一般的に、スーパーで販売される米は「生産者(農家)→地元の農協(JAなどの集荷業者)→複数の卸売業者→スーパー等の小売店」というルートをたどって消費者に届くと説明されている。
農家は収穫した玄米を自ら袋詰めする場合もあれば、乾燥・調製施設を備えたライスセンターに搬入し、そこで容量・水分・品質を整えてからJAに出荷するケースも多い。
JAや経済連などの集荷業者は、地域ごとに農家から集めた玄米を銘柄や等級ごとに仕分けし、まとまったロットとして扱えるようにすることで、後工程の入札や取引をスムーズにしている。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/s_sankou/pdf/s1.pdf
こうしたロット化は、個々の農家にとっては少量でも、集荷段階で量をまとめることで輸送コストや検査コストを抑え、安定的に市場へ供給するための前提条件になっている。
参考)最近のお米の流通について
一方で、近年は農協ルート以外にも、民間の集荷業者や商社が単位農協や大規模農家と直接契約を結ぶケースも増え、流通経路が多様化していると指摘されている。
参考)米の価格はこうして決まる!米流通の専門家が語る、今後の米市場…
この結果、「生産者→集荷業者→卸売業者→小売店」という標準ルート以外にも、外食産業向けに「生産者→集荷業者→業務用卸→外食チェーン」や、加工用として「生産者→集荷業者→米加工メーカー」といった分岐が生まれている。
参考)https://www.ja-yamaguchi.jp/okome/images/future/pdf_okome_reason.pdf
米の集荷段階では、農産物検査法に基づく等級検査を受けることで、品質に応じた価格差が付けられ、後の取引価格やブレンド設計に大きな影響を与える。
参考)お米の流通に関する制度:農林水産省
検査票などの情報は、後のトレーサビリティやブランド戦略の基礎データにもなるため、単に「等級を付ける」だけでなく、流通全体の情報インフラとしての役割も持っている。
参考)米トレーサビリティ法の概要:農林水産省
集荷業者の段階で、すでに「どのルートで、どの販売先に向けるか」という大まかな見通しを立てて在庫を組み立てるため、この時点の判断が後の供給不足や価格高騰にも影響し得ると分析されている。
参考)米の流通状況等について:農林水産省
近年の「令和の米騒動」でも、JAや中間流通業者の在庫判断や販売タイミングが、棚から米が消える時期と重なり、流通の滞りが問題視された。
参考)コメの流通の仕組みはどうなっている 令和の米騒動の基礎用語を…
| 段階 | 主な担い手 | キーワード |
|---|---|---|
| 生産 | 稲作農家 | 収穫・乾燥・調製🌾 |
| 集荷 | JA・経済連・民間集荷業者 | ロット化・等級検査・保管 |
| 上流取引 | 集荷業者・卸売業者 | 入札・相対取引・価格形成 |
集荷業者から買い付けた玄米は、米卸売業者の倉庫に入り、在庫として保管されながら、順次精米工場に回される。
卸売業者は保管・在庫調整・精米工程の手配・小売や外食産業との契約管理を通じて、需給バランスを現場レベルで調整する「ハブ」のような役割を果たしている。
精米業者は、玄米を精米し、必要に応じてブレンドや無洗米加工を行い、一定の品質と歩留まりを確保したうえで、家庭用や業務用の規格に合わせて袋詰めする。
ここでの精米ロスや割れ米の発生も、最終的なコスト構造や歩留まりに影響するため、効率化と品質維持のバランスが重要なポイントになる。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/14/20/13352/pdf?version=1666682511
小売店(スーパー・ドラッグストアなど)は、家庭用の主な販売チャネルとして最も大きなシェアを持ち、店頭の棚割りや特売、PB商品などを通じて、消費者の銘柄選好や価格感覚を左右していると分析されている。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/1f72d0308eb5d5ff5d6677843e4a0e3e6bb18d3b
一部のディスカウントストアは、中間業者の多さが価格高騰の一因と指摘し、JAや大手卸との直接取引を求める意見書を農水相に提出するなど、流通構造そのものへの問題提起も行っている。
参考)ドン・キホーテ、コメ流通で小泉進次郎農相に意見書 「5次問屋…
政府備蓄米が放出される際も、実際に小売の棚に並ぶまでには「全農→卸売業者→精米→小売」という工程を経るため、落札から店頭到達まで数週間程度かかることが報告されている。
参考)備蓄米、JA全農から卸売業者に出荷されたのは32%どまり…政…
備蓄米が大量に市場に出ているにもかかわらず、精米能力や物流のボトルネックによって、消費者の体感としては「高値のまま米が足りない」という状況が生じたケースも指摘されている。
参考)令和コメ騒動の黒幕—農水省とJA農協
近年は「農家直送」や「お米マイスターが選ぶ産直米」など、農家や専門家と協業した通販サイトも増え、卸売業者を挟まないルートで消費者に届けるケースも目立つようになっている。
参考)https://gensenmai.com/data/komelist.php?sr=yesamp;shn=yes
こうした直販型の流通は、銘柄や栽培方法、精米日などの情報が前面に出やすく、ブランド米にとっては付加価値を伝えやすいチャネルとして活用されている。
米卸・精米・小売それぞれの役割と価格構造をもう少し詳しく知りたい場合は、米流通の専門家がインタビュー形式で解説している次の記事が参考になる(米価・価格形成セクションの参考リンク)。
米の価格はこうして決まる!米流通の専門家が語る|マイナビ農業
日本の米価は、まず集荷業者(全農県本部など)が生産者に提示する「概算金」が起点となり、その水準を基礎に相対取引価格・卸売価格・小売価格が段階的に決まっていくと解説されている。
概算金は、作況や在庫量、輸入動向、先行きの需要見通しなどを踏まえて設定されるため、実際の収穫期より前から将来の市況に対する期待や不安が織り込まれているといえる。
集荷業者と卸売業者との取引には、公的な価格形成センターを通じた入札取引のほか、当事者同士が条件を決める「相対取引」があり、後者は外部から価格の決まり方が見えにくいと指摘されている。
参考)http://worldfood.apionet.or.jp/kako.pdf
農水省への報告義務はあるものの、どのような交渉過程を経て価格が決まったのかまでは公開されないため、「ブラックボックス化している」との批判も根強い。
参考)【業界を読む:コメ業界】米価統制の代償、価格介入が壊すコメの…
小売価格は、卸売価格に物流費・包装資材・店舗のコスト・小売のマージンなどが上乗せされて決まるが、最近の米価高騰局面では、店頭価格が上がる一方で、流通各段階でどの程度利益が出ているのかが消費者からは見えにくい状況が問題になった。
政府は価格高騰時に備蓄米を放出し、市場への供給量を増やすことで相場を抑えようとしているが、備蓄米の放出量と流通の速度、民間在庫の動きが噛み合わず、十分な効果が出ていないとの分析もある。
参考)【放出決定】備蓄米ってどんなときに流通するの?
近年の報道では、複数の問屋をまたぐ「5次問屋」のような多層的な取引構造が生まれ、途中のどこかで利ざやを抜いているのではないかという疑念が、流通の「不透明さ」として取り上げられた。
参考)【コメ流通のブラックボックス】『5次問屋』出現?ブローカーの…
一方で、JAと大手小売が直接契約を結び、中間段階を減らすことで価格を下げようとする試みもあり、米の流通構造そのものをどう設計するかが政策論争の焦点になりつつある。
| 段階 | 主な価格の決まり方 | ポイント📈 |
|---|---|---|
| 生産者→集荷業者 | 概算金・最終清算 | 作況・需給見通し・政策 |
| 集荷業者→卸売業者 | 入札・相対取引 | 市場価格の指標・在庫量 |
| 卸売業者→小売 | 契約価格・数量条件 | 販売計画・販促・ブランド |
| 小売→消費者 | 店頭価格 | 仕入れ・物流・店舗コスト |
食管制度から現行の食糧法・新たな米流通制度への変遷や価格政策の背景を俯瞰したい場合は、以下の資料が詳しい(価格形成・制度の歴史部分の参考リンク)。
米トレーサビリティ法(正式名称「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」)は、米や米加工品に問題が起きた際に、流通ルートと産地を素早く特定できるようにするための法律として制定された。
この法律により、生産者から加工業者、流通事業者、小売・外食事業者まで、米に関わるほぼすべての事業者に対して、取引記録の作成・保存と産地情報の伝達が義務付けられている。
記録義務の対象となる情報には、取引日・数量・相手先・産地などが含まれ、これらを一定期間保存することで、問題発生時にどの段階で異常が生じたかを追跡できるようになっている。
参考)米トレーサビリティ制度Q&A~基本編~:農林水産省
一方で、単に保管や輸送だけを行う事業者は記録義務の対象外とされるなど、物流現場の負担とのバランスにも配慮した制度設計になっている。
参考)米トレーサビリティ法|「食品衛生の窓」東京都保健医療局
トレーサビリティ制度は、過去の汚染米流通事件などを教訓として強化されてきた経緯があり、偽装や事故が起きた際に、どこからどこまで流通したのかを科学的に検証するための基盤になっている。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/07f184914f30b73451c037d589fc8d1c853c9e84
加えて、食品表示法や景品表示法など他の法制度と連携し、産地表示の適正化や不当表示の抑止にも役立つ枠組みとして運用されている。
品質面では、農産物検査法に基づく等級検査のほか、各自治体やJAが独自の基準や食味値測定を組み合わせてブランド米の差別化を図る例も見られる。
参考)https://hokkaido-nosan.or.jp/manager/wp-content/uploads/h23_ricetext_01.pdf
一部の農家直販サイトでは、生産者名や栽培方法に加え、検査結果や食味スコアを表示することで、「どこの誰がどんな米を作ったのか」が消費者から見える形になっている。
参考)岡元農場から直売のお米をおすすめするわけ
米トレーサビリティ法の条文そのものや、事業者向けQ&Aは、以下の公的サイトが詳しい(トレーサビリティ制度セクションの参考リンク)。
米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律|e-Gov法令検索
米トレーサビリティ法の概要|農林水産省
日本の食品ロスは年間約472万トンと推計されており、そのうち事業系食品ロスの約2割が米飯類で占められているというデータもあり、コメは価格高騰と同時に「捨てられている食料」でもあることがわかる。
米価が上昇し、政府が備蓄米21万トンの市場放出を決めた一方で、コンビニや外食チェーンでは大量のご飯や弁当が廃棄されているという報道は、流通の「量」と「場所」のミスマッチを象徴している。
グローバルに見ても、穀物バリューチェーンの各段階で相当量のロスが発生しており、収穫から保管・輸送・加工・小売・消費に至るまで、どのノードでどれだけ失われているかを測定し、対策を講じることが重要だとする研究が蓄積されている。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/12/6/2342/pdf
米の流通においても、精米時のロスや在庫劣化、古米の滞留、炊飯後の食べ残しなど、サプライチェーンのさまざまな地点でロスが発生し得るため、単に生産量を増やすだけでなく、ロス削減による「見えない供給余力」の活用が注目されている。
参考)https://www.mdpi.com/2304-8158/8/8/297/pdf
こうした中で、小規模農家が自ら通販サイトや直売所を通じて消費者に直接販売する動きは、需給を細かく合わせる手段としても注目されている。
農家直送の通販では、収穫量や在庫状況を自ら発信しながら予約販売や定期便を組み立てる例もあり、過剰在庫を抱えにくい形で流通を設計しやすいという利点がある。
参考)美味しいお米の通販サイト【ツナギ】
また、農家が卸売業者任せにせず、精米・梱包まで自前で行い、「見える農家」として顔写真や栽培のこだわりを前面に出すことで、値引き競争に巻き込まれにくいブランドを作っているケースもある。
このような直販型の流通では、古米が見切り品として大量に残る前に、予約やサブスクリプション形式で販売量を調整できるため、結果としてフードロス削減にもつながりやすいと期待されている。
参考)お米を食べようキャンペーン|Kuradashi(クラダシ)で…
| 流通モデル | 主な特徴 | フードロスへの影響🌍 |
|---|---|---|
| 従来型(卸経由) | 大量仕入れ・全国一律の販促が中心 | 売れ残りや古米在庫が発生しやすい。 |
| 農家直販・通販 | 小ロット・予約販売・顧客との直接対話 | 需要に合わせた生産・出荷計画が立てやすい。 |
食品ロス全体の統計や、米飯類を含むロス削減の方針についての公式な解説は、次の農林水産省のページが参考になる(フードロス削減セクションの参考リンク)。
米飯類を始めとする食品ロス削減の推進に係る農林水産大臣メッセージ