セルトレイ洗浄機の本質は「汚れの種類に合う力を、均一に、繰り返し当てる」ことです。培土は粒子の集合体なので“水で溶かす”より“水で崩して押し流す”要素が強く、結果として水圧と水量(流量)のバランスが効いてきます。高圧で当てれば落ちる、という単純な話ではなく、当て方(角度・距離・時間)と排水の逃がし方まで含めて設計されている機械ほど、仕上がりのムラが減ります。
方式は大きく分けると、(1)専用機で自動搬送しながら上下から噴射するタイプ、(2)既存の高圧動噴に接続して水圧で洗浄するタイプ、の考え方があります。後者の例として、動噴に接続して洗浄する方式は「手持ち機材を活かしてコストを下げる」発想で、トレイ洗いの時間短縮を狙える、と明記されています。takii-material+1
現場で差が出るのは、根が絡んだ“乾いた培土の塊”や、夏場に増える藻・バイオフィルム系のぬめりです。ここは「一回で完璧」を狙うより、前処理(軽い予備すすぎ)→本洗浄→乾燥、をルーチン化した方が、結果的に詰まり・水跳ね・やり直しが減ってトータルが速いです。高圧洗浄は便利ですが、洗い残しが乾いて固着すると次回はさらに落ちにくくなるため、“乾かし切る前に落とす”のがコツです。agri-agri+1
セルトレイ洗浄機の導入目的は、単純な「早さ」だけでなく、洗浄品質の標準化にあります。手洗いは担当者の癖(力の入れ方、当てる場所、すすぎの長さ)が出やすく、繁忙期ほど品質がぶれます。一方で洗浄機は、噴射が一定なので“毎回同じ洗い”に寄せやすく、育苗が増えるほどメリットが積み上がります。
省力化は「洗う時間」だけでなく、周辺作業も含めて評価すると判断しやすいです。例えば、泥はね対策の養生、ホースの取り回し、腰を曲げる姿勢、乾燥場所の確保、排水溝の泥さらい——このあたりが手洗いの隠れコストになりがちです。洗浄機を入れると、作業の“律速”が洗いから乾燥・搬送に移るので、乾燥ラックや保管動線まで一緒に見直すと効果が出ます。
参考)労力・作業時間の削減に!「マルチトレイ洗浄機」 - イケック…
また、動噴接続型のように「既存設備の活用」で始めるのも現実的です。高圧動噴に接続して洗浄し、手持ちの動噴を使ってコストダウンできる、という説明がある機種もあり、まずは投資を抑えて“洗いの型”を作る段階に向きます。
セルトレイは「苗に触れる容器」なので、汚れが残ると病害リスクの持ち込み要因になり得ます。研究成果の中でも、苗立枯病(ピシウム、リゾクトニア)が発生すると拡大しやすいので、セルトレイなどの用具は次亜塩素酸カルシウム剤などを用いて念入りに洗浄・消毒する、という注意が示されています。
ここで大事なのは、消毒は“洗浄の後”に効くという点です。培土や有機物が付いたままだと、薬剤が表面まで届きにくく、効きが不安定になりがちです。よくある失敗は「忙しいから薬を濃くする」ですが、濃度を上げても汚れが残れば結果が出にくいので、機械洗浄でまず物理的に落とす価値が出ます。
参考)https://agresearcher.maff.go.jp/seika/show/233015
段取りの基本は次の通りです(現場の水・乾燥環境に合わせて調整してください)。
(用具の洗浄・消毒の重要性:苗立枯病の拡大リスクと、次亜塩素酸カルシウム剤などでの洗浄・消毒の注意)
農研機構 研究成果詳細「エブ&フロー方式によるキャベツセル成型育苗基本技術」
「落ちない」の原因を分解すると、(1)当たっていない、(2)当たっているが流れていない、(3)落ちた汚れが再付着している、のどれかです。ノズル角度や配置は(1)に直結し、水量(流量)や排水設計は(2)(3)に効きます。だから、洗浄機を選ぶときはカタログの“圧力”だけでなく、上下から噴射できるか、詰まりやすい部位に当たる設計か、排水が詰まったときに掃除しやすいか、まで確認した方が失敗が減ります。
動噴接続型の考え方は、設備側(動噴)の能力がそのまま洗浄品質に反映されるのが特徴です。実際に、動噴接続で洗浄し、手持ちの動噴を使ってコストダウンできる、という説明があり、既存の動噴の状態(圧力が出るか、吐出が安定しているか、ホースが劣化していないか)も“洗浄機の性能の一部”になります。
意外に効くのが「水温」と「乾き具合」です。冬の冷水は油分やぬめりが落ちにくく、乾燥して固まった培土は高圧でも割れ方が悪いので、予備すすぎで“ふやかす”だけで落ち方が改善することがあります。水量を増やす前に、当て方・タイミング・ふやかしを見直すと、ポンプ負担を増やさずに改善できるケースがあります。welcome-ogihara+1
検索上位の説明では「洗浄の省力化」に焦点が当たりやすい一方、現場で見落とされやすいのが“洗った後の再汚染”です。洗浄が終わっても、濡れたまま積んで放置すると、残った微細な有機物に水が供給され、ぬめりや臭いの原因になりやすくなります。つまり、洗浄機を入れても、乾燥の仕組みが弱いとトラブルが残ります。
ここで効くのが「保管のルール化」です。
もう一つの独自ポイントは「洗浄の基準を“目視”だけにしない」ことです。セルの角の茶色い膜、穴の縁のザラつき、匂い、乾いた後の白い析出(硬水や薬剤由来)など、再発するサインをチェック項目として固定すると、担当者が変わっても品質が揃います。洗浄機は“人を減らす”道具でもありますが、同時に“判断を簡単にする”道具として設計すると、導入効果が長持ちします。
※本記事は「セルトレイ洗浄機」を軸に、方式(動噴接続など)と、病害リスク低減のための洗浄・消毒の考え方(次亜塩素酸カルシウム剤など)を、実務運用に落とし込む目的で構成しています。agresearcher.maff+1