一次産業二次産業三次産業四次産業と産業構造の変化

農業や製造業など産業の種類にはどのような違いがあり、日本の産業構造はどう変化してきたのでしょうか。一次産業から四次産業までの特徴と現代の課題を理解することで、これからの農業や経済の動きが見えてくるでしょう。

一次産業二次産業三次産業四次産業の定義

この記事で分かること
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各産業の基本的な定義

一次産業から四次産業までの分類と特徴を理解できます

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日本の産業構造の変遷

高度経済成長期から現在までの産業別就業者の推移を把握できます

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六次産業化の展開

一次産業が二次・三次産業と融合する新しい取り組みを学べます

一次産業とは農業林業漁業の特徴

 

一次産業とは、自然界に働きかけて直接資源を得る産業のことを指します。日本においては農業、林業、漁業がこの分類に該当し、私たちの食料や木材などの供給源として社会の土台を支えています。

 

参考)一次産業・二次産業・三次産業とは?意味と違いをやさしく解説

一次産業の最大の特徴は、自然環境の影響を強く受けることです。天候や災害によって生産量が大きく変動するため、他の産業と比べて予測が困難な側面があります。また、地方や自然の多い地域で営まれることが多く、地域経済の基盤となっています。

日本の一次産業は現在、高齢化と後継者不足という深刻な課題に直面しています。基幹的農業従事者の平均年齢は67.8歳に達しており、各国と比較しても高齢化が顕著です。人口減少と少子高齢化が進む中で、後継者不足は一次産業全体の存続に関わる重要な問題となっています。

 

参考)https://www.boj.or.jp/finsys/c_aft/data/aft221221a2.pdf

一次産業から二次産業へ加工製造の役割

二次産業とは、一次産業で得られた原材料を加工・製造・建設する産業です。日本の産業区分では、鉱業、採石業、砂利採取業、建設業、製造業の3業種が該当します。つまり、農業で育てた小麦を使ってパンを作る工場や、鉄鉱石を加工して自動車を製造するメーカーなどが二次産業にあたります。

 

参考)TURNS(ターンズ)|移住・地方創生・地域活性化 第一次産…

二次産業の特徴は、技術や設備を使ってモノを大量生産することです。工業地帯や都市部に集中しており、経済の中心的な役割を担うとともに、輸出産業としても重要な位置を占めています。特に日本は製造業が強く、約1,046万人が製造業に従事しており、これは日本の労働者の約7人に1人に相当します。

 

参考)第二次産業とは?具体例や日本の現状・課題から見るものづくりの…

しかし、日本の二次産業も人手不足や労働力の高齢化といった構造的な課題に直面しています。製造業の就業者数は2002年から横ばいで推移しており、根本的な解決には至っていません。一方で、第四次産業革命による技術革新と企業の積極的なDX推進により、新たな成長の可能性を見出しています。

一次産業以外の三次産業サービス業の範囲

三次産業とは、一次産業にも二次産業にも分類されない産業のことです。具体的には小売業、卸売業、運輸業、飲食業、観光業、美容業、介護などのサービス業、インターネットやソフト開発などの情報・IT関連、学校、病院、銀行、保険などの教育・医療・金融業が含まれます。

 

参考)TURNS(ターンズ)|移住・地方創生・地域活性化 第二次産…

三次産業の特徴は、形のない価値を提供することです。人と接する仕事が多く、都市や駅前、住宅街などに多く展開されています。日本では経済の発展とともに三次産業の比重が増加し続けており、現在では就業者の半数以上が三次産業に従事しています。

 

参考)この15年で日本の産業構造はどう変わったのか?

産業構造の変化を見ると、発展途上国では一次産業で働く人の割合が多いですが、先進国になるにつれて二次産業、三次産業の割合が増えていくという法則があります。これは「ペティ=クラークの法則」と呼ばれ、経済発展の段階を示す重要な指標となっています。

 

参考)日本のすがた

一次産業の発展形としての四次産業革命

四次産業革命(インダストリー4.0)とは、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ビッグデータ、ロボット工学、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなどの技術が急速に進歩し、社会・経済の構造が大きく変革する時代のことです。18世紀の蒸気機関による第一次産業革命、20世紀初頭の電力を用いた大量生産による第二次産業革命、1970年代のコンピューターによる生産自動化の第三次産業革命に続く、第四の産業革新とされています。

 

参考)第1節 第4次産業革命のインパクト - 内閣府

四次産業という言葉には別の意味もあり、産業分類上の概念として、情報産業、医療産業、教育サービス産業などの知識集約産業を指す場合もあります。これらは従来は三次産業に含まれていましたが、1960年以降の発展により独自のカテゴリーとして認識されるようになりました。

 

参考)4次産業(よんじさんぎょう)とは? 意味や使い方 - コトバ…

農業分野においても四次産業革命の影響は大きく、スマート農業やアグリカルチャー4.0と呼ばれる技術革新が進んでいます。IoTセンサーやドローン、AI解析によって、これまで人手に頼っていた作業の自動化や効率化が実現しつつあります。一次産業における機械化が難しかった理由の一つである「植物の個体ごとの生育差」も、AIによる個別管理によって克服できる可能性が出てきています。

 

参考)Redirecting...

一次産業の新しい形六次産業化の取り組み

六次産業化とは、一次産業従事者が生産だけでなく、製造・加工(二次産業)やサービス・販売業(三次産業)に一体的に取り組むことで、生産物の付加価値を高める取り組みです。1(一次)+2(二次)+3(三次)=6(六次)となることから名付けられました。

六次産業化の具体的な事例として、宮城県大崎市の「デリシャスファーム株式会社」では、トマトの規格外品を有効活用してトマトジュースを製造し、直売所の横にカフェを併設することで相乗効果を生み出しています。石川県白山市の「株式会社六星」は、水稲経営に加えてもちや和菓子などの農産加工を手がけ、自社直売所で販売するとともに、農作業体験や季節行事を開催して顧客の維持・確保に取り組んでいます。

 

参考)農業の6次産業化の成功事例とメリットデメリット - 農業メデ…

七尾市の「中島アグリサービス」は、中島菜の特徴を活かした粉末を自社製造するほか、食品企業と連携してうどん、そうめん、飴などの加工品を開発し、直売所、和倉温泉、ネット通販を通じて販売を拡大しています。このように六次産業化は、一次産業の収益性向上と地域活性化の両面で重要な役割を果たしています。

 

参考)6次産業化の取組事例紹介 - 農業の6次産業化|農業を元気に…

一次産業から三次産業への産業構造の変化と日本経済

日本の産業構造は戦後、劇的な変化を遂げてきました。統計上で最も大きな変化が見られたのは1960年から1980年にかけての高度経済成長期で、一次産業の急減と二次・三次産業の急増による逆転が起こりました。1950年には一次産業の就業者割合が高かったものの、その後は二次産業、三次産業へと比重が移っていきました。

昭和後期から平成にかけて、三次産業の就業者割合は全体の半数を超えるまで拡大しました。特に平成時代には高齢化の影響により「医療・福祉」の分野で就業者が急増しており、プラスになっているのはすべて三次産業で、一次産業と二次産業は軒並みマイナスになっています。

この産業構造の変化は、国の経済発展段階を示す重要な指標となっています。一般的に、一次産業が多い地域は農村や地方が中心で自然資源が豊富、二次産業が多い地域は工業が発展したモノづくり国家、三次産業が多い地域はサービスや情報産業が発展した都市型社会と特徴づけられます。現在の日本は三次産業が経済の中心となっており、典型的な先進国型の産業構造を持っています。

内閣府の第4次産業革命に関する詳細な分析資料
内閣府が公開している第4次産業革命のインパクトに関する資料で、産業構造の変化と今後の展望について詳しく解説されています。

 

農林水産省による6次産業化の取組事例集
農林水産省が紹介している全国の六次産業化の成功事例をまとめたページで、具体的な取り組み内容や成果が掲載されています。

 

 


一橋ビジネスレビュー 2023年AUT.71巻2号: 闘う第1次産業