鶏糞乾燥機は大きく分けると、「熱を当てて水分を飛ばす乾燥」と「微生物の発酵熱を使って水分を落とす発酵乾燥」に分かれ、現場では両者が混ざった運用になりがちです。乾燥だけを目的にすると、燃料費の増加や排気(臭気)対策コストが後から膨らみやすいので、最初に熱源と排気処理のセットで検討するのが安全です。
熱源の考え方は、「外部から入れる熱」と「内部で勝手に出る熱(発酵熱)」の2系統で整理すると判断が速くなります。外部熱源はガス・電気・蒸気・油などが採用される例がある一方、排熱を再利用して乾燥熱源に回す設計(脱臭装置内の高温廃熱を乾燥に転用する発想)も製品事例として出ています。発熱側(脱臭)と乾燥側(被乾燥物)の熱収支を結ぶことで、燃料を“追い足す量”を減らす狙いです。
温度管理の注意点は、「乾燥機内部温度を高くするほど速く乾くが、臭気の濃度や粉じんリスクも上がり、トラブルが増える」ことです。海外の回転ドラム型乾燥機の説明では内部温度の制御例として250~350℃といった記載も見られ、工業乾燥の領域では高温運転が一般的に語られますが、鶏糞は有機物であり、粉体化・臭気・安全面のしわ寄せが出やすい点が違います。現場で大事なのは、乾燥温度の数値そのものより「排気をどう処理して、作業環境と近隣対策をどう成立させるか」です。
また、見落とされがちな論点として「乾燥=軽くなる=運びやすい」だけでなく、「乾燥の仕方で最終製品の形状が変わる」点があります。顆粒化や粒状化ができると、散布時の埃が減り、販売や利用の面でも扱いやすさが上がるという説明があり、乾燥設備の設計が“製品設計”にも直結します。乾燥機の比較では、乾きやすさだけでなく、最終形状(粉・粒・塊)まで仕様に入れておくと後悔が減ります。
水分は、鶏糞乾燥機の運転品質を左右する“共通言語”です。発酵乾燥の製品事例では、生鶏糞が水分60~78%程度で投入され、戻し糞と混合して水分約60%に調整し、放線菌の働きで温度が約70℃まで上がる、といったプロセスが示されています。ここで重要なのは、投入直後から発酵が立ち上がるように「戻し糞(種菌・調整材の役割)」で条件を寄せている点です。
次に、どこまで乾かすかの目安ですが、同じ事例では2次発酵・乾燥を経て約15日で水分量約20%以下の発酵鶏糞になる、という水分の到達点が示されています。水分20%台まで落ちると、保管・運搬のストレスが大きく減り、製品としての扱いやすさが上がります。一方で、水分を落とすほど粉化しやすく、袋詰め・搬送・散布の工程で粉じんが増えることもあるため、「乾燥の終点」を現場動線とセットで決める必要があります。
発酵の狙いは乾燥だけではありません。堆肥化の資料では、生ふんのまま施用すると急激な分解で土壌の嫌気性化や根圏の酸素欠乏、硫化水素障害などが起こり得ること、病原菌や寄生虫卵が取扱い作業時の感染症原因となり得ることが整理されています。つまり、鶏糞乾燥機を導入する目的は「軽くする」だけでなく、「汚物感・臭気・病原性を落として、使用者側に渡せる形にする」ことまで含みます。
意外と知られていないのが、「乾燥し過ぎると“安全面”の条件に寄る」ことです。堆肥化施設の安全管理資料では、水分30~40%に乾燥した状態で大量に堆積するとくすぶりが生じる例があること、堆積高さが3mを超えるとくすぶり・発火・炭化の危険が生じ得ることが説明されています。乾燥機で水分を落とした後の保管ヤード(山積み高さ・夏季の放熱条件)が、最後の事故要因になり得るので、乾燥機選定と同時に保管方式も仕様化しておくべきです。
臭気対策は「臭いを消す」より、「臭いを増やさない運転」と「漏れた分を確実に回収」の二段構えが効果的です。まず臭いを増やさない運転としては、嫌気化を避けて好気性発酵を維持することが基本で、嫌気性発酵が望まれない悪臭の原因になるという整理がされています。送風や切り返しが弱いと、同じ鶏糞でも“臭いの質”が変わり、近隣トラブルに直結します。
回収側(脱臭)については、鶏糞発酵乾燥施設ではアンモニアが1000ppmにも達することがある、という記載があり、高濃度アンモニアを前提に設計すべき場面があります。製品事例では、アンモニアが水に吸着されやすい点に着目して水洗式(ウォーターシャワー)で臭気ガスを洗い、吸着した汚水は活性汚泥処理し循環利用する、というシステムが説明されています。ここでのポイントは、脱臭装置だけではなく「発酵舎内の空気の流れを作り、臭気を含む空気を脱臭室に送る」まで含めて設計している点で、捕集(換気設計)が弱いと脱臭性能以前の問題になります。
安全衛生の観点では、密閉型発酵槽では高濃度アンモニアが充満していることがある、という説明もあり、作業時は換気・濃度測定・呼吸保護具などが必要になる場面があります。さらに堆肥化施設は酸素欠乏の危険箇所になり得ること、酸素濃度が18%未満は酸欠状態とされることなど、設備導入後に“作業ルール”まで整えないと事故につながります。鶏糞乾燥機の導入は機械の話で終わらず、作業環境(換気回数の確保など)まで含めた運用設計が必須です。
鶏糞乾燥機まわりの事故で怖いのは、異常が「乾いた後」に出ることです。堆肥化施設の安全管理資料では、水分30~40%に乾燥した状態で大量に堆積するとくすぶりが生じる例があること、堆積高さ3m超でくすぶり・発火・炭化の危険が生じ得ることが示されています。乾燥機で頑張って水分を落としても、その後に山積みで熱がこもれば、発酵熱・太陽熱・蓄熱でトラブル条件に寄ります。
現場で効く予防策は「温度を見て、山を低くして、切り返す」です。資料では、堆肥の温度が60℃を超えたら切り返すようにすれば火災は予防できる、といった考え方も紹介されています。加えて、燻煙(くすぶり)が頻発する場合は、堆積物を浅く広げて放熱できるようにするのが解決策になる、とされており、“消火”より“放熱”が本筋になる場面が多いのが特徴です。
もう一つ重要なのが、設備保守と電気安全です。堆肥化施設は電気設備も多く、濡れた状態での作業は人体抵抗が下がり危険になること、作業前に必ず主電源を切ること、漏電遮断機の動作確認が必要なことなどが具体的に整理されています。鶏糞乾燥機は「熱」と「電気」と「粉体」が同居するため、衛生・臭気だけでなく、電気・火災・巻き込みの基本動作を作業標準に落とすのが最短ルートです。
乾燥後工程で増える粉じんも、事故の種になります。堆肥製品の袋詰めなど粉じんが多い作業では、ろ過式の防じんマスク等の着用が必要とされ、粒径の小さい粉じんが肺胞まで到達し得ることも説明されています。乾燥機導入時は「乾燥室」だけでなく、搬送・ふるい・袋詰め・散布までの粉体動線を見直し、集じんや作業保護具まで一体で設計するべきです。
検索上位の説明は「乾燥能力・臭気・補助金」などに寄りやすい一方、実務で差が出るのは“運転を立ち上げる技術”です。発酵乾燥の事例では、生鶏糞(水分60~78%)を、発酵して水分が約35%になった戻し糞と混合して水分約60%にし、大量の放線菌の働きで直ちに激しい発酵を起こし温度が約70℃になる、という流れが示されています。ここから読み取れるのは、乾燥機の性能以上に「戻し糞の比率」「混合の均一性」「種の維持」が発酵の立ち上がりを決めるということです。
放線菌という単語は聞いたことがあっても、「乾燥機の運転戦略」に落ちていないケースが多いです。事例では、放線菌や芽胞形成菌が70℃以上でも活動できること、製品が粒状になり撒きやすく、臭気も少なく扱いやすい、という説明があります。つまり、鶏糞乾燥機は“乾かす機械”ではなく、“微生物を働かせて製品形状と臭気を作る装置”として見ると、トラブルの原因分解がしやすくなります。
この視点で現場の改善を考えると、投入口での混合ムラが最優先の点検ポイントになります。混合ムラがあると、水分30~40%の乾燥域の塊が局所的にできて、くすぶり条件に寄ったり、逆に湿った塊が嫌気化して臭気が尖ったりします。乾燥機の能力不足を疑う前に、戻し糞の粒度・混合時間・投入の仕方を“設備条件”として固定し、誰が運転しても再現するのが、いちばんコストのかからない改善です。
発酵乾燥の強みは「燃料を燃やして乾かす」一択にならない点にありますが、その代わり、微生物の気分(条件)を外すと一気に崩れます。だからこそ、温度・水分・臭気の3点を毎日同じタイミングで記録し、異常兆候(温度が上がらない/上がりすぎる、臭気が甘い→刺激臭に変わる、粉っぽさが急に増える)を“数値と感覚の両方”で検知する運転が効きます。乾燥機導入後に強い農場ほど、機械の説明書より先に「うちの発酵の型」を言語化しています。
臭気対策(参考):堆肥化の安全管理・火災(くすぶり)・酸欠・アンモニア暴露の具体例
https://www.chikusan-kankyo.jp/newhomepage/kkg/kkg_02/kkg_02_01.pdf
発酵乾燥(参考):戻し糞で水分調整し約70℃発酵、約15日で水分20%以下、脱臭の水洗式システム例
http://www.k-hosoya.co.jp/pdf/hosoya_fermentation_system_200401.pdf