セイヨウオトギリソウ食品例と成分や相互作用の注意

セイヨウオトギリソウは食品として流通していますが、医薬品との飲み合わせに注意が必要です。具体的な食品例や栽培方法、規制区分について詳しく解説します。あなたの知識は最新ですか?

セイヨウオトギリソウの食品例

記事の概要
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食薬区分の基礎

「全草」が非医薬品に分類され、食品として販売可能

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相互作用のリスク

多くの医薬品の効果を弱めるCYP3A4誘導作用に注意

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栽培と活用の可能性

強健な性質と収穫適期、フレッシュハーブとしての価値

セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)は、その気分の落ち込みを和らげる作用から「ハッピーハーブ」や「サンシャインサプリメント」とも呼ばれ、欧米を中心に古くから親しまれてきました。日本国内においても、このハーブは特定の部位が「非医薬品」に区分されており、一般的な食品としてスーパーマーケットやドラッグストア、インターネット通販などで広く流通しています。農業従事者や食品加工に関わる方々にとって、このハーブがどのような形態で食品として利用されているかを知ることは、商品開発や栽培品目の選定において非常に重要です。

 

主な食品としての利用例には以下のようなものがあります。

 

  • サプリメント(粒・カプセル)

    最も一般的な形態です。乾燥エキスを濃縮し、手軽に摂取できるようにしたもので、成分の含有量が規格化されている場合が多いです。

     

  • ハーブティー(単体・ブレンド)

    乾燥させた葉や花をお湯で抽出して飲みます。独特の苦味があるため、レモングラスやミント、カモミールなど他のハーブとブレンドされた商品が主流です。

     

  • リキュールや健康酒

    海外では伝統的にスピリッツに漬け込み、食後酒として利用されることがあります。日本国内でも、自家製のハーブ酒として楽しむ愛好家がいます。

     

  • キャンディやガム

    リラックス効果を謳った菓子類に微量配合されるケースがあります。

     

  • 食用オイル(インフューズドオイル)

    花を植物油に漬け込んで成分を抽出した真っ赤なオイルは、外用が主ですが、食用グレードのオイルで作られたものはドレッシングなどに使われることもあります。

     

これらの食品は身近に存在しますが、セイヨウオトギリソウには強力な生理活性作用があるため、単なる「健康に良いハーブ」としてだけでなく、そのリスク管理や正しい表示が求められる素材でもあります。

 

セイヨウオトギリソウの食薬区分と成分

 

日本においてハーブを食品として扱う際、最も重要になるのが厚生労働省が定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」と「医薬品的な効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」の区分です。これを理解していないと、生産した作物を加工販売する際に薬機法(旧薬事法)違反となるリスクがあります。

 

セイヨウオトギリソウの場合、「全草(地上部)」が「非医薬品」リストに分類されています 。これは、葉、茎、花を含む地上部のすべてが、適切な表示を行う限りにおいて、野菜や果物と同様に「食品」として販売・加工が可能であることを意味します。根に関しては明記がない場合が多いですが、通常利用されるのは地上部です。この区分のおかげで、農家が収穫したセイヨウオトギリソウを乾燥させて「ハーブティー」として直売所で販売することは法的に問題ありません。

 

参考)エラー

しかし、ここで重要なのが成分の問題です。セイヨウオトギリソウの主要な有用成分には以下のものがあります。

 

  • ヒペリシン (Hypericin)

    赤い色素成分で、抗ウイルス作用やドーパミン代謝に関与すると考えられています。光過敏症の原因物質でもあります。

     

  • ヒペルフォリン (Hyperforin)

    セロトニン等の神経伝達物質の再取り込みを阻害し、抗うつ様作用を示すとされる主要成分です。一方で、この成分が肝臓の薬物代謝酵素(CYP3A4など)を誘導し、医薬品の分解を促進してしまう原因物質でもあります。

     

食品として扱う場合であっても、これらの成分が含まれている以上、消費者に対する安全性の配慮が不可欠です。特に「うつ病が治る」「不眠症が改善する」といった医薬品的な効能効果を謳うことは厳禁です。これらを謳った瞬間、その商品は未承認医薬品とみなされ、取締の対象となります 。

 

参考)https://www.jhnfa.org/tokuhou107.pdf

参考リンク:厚生労働省 - 「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いについて」
※このリンクには、どの植物のどの部位が食品として扱えるかの最新リストが掲載されています。

 

セイヨウオトギリソウのサプリメントやお茶

セイヨウオトギリソウを利用した加工食品の中で、市場規模が大きく、消費者の目に触れやすいのがサプリメントとお茶です。それぞれの特徴と、農業サイドから見た商品化のヒントを掘り下げます。

 

サプリメントの市場と特徴
サプリメントは、成分を効率よく摂取したい層に支持されています。製品の多くは「標準化エキス(Standardized Extract)」を使用しており、ヒペリシンを0.3%、ヒペルフォリンを3%といったように、一定の成分濃度を保証した原料が使われます。これは主に海外からの輸入原料や、大規模な抽出工場で製造された粉末が用いられます。

 

国内の農業生産者がこの分野に参入する場合、大手メーカーと同じ土俵で戦うのは難しいため、抽出物ではなく、「有機栽培された原料そのものの粉末」「国産100%」という付加価値をつける戦略が考えられます。トレーサビリティ(生産履歴)が明確な国産ハーブサプリメントは、食の安全を重視する層に需要があります。

 

お茶(ハーブティー)の可能性
一方、お茶の形態はより加工のハードルが低く、農産加工品として取り組みやすい分野です。

 

セイヨウオトギリソウのハーブティーは、単体ではやや木の香りがする枯草のような風味で、強い苦味を感じることがあります。そのため、飲みやすくするためのブレンド技術が商品価値を左右します。

 

  • 人気のブレンド例
    • レモンバーム(メリッサ):柑橘系の香りで飲みやすくし、リラックス感を高める。
    • カモミール:甘い香りで苦味をマスクする。
    • ペパーミント:清涼感ですっきりさせる。

    また、「爽健美茶」のような大手飲料メーカーのブレンド茶にも、過去に原材料として記載されていた時期があるなど、知名度は決して低くありません(現在は配合が変更されている場合があるため、必ず最新の製品表示を確認する必要があります)。

     

    参考)https://ameblo.jp/mampharm/entry-12842267223.html

    農家が自ら加工販売する場合、乾燥茶葉だけでなく、摘みたてのフレッシュハーブティーを農家レストランやカフェで提供するという独自性も打ち出せます。フレッシュなセイヨウオトギリソウは、乾燥品よりも草の香りが鮮烈で、鮮やかな黄色の花がポットの中で映えるため、視覚的な魅力も提供できます。

     

    セイヨウオトギリソウと医薬品の相互作用

    食品として扱う上で、絶対に避けて通れないのが「医薬品との相互作用」です。これはセイヨウオトギリソウが「食品」であっても、人体に強力な影響を与える証拠でもあります。販売者には、この情報を消費者に適切に伝える道義的(場合によっては法的)責任があります。

     

    セイヨウオトギリソウに含まれる成分は、肝臓にある薬物代謝酵素「CYP3A4」や「P糖タンパク質」の働きを活性化(誘導)させます 。これにより、同時に服用している医薬品が通常よりも速く分解・排出されてしまい、薬の効果が弱まってしまう(効かなくなる)という現象が起こります。逆に、セイヨウオトギリソウの摂取をやめた途端に薬の血中濃度が急上昇し、副作用が出るリスクもあります。

     

    参考)セイヨウオトギリソウ含有食品 - ウィメンズヘルスケアオンラ…

    特に影響を受ける代表的な医薬品は以下の通りです 。

     

    参考)薬と飲食物などの相互作用/前橋市

    薬剤の種類 具体的な薬剤名の例 相互作用の結果
    免疫抑制薬 シクロスポリン、タクロリムス 臓器移植後の拒絶反応が起こる危険性
    抗HIV薬 インジナビル、サキナビル ウイルスの増殖を抑えられなくなる
    経口避妊薬 ピル(低用量ピル含む) 避妊効果が低下し、予期せぬ妊娠のリスク
    強心薬 ジゴキシン 心不全のコントロールができなくなる
    抗凝固薬 ワルファリン 血液が固まりやすくなり、血栓リスク増大
    気管支拡張薬 テオフィリン 喘息発作のコントロール不良
    抗てんかん薬 カルバマゼピン てんかん発作の再発リスク

    このリストは非常に広範囲にわたります。特に、命に関わる薬剤(免疫抑制薬や抗HIV薬、抗凝固薬)が含まれている点が深刻です。

     

    厚生労働省もこの問題には敏感で、医薬品の添付文書においてセイヨウオトギリソウ含有食品との併用注意を記載するよう指導しています 。

     

    参考)https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1205/h0510-1_15.html

    したがって、セイヨウオトギリソウを含む食品(お茶やクッキーなど)を販売する際は、パッケージの見やすい場所に「医薬品を服用中の方は、医師・薬剤師にご相談ください」という注意書きを必ず記載するべきです。これはクレーム対策ではなく、消費者の健康を守るための必須事項です。

     

    参考リンク:厚生労働省 - セント・ジョーンズ・ワートと医薬品の相互作用について
    ※医療関係者向けの詳細な通知ですが、食品販売者が知っておくべきリスクの根拠が示されています。

     

    セイヨウオトギリソウの摂取における注意

    医薬品との相互作用以外にも、セイヨウオトギリソウの摂取に際して知っておくべき注意点がいくつかあります。これらは食品としての品質管理や、顧客への説明に役立ちます。

     

    1. 光線過敏症(光過敏反応)
    セイヨウオトギリソウに含まれるヒペリシンという成分は、光に反応する性質を持っています。大量に摂取した状態で強い紫外線(日光)に当たると、皮膚に発疹やかゆみ、水ぶくれなどの光線過敏症の症状が出ることがあります 。

    通常の食品としての摂取量(ハーブティー1日1~2杯程度)であれば発生頻度は稀とされていますが、色白の方や皮膚が敏感な方、あるいは夏場の屋外作業が多い農業従事者自身が試飲する際には注意が必要です。家畜(特に白い毛の馬や羊)が大量に食べて皮膚炎を起こす事例は古くから知られています。

     

    2. 妊娠中・授乳中の摂取
    妊娠中や授乳中の安全性については十分なデータが確立されていません。子宮収縮作用の可能性も一部で指摘されているため、「妊娠中・授乳中の方は摂取を控える」よう案内するのが無難であり、誠実な対応です。

     

    3. 手術前の休止
    全身麻酔薬や鎮痛薬の代謝にも影響を与える可能性があるため、手術を予定している人は、少なくとも手術の数日前から摂取を中止する必要があります。

     

    4. セロトニン症候群
    抗うつ薬(SSRIなど)を服用している人が、自己判断で「ハーブなら安心」と併用してしまうと、脳内のセロトニン濃度が高くなりすぎ、不安、興奮、震え、発熱などを伴う「セロトニン症候群」を引き起こすリスクがあります。これも相互作用の一種ですが、薬の効果が「切れる」のではなく「効きすぎて暴走する」パターンです。

     

    これらの情報は、商品を販売する際のPOPやウェブサイトの商品説明欄に「Q&A」として掲載することで、信頼性を高めることができます。隠さずにリスク情報を開示することは、今の時代の消費者にとって安心材料となります。

     

    セイヨウオトギリソウの栽培と収穫のポイント

    最後に、農業従事者向けの独自視点として、セイヨウオトギリソウの栽培特性と収穫について解説します。多くの情報は「摂取」に関するものばかりですが、生産者にとっては「いかに高品質なものを作るか」が重要です。

     

    強健で野生化しやすい性質
    セイヨウオトギリソウ(学名:Hypericum perforatum)は、ユーラシア大陸原産の多年草です。非常に強健で、一度根付くと地下茎で広がり、こぼれ種でも増えます。この繁殖力の強さは、裏を返せば「栽培の手間がかからない」というメリットになります 。

     

    参考)https://love-evergreen.com/zukan/plant/10383.html

    日当たりが良く、水はけの良い土壌を好みますが、土質はあまり選びません。肥料もほとんど必要とせず、痩せ地でも育ちます。逆に、窒素肥料を与えすぎると葉ばかりが茂り、有効成分を含む花のつきが悪くなる傾向があります 。

     

    参考)https://ozaki-flowerpark.co.jp/dictionary/2363/

    収穫のベストタイミング:聖ヨハネの日
    英名「セント・ジョーンズ・ワート(St. John's Wort)」の由来は、聖ヨハネ(St. John)の誕生日である6月24日頃に花が満開になり、この日に収穫すると最も治癒力が高いという伝統的な言い伝えがあるためです 。

     

    参考)園芸ネット本店|「セント・ジョンズ・ワート」の栽培ガイド【公…

    科学的な視点からも、有効成分であるヒペリシンは、蕾から開花直後の花部や、葉にある黒い点(油点)に多く含まれています。そのため、満開の時期を逃さず、茎の上部(花と葉がついている部分)を刈り取るのが品質を高めるコツです。

     

    国産原料としての差別化
    現在、国内で流通しているセイヨウオトギリソウ原料の多くは海外からの輸入品です。しかし、輸入品は輸送過程での品質劣化や、農薬使用の不安がつきまといます。

     

    日本の農業技術を活かした「無農薬・国内栽培」のセイヨウオトギリソウは、安心安全を求める層や、国産素材にこだわる加工業者(化粧品メーカーやハーブティー専門店)からの需要が期待できます 。

     

    参考)https://www.nibn.go.jp/introduction/committee/backnumber/16-2-5.pdf

    また、観賞用としても黄色い花が美しいため、観光農園の修景植物として植栽しつつ、収穫物を商品化するという「六次産業化」の商材としても面白い存在です。ただし、周辺の生態系に影響を与えないよう、逸出(畑の外へ逃げ出すこと)防止の管理は徹底する必要があります。北海道など一部地域では外来種として野生化が確認されており、地域の植生への配慮もプロの農家としての責任です。

     

     


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