夏の施設は換気しても40℃を超えることがあり、高温は作物の生育・開花・品質・収量にダメージを与えます。
ミスト機が担う中心的な役割は「細霧冷房」で、微細な霧が空気中で蒸発する際の気化熱によって周囲の熱を奪い、施設内温度の上昇を抑えます。
ただし重要なのは「水を撒けば冷える」ではなく、「蒸発させられた分だけ冷える」という点で、蒸発(気化)しきらない噴霧は葉濡れや床濡れとなり、狙いと逆の結果を招きます。
細霧冷房は、ヒートポンプなどの機械冷房と比べてポンプ電力が小さく、昼間の高温対策としてランニングコスト面で優位になりやすいのが強みです。
一方で、気温が下がると同時に空気中の水蒸気量が増え、相対湿度は上がります。
相対湿度が上がりすぎると水滴が蒸発しにくくなるため、換気で湿った空気を外へ出す――この「蒸発+換気」のセットが気化冷却の基本設計です。
意外に見落とされがちなのが、「冷却は設備の能力よりも、外気条件(乾き具合)に縛られる」点です。
外が蒸し暑い日ほど、同じ噴霧量でも蒸発が進みにくく、温度低下が頭打ちになります。
そのため、ミスト機の評価は“最大何℃下がるか”だけでなく、“狙いの温度帯を何時間維持できるか”で考えた方が、導入後の満足度が安定します。
参考(気化冷却・ドライミストの原理、濡れない連続噴霧、換気がポイント)。
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/515355.pdf
ミスト機の失敗原因で多いのは「ノズル選定と設置の詰めが甘く、気化する前に落ちる」パターンです。
細霧冷房では粒径が小さいほど表面積が増え、蒸発(気化)が進みやすく、昇温抑制効果が高くなり、濡れにくくなります。
逆に粒径が大きい、または粒径がばらつくと、蒸発しきれない粒が作物体に付着して“濡れ”になり、病気を誘発しやすくなります。
設置で効くのは「高さ・角度・配置密度」です。
研究事例では、ノズルを作物から1~2mの高さに設置し、上方45°で噴霧、千鳥配置などでムラを減らす設計が示されています。
さらに、ぼた落ち防止の工夫(バルブ等)や、濡れセンサーで噴霧を止める制御を組み合わせ、連続運転でも濡れを出しにくい方向へ持っていきます。
ここでの“意外な盲点”は、ノズルや配管そのものより「水質と目詰まり管理」が運用コストに直結する点です。
ミストは微細になればなるほどノズル孔が小さく、わずかなスケール(ミネラル析出)やゴミで噴霧状態が崩れ、粒が粗くなって濡れやすくなります。
導入前に、フィルター段数、洗浄・交換頻度、予備ノズルの確保、シーズン前後のフラッシング(配管洗い)まで含めて“維持管理の設計”をしておくと、失敗を潰しやすいです。
参考(ドライミストの粒径、ノズル配置・角度、濡れセンサー等の制御)。
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/515355.pdf
施設の環境制御は温度が中心になりがちですが、温度管理だけでは収量が増えないことが明らかになってきており、気孔を閉じさせない湿度管理が注目されています。
このとき、相対湿度だけで判断するより、温度も含めた指標である「飽差」で管理する方が、作物の反応に合わせやすいとされます。
飽差は「その空気があとどれだけ水蒸気を含めるか」を示す値で、葉の蒸散・気孔開閉と関係が深い考え方です。
飽差が大きい(乾きすぎ)と葉は気孔を閉じて蒸散が止まり、結果としてCO2吸収も落ちます。
一方で飽差が小さすぎる(高湿度すぎ)と、気孔が開いていても水蒸気圧差が小さく蒸散が起こりにくく、CO2吸収が伸びない状態になり得ます。
つまり、CO2発生機で濃度だけ上げても、吸収できる環境(気孔が働く飽差帯)になっていないと投資効率が落ちる、ということです。
この文脈でミスト機は「冷やす装置」でもあり「飽差を整える装置」でもあります。
適切な飽差帯を狙い、噴霧→循環→換気の組合せで、気温と湿度を“作物が仕事できる状態”に寄せていくと、収量のブレが減りやすくなります。
現場では、温度センサーだけでなく、湿度・日射・気流(循環扇)まで含めて「同時に動かす」設計が、結果的に噴霧量を減らし、濡れと電気代の両方を抑える近道になります。
参考(飽差管理、適切な飽差値、CO2吸収と湿度管理の関係、換気・循環の重要性)。
https://mistdotcom.jp/agriculture/climate_control.html
ミスト機の導入で必ず議論になるのが、「湿度が上がるなら病害が増えるのでは?」という不安です。
実際、灰色かび病のように多湿を好む病害は、換気や葉かきで圃場・植物体周辺の湿度を下げることが基本対策として挙げられています。
だからこそミスト運用は、湿度を上げること自体が目的ではなく、「飽差・露点・葉面乾き」を崩さない範囲で、必要な分だけ上げる設計が要になります。
対策の軸は3つです。
ここでの意外なポイントは、「病害リスクは湿度そのものより、葉が濡れる時間で増える」ケースが多いことです。
ドライミストのように粒径を極小化し、蒸発を優先し、作物体を濡らさない思想で組むと、同じ“湿度操作”でもリスクの質が変わります。
つまり、病害が怖いならミストを避けるのではなく、濡れない設計(粒径・配置・制御)と、湿った空気をためない運用(換気・循環)をセットで詰める方が合理的です。
参考(灰色かび病は多湿を好む、換気等で湿度を下げる対策)。
https://www.kankyou-marc.jp/seminar/R5/seminar20240202/seminar20240202-2-1.pdf
検索上位では「何℃下がる」「どんなノズルが良い」が前面に出がちですが、現場で差が出るのは“露点とインターバル設計”です。
ミストで湿度が上がった空気は、温度が少し下がるだけで露点に近づき、結露→葉濡れ→病害リスクへつながります。
逆に言えば、露点を外さない範囲で「短い噴霧+短い停止」を繰り返し、循環扇で気流を作って気化を助け、換気で湿り空気を外へ逃がすと、冷えるのに濡れにくい運用に寄せられます。
省エネの考え方も、単純に「ポンプの消費電力が小さい」だけでは足りません。
水の使用量、換気扇・循環扇の電力、フィルター交換、ノズル洗浄、故障対応まで含めた“総コスト”で見ると、適正な噴霧量に落とし込める制御設計が最終的に効きます。
特に二系統(多段階)で噴霧量を変えられる設計は、気象変化に応じて噴霧のやり過ぎを抑え、気温の上下動も減らしやすいという報告があります。
導入時の現実的な進め方は、いきなり全棟展開ではなく、まず1棟で「温度・湿度・結露(濡れ)・作業性」のログを取り、狙いの飽差帯に入る制御を作ってから横展開することです。
この段階で、遮光・換気の“今の設定”も一緒に見直すと、ミストだけに負担させない設計になり、結果として濡れと病害の芽を減らせます。
ミスト機は単体機械というより、施設環境を「気温・湿度・気流」のセットで組み替えるスイッチと捉えると、投資が回収しやすい運用に到達しやすいです。
参考(露点の理解で結露・葉濡れ懸念を解消、換気・循環が重要)。
https://mistdotcom.jp/agriculture/climate_control.html

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