないと、割れ・ひび・色ムラ・成分ムラを招き、後工程(選別・調製・粉砕・出荷)でロスが増えます。品質は最終製品(乾燥品、粉、刻み)で評価されるため、乾燥工程での“速さ”が、後工程の“遅さ”や“歩留まり低下”に変換されないかを常に点検してください。
乾燥温度の考え方を現場用に整理すると、次の順番が現実的です。
✅ 1) 出荷規格(色、香り、成分)に対して温度上限を決める
✅ 2) 上限温度の範囲で、風量・攪拌・テンパリング(休ませ)で速度を稼ぐ
✅ 3) それでも間に合わないなら、乾燥機を大きくする/台数を増やす/収穫計画を変える
温度で無理を通すと、品質でツケを払います。
参考:薬用作物の乾燥温度(通例60℃以下)、乾燥の記録管理、精油の揮散防止など(乾燥工程の考え方)
https://www.nikkankyo.org/create/pdf/guide.pdf
そばは「乾けばOK」ではなく、粉にした時の色・香り・食味で評価が決まるため、乾燥条件が収益に直結します。福井県の報告では、早期収穫ソバの乾燥で穀温30℃前後の加温乾燥を行い、15時間程度で乾燥させることで、製粉時の色が緑色に近く、食味評価(色)が高いことが示されています。さらに、常温通風よりも30℃通風で乾燥させた方が、そば粉の色が緑色に近い傾向が示されています。
ここで重要なのは「30℃」という数字そのものより、狙うべき状態が“穀温(品温)30℃前後”である点です。乾燥機の送風温度を30℃にしても、張り込み量が少ない・風量が強い・外気が乾燥している、など条件で品温が変わるため、品温を中心に管理するのが再現性の高い運用です。
そして、乾燥調製で見落とされがちなのが「乾燥開始までの時間」です。早期収穫ソバは高水分で、収穫後の経過時間によってルチン含量が減少し、4.5時間後には1.5時間後と比べてルチン含量が11.5%減少した、という結果が報告されています。つまり、乾燥機の性能だけ上げても、搬入が遅い・仮置きが長いと、品質がすでに落ちている可能性があります。
現場で効く対策は、設備よりも動線の改善が先です。
最後に、乾燥ムラ対策です。報告では、平型乾燥機で乾燥を進めた際、成熟玄そばと未熟玄そばの水分が互いに調湿されず、平均水分が約16%の時点で未熟が17.2%、成熟が13.4%といった差が出ることが示されています。平均水分だけで止めると、未熟はまだ高水分、成熟は過乾燥になりやすいので、攪拌やテンパリング(途中で休ませて水分をならす)を運用に組み込む価値があります。
参考:そばの乾燥(穀温30℃前後、15時間程度)と色・食味、収穫後の成分低下、乾燥ムラの実測(テンパリングの示唆)
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/noushi/kikaku/bulletin_d/fil/47_1.pdf
特用作物の乾燥でクレームやロスを生む原因は、「最終水分の平均値」ではなく「バラつき」です。乾燥機の表示が狙いの水分になっていても、実際には“乾きすぎの粒・乾ききっていない塊・芯水分が残った根茎”が混在し、選別で落ちたり、保管中にカビたり、加工工程で割れたりします。
乾燥ムラが出る典型パターンは次の通りです。
この対策として、攪拌とテンパリング(乾燥の途中・または仕上げ前に送風や加温を弱めて“ならす時間”を取る)が効きます。そばの例ですが、平型乾燥機では成熟と未熟の水分差が残りやすく、平均が15%になる前に数時間のテンパリングを入れることで問題を解決できる可能性がある、と報告されています。こうした考え方は、そば以外の特用作物にも横展開できます。
運用の落とし込みとしては、次のように“ルール化”すると現場がブレません。
乾燥機は“熱源”ですが、品質は“運転ルール”で決まります。乾燥速度の議論より先に、ムラの測定(場所別水分)を始めると、導入した乾燥機の能力を無駄にしません。
検索上位の記事では、乾燥機のスペック比較(熱源、能力、燃費)や、乾燥温度の一般論で止まることが多いですが、特用作物は“乾燥品そのものが商品”で、成分・香り・色が価格に直結します。そこで独自視点として、乾燥機の導入効果を最大化する「乾燥ログ(記録)」を最初から設計する発想を提案します。
薬用植物の加工手引きでは、乾燥の方法・温度・時間などを管理し、記録することが明記されています。これを「監査対応のための書類」と捉えると負担ですが、「来年の自分を助けるデータ」と捉えると投資になります。乾燥ログが貯まると、同じ作物でも“品種・圃場・収穫日・天気・サイズ・含水率”で最適条件が変わることが見えてきて、毎年の試行錯誤が減ります。
最低限、現場で回るログ項目はこれだけで十分です(スマホのメモでも可)。
意外と効くのが「収穫後経過時間」のログです。そばでは、収穫後の経過でルチンが減少し得ることが示されており、乾燥機の強化よりも“すぐ乾かす仕組み”が品質に効く場合があります。つまり、ログを取ると、設備投資の優先順位(乾燥機か、運搬か、仮置き通風か、夜間稼働か)が数字で判断できるようになります。
さらに一歩進めるなら、乾燥ログを「販売資料」に転用できます。たとえば、加工・乾燥条件を一定に保ち、温度・時間の記録が残っているロットは、買い手(加工業者、卸、製薬系)に対して説明力が上がり、継続取引の根拠になります。特用作物は“作り方の信用”が価格を押し上げるため、乾燥ログは経営の武器になります。

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