鎌で草刈りをラクにする最初のコツは、「振る」より「手前に引く」を基本動作にすることです。片手鎌(三日月鎌・ノコギリ鎌・信州鎌など)の標準的な刈り方は、草を反対の手で束ね、根元(成長点の下)に刃を当てて、右前方から左後方へ“引いて”切ります(左利きは逆方向)。この「引き切り」に寄せるだけで、刃が草を巻き込みながら切断でき、力任せの空振りが減ります。
現場でよく起きる失敗は、草の上のほうを切ってしまい、刃先が草に負けて押し戻されるパターンです。草は上ほどしなりやすく、茎も倒れやすいので、鎌の力が逃げます。狙う位置は「地際ギリギリ」ではなく、草の根元寄りで刃が入りやすい高さに置くのが結果的に速いです(特に密生地)。
もう一つ、意外に効くのが“草の持ち方”です。背丈のある草は、利き手と反対の手で草束を握りますが、このとき手首をひっくり返して親指を下に向けると、草束が逃げにくく次の動作に移りやすい、という現場的な工夫が紹介されています。手の位置が定まると、刃の軌道も安定し、刃先を余計に地面へ当てずに済むので、刃こぼれと疲労が同時に減ります。
作業の流れは「小さく区切って、同じリズムで進む」が基本です。刈った草を一気に抱えて運ぶより、その場に置きながら一定方向(例:左から右)に進めると、足元が乱れにくく安全です。鎌作業は“歩幅が安全装置”なので、腰をひねって腕だけで済ませない方が、長時間で差が出ます。
※参考リンク(片手鎌の基本動作、草の握り方、成長点の下を狙う説明などがまとまっています)
https://www.noukaweb.com/how-to-use-sickle/
面積がそこそこあり「立ったまま刈りたい」場合、選択肢に入るのが大鎌(刈払鎌)です。ただし大鎌は、片手鎌の延長で「刃全体で一気に切ろう」とすると途端に重く感じ、抵抗が増えて失速します。大鎌の重要なコツは、刃先から草に対して横へ“すべらせて払う”ように入れることです。刃先から順に切れていくので抵抗が減り、結果的に少ない力で前に進めます。
農文協の事例では、刃渡り約30cm・柄135cm前後の大鎌を工夫しながら使い込み、信州鎌系の軽量タイプ(総重量700gほど)に出会って省力化できた、という具体的な話が出ています。ここが重要で、「重い鎌を筋力で振り回す」発想から「鎌の重さを利用して横に払う」発想へ切り替えると、疲れ方が変わります。大鎌は“強く振る道具”ではなく、“滑らせる道具”として設計・進化している、と理解すると上達が速いです。
また、大鎌は「地際まで均一に刈る」よりも「高刈り」や「刈りムラを許容する」使い方が向きます。地際を攻めすぎると、石や土に当たりやすく、刃の寿命も短くなります。畑のウネ間や果樹の株周りなど、機械の刈払機で攻めると植物本体を傷つけやすい場所で、“選び刈り”として使う考え方も現場向きです。
さらに、草刈りを“環境側”から見ると面白い示唆があります。刈払機などで地際まで刈ると土が乾燥しやすく荒地に適応した草が増えがちだが、大鎌は環境負荷が少なく、年々「優しい草」が増えて草刈りがラクになる、という観察が紹介されています。これは一発で効果が出る類ではないものの、草生管理を長期で回す圃場ほど、作業者が体感しやすい論点です。
※参考リンク(大鎌の“刃先からすべらせる”コツ、総重量700g前後の事例、草の変化の観察など)
https://www.ruralnet.or.jp/gn/201807/kant_oogama.htm
鎌で草刈りの作業効率を左右するのは、腕力よりも「刃の状態」です。切れない鎌は、草を切るのではなく“押して倒す”動きになり、余計な力が入り、手元も滑りやすくなります。だから研ぎは「時間がある日にまとめて」ではなく、「切れ味が落ちる前に短時間で回す」方が安全面でも得です。
研ぎ方の基準としてよく出るのが、砥石と刃の角度です。鎌の刃と砥石の角度は15~20度くらいを目安に当て、一定方向に前後させて研いでいき、裏にカエリ(バリ)が出たら刃が付いた合図、という説明があります。鎌は包丁のように平面が長いわけではなく湾曲もあるので、刃全体を均一に当てる意識が必要です。刃元から刃先まで“平均してカエリが出る状態”が、研ぎムラが少ないサインになります。
研ぎの現場で失敗しがちなのは、力を入れすぎて角度がぶれることです。角度がぶれると、切れ味が安定しないだけでなく、刃先が弱くなって欠けやすくなります。砥石は滑らせる、角度は固定、回数は多め、これが基本です。
実務としては「作業中の簡易研ぎ」と「作業後の本研ぎ」を分けると運用しやすいです。作業中は携帯シャープナーで軽く立て直し、作業後に砥石で整える、という使い分けをしている例もあります。研ぎに慣れていない人ほど、“毎回完璧”を狙うより、短いサイクルで刃を戻す方が結果的に上達します。
※参考リンク(角度15~20度、カエリの出し方など研ぎの基準が明確です)
https://www.noguchi-kajiten.co.jp/site/togi
鎌で草刈りの事故は「刃が当たる」だけではなく、「転ぶ」「滑る」「石に当てて跳ねる」など複合要因で起きます。特に大鎌は、刃を横へすべらせる動きが基本になる分、刃の移動距離が長くなりやすいので、作業線の前方・側方に人が入らない導線づくりが必須です。畦や斜面では“上から下へ刈るほうが振り抜きやすい”という現場例もあり、足場の向きで安全度が変わります。
安全面の要点を、道具と動作に分けて整理します(チェックリストとして使えます)。
意外と盲点なのが、草を束ねる“反対の手”の位置です。草束を握る手は刃の軌道から確実に外し、握る高さを一定に保つと、ヒヤリが減ります。特に蔓草が混じる場所は、刃が絡んで予想外に止まるので、無理に引きちぎらず「絡みを切る工程」を挟むほうが安全です。
そして、刃物作業は「切れるほど安全」という逆説があります。切れないと踏ん張って姿勢が崩れ、刃が跳ねたり、手首が入って軌道が乱れたりします。安全対策の中に、研ぎ・点検・作業線の確保を必ずセットで入れてください。
鎌で草刈りは「全部きれいに刈る」だけが正解ではありません。農地の草管理では、目的(地温抑制・泥はね防止・歩行ライン確保・害虫の温床を減らす等)に合わせて“残す”設計ができます。ここで効いてくるのが、鎌、とくに大鎌が得意とする高刈りです。
高刈りを混ぜると、作業者側には3つのメリットがあります。
現代農業の事例では、刈った草をそのまま敷いておくことで夏場の地温上昇の抑制になる、という使い方が出ています。つまり鎌作業は「刈る」で終わらず、「敷く」まで含めて設計すると収支が合いやすいです。全面を短く刈って“ゼロから管理し直す”より、必要な場所だけを狙って刈り、草を資材として場に戻すほうが、翌月の自分を助けます。
さらに長期視点では、刈り方が草相に影響する、という観察も紹介されています。地際まで刈る管理を続けると土が乾燥しやすく荒地型の草が増えやすい一方で、大鎌のように環境負荷が小さい刈り方だと年々優しい草が増えて草刈りがラクになる、という見立てです。ここは圃場条件に左右されますが、「鎌の刈り方=次に生える草への介入」という視点を持つと、作業が単純労働から“管理作業”に変わり、判断の精度が上がります。