農業従事者が芝刈り機を選ぶとき、スペック表の数字より先に確認したいのが「取り回し」です。圃場の周囲、ハウスの脇、用水路沿い、畦(あぜ)に近いエリアは、直線の広場より障害物が多く、押し歩きのストレスが作業時間に直結します。そこで候補に上がりやすいのが、18Vの充電式モデルです。
例えばマキタの充電式芝刈機MLM230Dは「刈込幅230mm」「刈込高さ10~55mmを8段階」で、コードを気にせず芝刈りできる設計として紹介されています。 230mmクラスは、家庭用途の印象が強い一方、農業現場でも「建屋まわり・通路の芝だけ整えたい」「小面積を頻回に回したい」ケースだと、取り回し優先が正解になることが多いです。
参考)MLM230D
取り回しで意外に効くのが、作業姿勢の自由度です。タテ型スリムボディを特徴にするMLM160Dは、狭い場所や際刈りへの適性が語られており、従来の押し歩き型と違うアプローチで“細かい管理”に寄せています。 圃場まわりの「端だけ」「溝の縁だけ」のような作業は、広面積を速く刈る力より、狭所で当てずに刈れることが事故防止にもつながります。
参考)マキタ MLM160D 充電式タテ型芝刈機 家庭で使いやすい…
現場向けの目安としては、次のように割り切ると失敗が減ります。
充電式工具の世界で、農業従事者が一番損しやすいのが「バッテリーの分断」です。マキタは18V(LXT)と40Vmax(XGT)でシリーズが分かれ、40Vmaxは“これまでのマキタバッテリーと互換性がない”という指摘があり、完全に独立した製品群として扱う必要がある、という整理がされています。
つまり、すでに18Vのバッテリーを複数持っている人が「芝刈りもマキタで」と考える場合、芝刈り機本体の値段よりも、バッテリーと充電器の追加コスト・保管・充電段取りが効いてきます。農繁期は特に「充電待ち」「電池の取り違い」が地味にロスになります。だからこそ、“今ある資産で回せるか”を最初に決めるのが合理的です。
一方で40Vmax側のメリットは、同一バッテリーを多くのモデルで共通使用できる、という思想です。マキタ公式の40Vmaxシリーズ紹介では「40Vmaxバッテリは200モデル以上に共通使用可能」と明記されています。 すでにXGT環境に投資している現場(例:ブロワ、チェンソー、刈払機などが40Vmax中心)なら、芝刈り機も同じ系統に寄せた方が管理が楽になります。
参考)40Vmaxシリーズ 圧倒的な互換性
判断基準を“現場の運用”に落とすと、次の2択が現実的です。
参考)マキタの36V戦略はどうなるのか、マキタ40Vmax(XGT…
芝刈り機は、同じ機種でも「刃の状態」と「詰まり対策」で体感が別物になります。特に農業現場は、芝生の中に砂・小石・枯れ枝が混ざりやすく、切れ味の低下→作業時間の増加→バッテリー消費増の流れが起きがちです。
マキタの芝刈機関連では、刃の交換・手入れが“楽にできる”点がメリットとして述べられており、多少欠けてもそのまま使用できるケースがある、という説明も見られます。 もちろん欠けや異常が大きい場合は危険なので、取扱説明書の指示に従って交換判断をするのが前提です。
参考)icon-X
メンテナンスで重要なのは「安全手順の徹底」です。マキタの取扱説明書(芝刈機)では、刃物の取り付け・取りはずしの際に“必ずスイッチを切り、本製品からバッテリを抜く”ことが繰り返し警告されています。 また、刃が回転している間に排出口へ手足や顔を近づけない、点検やお手入れは刃が止まっていることを確認してバッテリーを抜く、といった注意も明記されています。
参考)https://www.makita.co.jp/product/files/882553B9_B1933
現場で「うっかり」が起きやすいのは、詰まり除去のタイミングです。取扱説明書(160mm充電式芝刈機)でも、芝が詰まった場合の除去は“必ずスイッチを切り、バッテリを抜く”こと、刃物を扱うときは手袋着用、という手順が書かれています。 この手順を省くと、軽いケガでは済まない事故になります。
参考)https://www.mdpi.com/2032-6653/15/3/86/pdf?version=1709025408
実務で効くメンテのコツ(意味のある範囲に絞る)をまとめます。
参考:刃の交換方法や替刃の種類の整理(芝刈り機の替刃・交換方法の解説)
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参考:取扱説明書ベースの詰まり除去・長い芝の刈り方(安全手順、刈り高さの考え方)
https://www.makita.co.jp/product/files/881E82A9_D7852.pdf
芝刈り機選定で見落とされがちなのが、「芝刈り機だけで完結させない」という発想です。農業現場では、芝生の“面”は芝刈り機で回せても、最後に残るのはフェンス際・縁石際・ハウス基礎際の“線”です。ここを毎回しゃがんで手作業にすると、時間より先に身体が持ちません。
そこで現実的な組み合わせとして「芝刈り機+芝生バリカン」を提案します。例えば充電式芝生バリカンMUM604Dは、用途に合わせて2ウェイチェンジ、刃物交換は半工具レス(コインでも交換可能)といった特徴が示されています。 また、キワ刈りガイドがあり、壁に刃物を当てずに刈れる、透明で刃先が見やすい、という点も実務向きです。
参考)https://www.bildy.jp/power/lawn_shears-model-mum604d/49311
さらに“収集”は地味に効きます。MUM604Dは刈った芝を収集し、掃除の手間を大幅に低減する、と記載があります。 施設まわりの芝くずが排水溝に入ると詰まりの原因にもなるため、清掃負担を減らす意味で「収集できるか」は見ておきたいポイントです。
現場の運用例としては、こうすると段取りが締まります。
検索上位の記事は「おすすめ機種」や「スペック比較」に寄りがちですが、農業現場で本当に効くのは“止まらない段取り”です。充電式は便利な反面、草丈・湿り・密度が重なると過負荷になり、モーター停止が起きます。これは故障ではなく保護機能で止まる設計で、取扱説明書にも「過負荷状態になるとモータが自動停止」「原因を取り除けば再び使用できる」と明記されています。
この挙動を前提にすると、芝刈りのやり方が変わります。湿った芝や長い芝を“低刈り一発”でいくと、詰まり→過負荷停止→復帰作業の繰り返しになり、結果としてバッテリーも時間も消耗します。取扱説明書では長い芝(約40mm以上)は一度40mmで刈ってから好みの高さに揃える、と示されており、段階刈りが合理的です。
もう一つの独自視点は、バッテリーを「容量」だけでなく「温度」で管理することです。取扱説明書には、高温で本体やバッテリーが停止することがあり、冷却ファン付き充電器で充電および冷却を、といった運用が書かれています。 真夏の畦まわりは、日射と地面反射で工具温度が上がりやすいので、予備バッテリーを日陰で待機させるだけでも“止まりにくさ”が変わります。
現場で取り入れやすい対策は次の通りです(ムダな精神論は入れません)。
(ここまでの内容は、機種名だけで選ぶのではなく「バッテリー資産」「刃の状態」「過負荷停止への対策」をセットで設計することで、農業現場の芝管理を安定させることを狙っています。)