「パリン」という感覚は、トマトなら果皮が「裂ける」、塊根なら縦方向に「割れる」など、外観品質を落とす割れの瞬間を指すことが多いです。
現場で一番多い引き金は、土壌水分が短時間で大きく変わることです。
乾いた状態が続いたあとに、まとまった降雨や一気潅水が入ると、作物が急に吸水して内部が膨らみ、表皮側の伸びが追いつかず裂けやすくなります。
対策は「水を増やす・減らす」ではなく、「水分の波を小さくする」発想が要です。
参考)トマトの裂果とは?原因と対策を解説 - ゼロアグリゼロアグリ
例えば施設栽培では、少量多潅水で日内の含水率変動を抑える、露地ならマルチ・敷き草・有機物投入で保水と排水のバランスを整え、乾湿差を小さくします。
参考)裂開病(裂開症状)
塊根の裂開症状では、塊根形成初期の土壌温度や土壌水分の影響が大きいとされ、初期に乾燥→急吸水が入ると裂開が誘発され、その後の低温や乾燥で治癒しにくい点も押さえどころです。
「割れ」と一口に言っても、トマトでは放射状裂果(ガク下から放射状に割れる)と、同心円裂果(ガク周りに同心円状に割れる)といった出方の違いがあります。
放射状裂果は高温期に多く、強日射や吸水、結露などが原因の一部として挙げられています。
同心円裂果も含め、急激な吸水や環境ストレスが絡むため、「潅水量」だけでなく「樹勢」「気温・日射」「結露」をセットで見ないと再発します。
現場メモとしては、割れ方のパターンを写真と一緒に記録すると、原因の切り分けが急にラクになります。
放射状なら高温・日射ピーク日の管理や、日中の蒸散と夜間の結露差、同心円寄りなら水分変動や成熟期の皮の硬化など、疑う順番が立てやすいからです。
「パリン」と感じた瞬間の前後(前日~当日)の天候・潅水ログが残っているほど、次作の改善精度が上がります。
塊根の裂開症状(縦に深く割れる)は、外観品質を著しく損なうタイプで、発生には土壌水分だけでなく土壌物理性や施肥の偏りが関与します。
対策として、適度な深耕で土壌物理性を改善すること、カリ過剰にならないよう適正な施肥管理、有機物施用による土作り(地力低下防止)が基本として整理されています。
また、極端な密植・疎植、早植え・晩植を避ける、良質苗を使うなど、栽培管理も「割れを出さない前提条件」として扱われています。
ここで重要なのは、「水」対策だけ先行すると、土が締まりすぎ・排水不良・根域不足が残り、結局“急吸水”が起きやすい圃場構造のままになる点です。
深耕や有機物で“水が入る場所”と“抜ける道”を作っておくと、同じ降雨でも根域の水ストレスが小さくなり、裂開リスクの山が低くなります。
施肥はN-P-Kの量だけでなく、過剰なカリが絡むと症状が出やすいという整理があるため、土壌診断の数値を見ながら「足りない成分を足す」より「偏りを作らない」運用が有効です。
参考)肥料用語ディクショナリー
トマトの裂果対策として、土壌水分の急変を抑えるために「少量多潅水」を中心に対策する、という整理があります。
露地でも同じで、乾燥が進みきる前に“少し戻す”を繰り返し、作物に「水が突然来る」状況を作らないのが狙いです。
潅水の設計は「総量」より「振れ幅」を管理指標にすると、パリン系トラブル(割れ)が減りやすいです。
実務で効くチェックポイントを、作業に落とせる形にしておきます。
・🌡️高温期:日射ピーク日ほど、夕方~夜の吸水が過剰になりやすい前提で、昼の乾き過ぎを避ける(ただし過湿は別問題)。
・💧降雨前後:雨の前に乾燥が進んでいると急吸水が起きやすいので、天気予報で「乾かしすぎない」管理に寄せる。
・🪴根域:根が浅い/根域が狭いと、同じ水分変化でも植物体への影響が増幅されやすいので、土壌物理性(通気・排水・保水)の改善も並行する。
検索上位の多くは「原因と対策」までで止まりがちですが、現場で差が出るのは“割れる前のサイン”を拾って先回りする運用です。
例えば、裂果は「水分変動」だけでなく「樹勢低下」など環境要因も絡むという整理があるため、葉色・萎れの出方・夜間の結露・果実の張りの変化を、潅水量の調整トリガーにすると再現性が上がります。
塊根の裂開症状でも、形成初期の条件が大きいとされるので、初期に乾燥させすぎない、急に吸水させないという“初期だけは特に丁寧に”の運用が、結果的に全期間のロスを減らします。
さらに意外に効くのが、「記録の粒度」です。
潅水量を日単位でしか残していない場合、日内の乾湿差(昼に乾きすぎ→夜に戻しすぎ)が見えず、対策が「総量を減らす/増やす」に偏って失敗しがちです。
タイムスタンプ付きで、潅水開始時刻・回数・天候(強日射/曇天/雨)を揃えていくと、「パリンが出た日」に共通する“前兆パターン”が見えるようになります。
皮脈症状のように、高温乾燥年に多い傾向、マルチ栽培が助長、カリ過剰で増える、といった整理もあるため、「割れ」以外の外観障害も同じ土壌水分×施肥管理の延長線で点検できます。
参考)https://boujo.net/handbook/newhandbook15/%E7%9A%AE%E8%84%88%E7%97%87%E7%8A%B6.html
裂果(割れ)の概説(放射状裂果・同心円裂果、水分変動の考え方)
トマトの裂果とは?原因と対策を解説 - ゼロアグリゼロアグリ
裂開症状の要因と、深耕・施肥管理などの基本対策(塊根形成初期の水分影響)
裂開病(裂開症状)
肥料用語の基礎(施肥設計の前提整理に使える)
肥料用語ディクショナリー

madame FIGARO japon (フィガロジャポン) 2025年5月号[特集:パリに恋して/パリのベストグルメ/ヴェルサイユへの旅][雑誌]