コンバインの仕組み:構造と種類や刈取と脱穀や選別とメンテナンス

収穫の秋に活躍するコンバインですが、内部でどのように稲や麦が脱穀・選別されているかご存知ですか?刈取から排出までの精密な構造や、自脱型と普通型の決定的な違い、そしてトラブルを防ぐメンテナンスの急所まで、プロが知っておくべきメカニズムを深堀り解説します。機械の「なぜ?」を理解して、効率的な作業を目指しませんか?

コンバインの仕組み

コンバインの仕組み:3つの主要工程
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1. 刈取・搬送

デバイダで稲を分け、引き起こしチェーンで倒伏した稲を起こしながら刈刃で切断し、脱穀部へ正確に送り込みます。

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2. 脱穀・選別

高速回転する「こぎ胴」で籾を外し、揺動板の振動と唐箕(とうみ)の風力を使って、比重差で藁くずと籾を精密に分けます。

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3. 排出・処理

選別された綺麗な籾をグレンタンクに貯蔵し、不要な藁はカッターで細断して圃場に還元するか、結束して排出します。

コンバインの仕組みと種類の違い:自脱型と普通型の特徴


コンバインの仕組みを深く理解する上で、まず押さえておかなければならないのが「自脱型(じだつがた)」「普通型(ふつうがた)」という構造の決定的な違いです。日本国内の稲作において主流である自脱型は、世界的に見ると非常にユニークな進化を遂げた機械であり、その構造を知ることは効率的な作業に直結します。


  • 自脱型コンバイン(Head-feeding type)
    • 仕組みの特徴: 刈り取った作物の「穂先」だけを脱穀部(こぎ胴)に挿入して脱穀します。茎(ワラ)は脱穀機の中に入らず、そのまま後方へ搬送され、カッターで切断されるか結束されます。
    • メリット: 茎を粉砕しないため、脱穀部への負荷が少なく、選別精度が非常に高いです。また、籾(もみ)へのダメージが少なく、高水分な日本の稲でも詰まりにくい構造になっています。
    • 主な用途: 水稲、麦(一部)。
  • 普通型コンバイン(Whole-crop type / Conventional)
    • 仕組みの特徴: 刈り取った作物を「茎ごとすべて」脱穀機の中に投入します。内部で茎も葉も揉みくちゃにしながら粒を分離するため、処理能力が非常に高いです。
    • メリット: 構造がシンプルで、アタッチメント(ヘッダー)を交換することで、稲、麦、大豆、トウモロコシ、そばなど多品目に汎用的に使えます。別名「汎用コンバイン」とも呼ばれます。
    • デメリット: 茎葉の水分が高いと選別が困難になり、ロスが増える傾向があります。

    クボタ:稲穂から籾を分離する「脱穀」の基礎知識と自脱型のメリットについて
    ※上記リンクはクボタの公式サイトで、脱穀の基礎的な動きと機械の役割について図解入りで解説されています。


    なぜ日本でこれほど「自脱型」が普及したのか、その背景には日本の稲作文化と気候があります。かつて藁(ワラ)は、縄や畳、草履などの材料として非常に重要な資源でした。そのため、「ワラを綺麗に残す」必要があったのです。また、収穫時期に雨が多く湿度が高い日本では、茎ごと脱穀すると水分で選別網が目詰まりを起こしやすくなります。これらの課題を解決するために、日本独自の技術として「穂先だけを脱穀する」という極めて精密な制御技術(扱深制御など)が発達しました。


    特徴 自脱型(日本独自) 普通型(世界標準)
    脱穀対象 穂先のみ 作物全体(茎葉含む)
    選別精度 非常に高い(ゴミが少ない) やや劣る(夾雑物が多い)
    汎用性 低い(稲・麦専用) 高い(大豆・コーン等も可)
    走行部 クローラ(履帯)が主流 ホイールまたはクローラ
    処理速度 中程度 高速・大量処理が可能

    コンバインの仕組みと構造の流れ:刈取から搬送と脱穀

    コンバインの内部では、自動車のエンジンとは比較にならないほど複雑な「固形物の物理的な分離プロセス」が連続して行われています。ここでは、作物がどのように取り込まれ、籾(もみ)として分離されるのか、その構造搬送のフローを詳細に見ていきます。


    1. 引き起こしと刈取(Reaping)

      田んぼで倒れている稲がある場合、まず「引き起こしチェーン(タイン)」が回転し、寝ている稲を強制的に立たせます。これと同時に、先端の尖った「デバイダ」が条(列)を綺麗に分けます。根元にある「刈刃(バリカン)」が左右に高速往復運動し、スパッと茎を切断します。この切れ味が悪いと、根元が引き抜けてしまい、搬送チェーンに土が噛み込んで故障の原因になります。


    2. 搬送と扱深制御(Transport & Depth Control)

      刈り取られた稲は、縦搬送チェーンによって機体後方の脱穀部へ運ばれます。ここで重要なのが「扱深(こぎふか)制御」です。稲の背丈は一定ではありません。背が高い稲も低い稲も、穂先がちょうど脱穀胴(こぎ胴)の最適な位置に当たるように、センサーが茎の長さを感知し、チェーンの位置を自動で上下させています。これがズレると、脱穀されずに排出される「刈り残し」や、穂がちぎれてしまう「穂切れ」が発生します。


    3. 脱穀(Threshing)

      脱穀部には「こぎ胴」と呼ばれるドラムがあり、表面には無数の「こぎ歯」という金属の突起が付いています。これが毎分数百回転という高速で回り、搬送されてきた稲の穂先を叩き、しごくことで、籾を茎から外します。


      • 意外な事実: こぎ胴は単に回っているだけでなく、内部に「送塵弁(そうじんべん)」という角度のついたフィンがあり、ワラを入り口から出口方向へスムーズに送る役割も果たしています。

    ヤンマー:普通型コンバインの技術と構造的特徴についての技術解説
    ヤンマーの技術論文で、コンバインの内部構造や作物ごとの対応能力について専門的な視点で書かれています。


    このプロセスにおいて、オペレーターが最も気にすべきは「流量」と「回転数」のバランスです。


    作業を急いで車速を上げすぎると、こぎ胴の中に大量の稲が一気に入ってしまいます。すると、エンジンの回転が落ち、こぎ歯の遠心力が弱まり、籾を落としきれなくなります(=高損失)。逆に回転を上げすぎると、籾が割れたり(肌ずれ)、枝梗(しこう)が付いたままになったりして品質が下がります。


    • 搬送トラブルの予兆:
      • エンジン音が重く低くなる(負荷過多)。
      • 排気ガスが黒くなる(不完全燃焼)。
      • 扱深チェーン付近で「バリバリ」という異音がする(搬送詰まり)。

      コンバインの仕組みと選別精度:揺動選別と唐箕の風選技術

      検索上位の記事では「風で飛ばして選別する」と簡単に説明されがちですが、コンバインの心臓部とも言えるこの選別機構は、実は流体力学と振動工学の塊です。なぜ、重たい籾だけを回収し、軽いワラ屑だけを捨てることができるのか?ここには「揺動(ようどう)」「唐箕(とうみ)」の絶妙なコンビネーションが存在します。


      脱穀された直後の混合物(籾、わら屑、ホコリ)は、「揺動板(シーブ)」と呼ばれる何層もの網の上に落ちます。この板は、前後に激しく振動(揺動)しています。


      • 比重選別の原理(揺動の役割):

        お盆の上に砂と石を乗せて揺らすと、重い石は下に沈み、軽い砂は上に浮いてくる現象と同じ原理を利用しています。振動によって、重い「玄米・籾」は網の下の方へ沈み込み、軽い「ワラ屑」は表面に浮き上がってきます。


      • 風選技術(唐箕の役割):

        ここで下から上へ、そして前方から後方へ向けて、ファン(唐箕)による強い風が送り込まれます。


        • 一番口(いちばんぐち): 完全に熟した重い籾は、風に飛ばされずに網(グレンシーブ)を通り抜け、一番ラセンに落ちてグレンタンクへ運ばれます。
        • 二番口(にばんぐち): 枝梗が付いたままの籾や、少し軽い未熟米は、風で少しだけ飛ばされ、手前の穴には落ちず、奥の「二番とい」に落ちます。これらは「二番還元装置」によって、もう一度こぎ胴に戻され、再脱穀されます。
        • 排塵(はいじん): 軽いワラ屑やホコリは、風に乗って機体の一番後ろまで飛ばされ、機外へ排出されます。

        農研機構:コンバインの選別機構と脱穀性能に関する研究資料
        ※国立研究開発法人による資料で、脱穀・選別部の内部断面図や、風の流れ方が詳細に図解されています。


        独自視点:チャフシーブとグレンシーブの調整
        上級者がこだわるのが、この選別網(シーブ)の開度調整です。


        • チャフシーブ(上網): ここを広げすぎると、二番還元(再処理)の量が増えすぎて、こぎ胴が詰まる原因になります。逆に閉めすぎると、良い籾まで機外に排出(ロスト)してしまいます。
        • 風量調整: 収穫する作物の水分量によって、風量を変える必要があります。乾燥しているときは風を弱めにしないと、乾いた軽い籾までゴミと一緒に飛んでいってしまいます。逆に湿っているときは、ゴミが重くなっているので、風を強めにして飛ばす必要があります。

        最新の「スマート農機」と呼ばれるコンバインでは、収量センサーとロスセンサーがこれらを監視しており、後方へ排出されるゴミの中に籾が混じっていると、自動で「チャフシーブを閉じる」あるいは「風量を下げる」といった制御をミリ秒単位で行っています。これが、ベテラン農家の勘をデジタル化した現代のコンバインの真骨頂です。


        コンバインの仕組みとメンテナンス:こぎ胴の詰まり対策

        コンバインの仕組みを理解した上で、最も避けたいトラブルが「詰まり」です。特にメンテナンス不足や悪条件での作業は、こぎ胴や搬送部をロックさせ、ベルトを焼き切る原因になります。ここでは、仕組みに基づいた具体的な対策とメンテナンスポイントを解説します。


        1. こぎ胴の詰まり(ドラムロック)の原因
        最大の原因は「水分過多」「回転数不足」です。


        朝露が残っている時間帯や、雨上がりの稲は、水分を含んで非常に粘り気があります。濡れたワラは摩擦係数が高く、こぎ胴の中でスムーズに流れず滞留します。そこに次々と新しい稲が入ってくるため、圧縮されたワラがブレーキシューのようにこぎ胴を締め付け、エンジンを停止させてしまいます。


        • 対策:
          • 朝露が乾くまで待つ(基本中の基本)。
          • どうしても刈る場合は、車速を極端に落とし、こぎ深さを浅めにする(ワラをあまり入れない)。
          • 「Vベルト」の張り調整: エンジンの動力を伝えるベルトが緩んでいると、負荷がかかった瞬間にスリップして回転が落ち、詰まりを誘発します。指で押して適正なたわみ量か確認しましょう。

          2. ラジエータースクリーンとオーバーヒート
          コンバインは、自身の刈り取ったワラ屑やホコリが舞う中で作業します。


          エンジンの冷却ファンは空気を吸い込みますが、この吸気口にある「プレクリーナー」や「ラジエータースクリーン」がホコリで目詰まりすると、冷却ができずにオーバーヒートします。


          • 仕組みの理解: 最近のコンバインは、数分おきにファンを逆回転させてホコリを吹き飛ばす機能が付いていますが、それでも湿ったホコリはこびりつきます。作業終了後は必ずコンプレッサーのエアで掃除が必要です。

          3. カッター刃の摩耗と排出詰まり
          排ワラカッターの刃が丸くなっていると、ワラが切れずに「押しつぶされる」形になります。切れないワラはカッター内部で絡まり、出口を塞ぎます。出口が塞がると、脱穀部からワラが出てこられなくなり、最終的にこぎ胴まで逆流して全停止します。


          • チェックポイント:
            • カッター刃の角が丸くなっていないか?(反転させて使えるタイプも多いです)
            • 対刃(固定刃)との隙間(クリアランス)は適正か?

            アグリ家:コンバインの日常点検と長く使うためのメンテナンス方法
            ※農機具専門店による解説記事で、具体的な清掃箇所や注油ポイント、オフシーズンの保管方法が実務的に書かれています。


            メンテナンスチェックリスト

            点検箇所 確認内容 放置した場合のリスク
            こぎ歯(脱穀歯) 摩耗、変形、欠落 脱穀残りが増える、選別が悪くなる
            Vベルト 亀裂、摩耗、緩み 動力伝達不良、高負荷時のスリップ、詰まり
            チェーン 伸び、注油状態 外れる、スプロケットの異常摩耗
            カッター刃 切れ味、クリアランス 排ワラ詰まり、機械全体への過負荷
            エアクリーナー ホコリの蓄積 エンジン出力低下、黒煙、燃費悪化

            コンバインは「刃物」「風」「振動」「回転」の4要素が完璧に同期して初めて性能を発揮します。仕組みを知れば、「なぜここで詰まったのか?」「なぜ選別が悪いのか?」という原因が、機械の悲鳴(異音)から推測できるようになります。日々のメンテナンスは、単なる掃除ではなく、これら4要素のバランスを整えるチューニング作業なのです。




            ハセガワ 1/35 建機シリーズ ヤンマー コンバイン YH6115 プラモデル WM07