「モーア コピペ」という言葉だけが一人歩きしがちですが、農業現場での“モア”は草刈機(mower)を指し、刈払機とは別物として捉えるのが安全の第一歩です。
一般にモアは自走し、刃がむき出しではない構造が多いため、刈払機より安全性が高いと見なされやすい一方、実際には負傷事故が起きており油断は禁物です。
使いどころは「広くて比較的平坦」な場所が基本で、牧草地・休耕地・農道・あぜ道・芝地・果樹園などの整理された区画で力を発揮します。
逆に、極端な傾斜地や障害物が多い狭い庭のような環境は不向きで、無理に持ち込むと転倒・巻き込み・飛散のリスクを引き上げます。
「乗用モア(乗って操作)」と「自走式モア(歩きながら操作)」があり、同じ“モア”でも作業者の姿勢・死角・転倒時の危険度が変わる点を意識すると、機械選定がブレにくくなります。
乗用モアは座席下の回転刃で草を切り刻み、走行方式は2輪駆動が一般的ですが、4輪駆動やクローラー式など傾斜に強いタイプもあります。
「ゴーカート感覚」と表現されることもある一方で、基本的に公道走行できない点は、圃場間移動の段取り(積載・回送)に直結するので導入前に必ず確認が必要です。
一部は“小型特殊自動車”に区分され、学科試験などの条件を満たすと公道走行が可能なケースがあるため、地域の圃場配置によっては導入メリットが変わります。
自走式モアは耕うん機・管理機に近い感覚で小回りが利き、狭い場所や障害物が点在する区画で使われやすい反面、歩行作業ゆえに足元の草で溝や段差が隠れると事故に直結します。
「広さ」「傾斜」「障害物」「圃場間移動」の4点で機種を絞ると、作業効率だけでなく事故率も下がりやすいです。
草刈機の刃は代表的にハンマーナイフ式とロータリーナイフ式があり、ここを理解すると「飛び石」「絡みつき」「メンテ費」の見立てが精密になります。
ハンマーナイフ式はY字型の刃が遠心力で振り出されて草を細かく刈り刻み、石など硬いものに当たると刃が“逃げる”設計で破損しにくい工夫があります。
また刃が両刃で、片面が鈍れば向きを変えて使えるため、交換頻度とコスト感が読みやすい点も現場向きです。
一方でドラム式のためツル草の絡みつきは苦手になりやすく、作業前の下見(ツルが多いか)でトラブルの予防ができます。
ロータリーナイフ式は構造がシンプルで刃交換の手間とコストを抑えられる長所がある反面、石など障害物に弱い短所があるため、石が出やすい畦や法面ではリスクが上がります。
ロータリーナイフ式でも「バーナイフ型」「フリーナイフ型」「クロスナイフ型」などがあり、フリーナイフ型は石に当たった時に刃が逃げる特性があるので、場所次第で選択価値があります。
「モアは刈払機より安全」と言われがちですが、刃物が高速回転し、エンジンで移動する機械である以上、危険が消えるわけではありません。
典型例として、草に隠れた溝に自走式モアが落ち、引き上げようとバックした際に転倒して足が刃に巻き込まれ、右脚切断に至った事故が報告されています。
このケースでは、バック時に刃の回転クラッチを切らなかった点が要因として挙げられ、後進操作そのものが“事故の山場”になりやすいと分かります。
また、刈り残しを取ろうとしてバックしながら作業し、傾斜面をモアごと落下して腰椎骨折に至った事故もあり、「刈り残し=後進で処理」を習慣化している現場ほど注意が必要です。
飛び石も軽視できず、畔で高速前進中に石が跳ねて足に当たり骨折した例があり、低速前進・安全靴・すね当てなどの対策が示されています。
さらにトラクター用モアでは、10m程度離れていても“こぶし大の石”が飛散して指を骨折した事例があり、カバー(スカート部)の破損点検と距離確保が重要です。
安全対策を現場の手順に落とすなら、次のチェックが効きます。
✅ 作業前:草で隠れた溝・段差・石の多い帯を歩いて確認する(目視できるうちに潰す)
✅ 旋回・方向転換:刈り残しは「方向転換して前進で刈る」を原則にする(バック草刈りを封印)
✅ 後進が必要な場面:刃の回転クラッチを切ってから動かす(“動力と刃”を同時に扱わない)
✅ 周囲:人や車が見えたら停止する(10mルールより厳しめに運用する発想)
検索上位の安全記事は装備や注意点の説明が中心になりやすい一方、実務では「手順を先に決める」ほうが事故を減らせる場面があります。
そこで独自の運用ルールとして、班や家族内で“バックしながら刈らない(バック禁止)”を明文化し、刈り残しは必ず方向転換→前進で処理する形に固定すると、ヒヤリハットの発生点を一つ潰せます。
記事内の事故例でも、バック時の転倒や後方未確認が重傷につながっているため、禁止ルール化は理屈ではなく実例に裏打ちされた対策と言えます。
さらに「バックが必要になる状況」を作らないために、最初の走行ラインを“出口が広い側から入る”“溝がある側へ向かって刈り進めない”など、圃場の形に合わせて決めておくと、作業者の判断負担が減ります。
最後に、モアは刈払機より“安全に見える”ことで油断が生まれやすいので、あえて作業前の声かけに「今日のバック禁止」「人が見えたら停止」の2点だけを入れると、現場の注意が一点に集まりやすいです。
草刈機(モア)の種類・刃・事故例がまとまっており、危険ポイント(バック時クラッチ、10m距離、カバー破損点検等)の根拠に使える参考。
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