ハイバリア袋と酸素透過度と水蒸気透過度

ハイバリア袋の基本から、酸素透過度・水蒸気透過度の見方、農産物の保存と鮮度保持の考え方までを現場目線で整理します。どの指標を優先して袋を選びますか?

ハイバリア 袋

この記事でわかること
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ハイバリア袋の基礎

「何をどれだけ通しにくい袋か」を、酸素・水蒸気・光の観点で言語化します。

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数値の読み方

酸素透過度(OTR)と水蒸気透過度(WVTR)の意味、測定条件、農産物での優先順位を解説します。

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農業での実装

鮮度保持(MA/MAP)や結露・カビ対策など、袋を「使いこなす」ための現場チェック項目をまとめます。

ハイバリア 袋とは?酸素と水蒸気の透過を防ぐ考え方

 

ハイバリア袋は、外部からの酸素や水蒸気などの透過を抑え、内容物の品質保持に役立つ「バリア性の高い袋」を指します。特に食品分野では、酸素による酸化や、湿気による食感劣化・カビリスクなどを下げる目的でバリア性が重視されます。
実務で重要なのは「何を止めたいか」を先に決めることです。油脂の酸化臭や変色を止めたいのか、乾燥・しおれを止めたいのかで、見るべき指標と袋の構成が変わります。
また、ハイバリア=万能ではなく、農産物では“呼吸する”という特殊事情があります。青果物は収穫後も呼吸し、袋内の酸素・二酸化炭素バランスが品質を左右するため、酸素を止め過ぎると逆効果になるケースもあります(嫌気呼吸による異臭・軟化など)。

 

つまり、乾燥食品のように「できるだけ遮断」が正解になりやすい分野と、青果のように「ほどよく制御」が必要な分野がある、という前提で読み進めるのが安全です。

 

ハイバリア 袋の酸素透過度と水蒸気透過度の見方(JIS条件の罠)

袋やフィルムのバリア性能は、代表的に「酸素透過度(OTR)」と「水蒸気透過度(WVTR)」で語られます。酸素透過度は酸素がどれだけ通るか、水蒸気透過度は水分がどれだけ通るかを示し、どちらも“低いほどバリアが高い”のが基本です。
ただし、数値には必ず測定条件が紐づきます。例えば透明バリアフィルムの例では、水蒸気透過度は JIS K7129-2 法で 40℃・90%RH、酸素透過度は JIS K7126-2 法で 30℃・70%RH など、温度・湿度条件が明記されます。条件が違う数値を並べて比較すると、現場で「思ったほど効かない/効きすぎた」事故が起きやすいので、カタログの脚注まで確認してください。

 

加えて、酸素透過度の試験方法には差圧法・等圧法などがあり、規格として JIS K7126 に規定があることも押さえておくと、仕入先との会話が通じやすくなります。測定機関の資料では、クーロメトリック法(MOCON法)でハイバリアにも対応できる旨が説明されており、「どの方法で測った値か」を揃えることが比較の第一歩になります。

 

現場向けの超実用チェックとして、次をおすすめします。

 

・袋を選ぶ前に決めること(最低限)

  • 対象は「乾燥物」か「青果(呼吸あり)」か
  • 目的は「酸化防止」か「乾燥防止」か「両方」か
  • 予冷・冷蔵・常温など、保管温度帯はどこか
  • 結露が起きやすい流通(温度差が大きい)か

ハイバリア 袋で鮮度保持:MA包装とMAPの現場設計

青果物の鮮度保持では、袋内のガス環境を調整するMA(Modified Atmosphere)包装の考え方が重要です。MA包装は包装フィルムのガス透過量(主に酸素透過度)を調整し、袋内を低酸素・高二酸化炭素寄りにして呼吸を抑えることで鮮度保持を狙います。実際の解説資料でも、酸素濃度が下がると呼吸量が大きく低下する例が示され、温度を下げにくい流通環境でも呼吸抑制による鮮度保持が可能と説明されています。
一方、MAは“酸素を減らせば減らすほど良い”ではありません。別の解説では、無酸素に近づくと青果が嫌気呼吸に切り替わり、品質劣化(異臭など)につながるため、適正ガス濃度の維持が必要とされています。ここが、乾燥食品での「とにかく高バリアにして脱酸素剤」発想と、青果の発想が衝突するポイントです。

 

現場での設計は、ざっくり言うと「作物の呼吸量 × 温度帯 × 袋のガス透過性 × 密封度(シール品質)」のバランスです。袋の材質だけでなく、シール幅・シール温度・ピンホール・チャック部などで“実効バリア”が落ちるため、初回導入時は小ロットで検証し、袋内のにおい・曇り・変色の有無まで確認すると失敗が減ります。

 

実装のコツ(農家・選果場向け)

  • 予冷できる作物は、袋詰め前に品温を下げる(結露とカビリスクが落ちる)
  • 水洗い後は表面水をできる限り切る(袋内の過湿が暴走しやすい)
  • 同じ袋でも「詰め量(充填率)」でガスバランスが変わるので、規格重量で固定する
  • 透明袋は売場で見栄えが良い一方、内容物の変化(曇り、液だれ)も見えるので、店頭クレーム要因を先につぶす

ハイバリア 袋と脱酸素剤と乾燥剤:併用の注意点

ハイバリア袋は、脱酸素剤や乾燥剤と組み合わせることで保存性をさらに上げられる場面があります。脱酸素剤は包装内の酸素を吸収して酸化やカビの発生を抑える目的で使われ、乾燥剤は包装内の水分(湿気)を吸収して食感維持などに使われる、と役割が明確に異なります。
ただし農産物での併用は慎重に考えてください。葉物や果菜類のように水分が多い作物で乾燥剤を入れると、局所的に乾燥が進み「しおれ」を助長することがあります。逆に、乾燥加工品(乾燥野菜・ドライフルーツ・穀類・茶葉など)では、バリア袋+乾燥剤の相性が良く、湿気戻りを抑えやすくなります。

 

脱酸素剤についても同様で、青果のように呼吸するものに安易に入れると、袋内酸素が下がりすぎて嫌気条件に寄り、異臭や軟化のリスクが高まります。脱酸素剤は「密閉空間で酸素を減らす」ことに強いので、呼吸しない・呼吸がほぼ止まる低温帯・あるいは加工品向けの運用で威力を発揮します。

 

作業ミス防止の小技(地味に効く)

  • 脱酸素剤・乾燥剤は開封直後から反応が始まるため、必要分だけ出して残りは密封保管する
  • 仕入れた袋が“脱酸素剤対応”かを確認する(袋側の酸素流入が多いと効きが続かない)
  • 人が入れ忘れやすいので、計量ラインなら「重量チェック」や「目視ポイント」を工程に入れる

ハイバリア 袋の独自視点:屈曲クラックと“流通の揺れ”が性能を落とす

検索上位の説明は「酸素透過度が低い」「水蒸気透過度が低い」といった“静的な性能”が中心ですが、農産物流通は静止していません。コンテナ搬送、荷崩れ防止の締め付け、振動、店頭での立て陳列など、袋は想像以上に「曲げ」を受けます。ここで起きるのが、蒸着層やコーティング層の微細なクラック(屈曲クラック)で、カタログ値のようなバリアが出なくなる現象です。
この対策として、材料側の工夫が進んでいます。例えば「透明蒸着フィルムにPVDCをコーティングして究極のバリア性能を発現」「PVDCコートが蒸着膜を保護し、クラックを防ぐため屈曲に強い」といった説明が、メーカー資料で示されています。農産物は「段ボールの角」「結束バンド」「ネット」「コンテナのリブ」など、局所的な折れ曲がりポイントが多いので、導入前に“曲げられた状態での実テスト”を行うと、机上比較より精度が上がります。

 

現場でできる簡易テスト案(高価な測定器なし)

  • 収穫→予冷→袋詰め→箱詰め→模擬振動(軽く揺すって搬送再現)→冷蔵保管
  • 24〜72時間後に、袋の曇り、におい、ドリップ、変色、結露水の溜まり位置を記録
  • “角で折れた部分”から劣化が始まっていないか確認(折れ跡=バリア低下の疑い)
  • 同一ロットで「袋サイズ違い」「詰め量違い」「シール条件違い」を並行比較する

なお、バリア材は遮光性も重要な要素になり得ます。アルミ蒸着などは酸素・水蒸気の透過を抑える能力が高いだけでなく、遮光性も特徴として挙げられており、光で品質が落ちる品目(色が抜ける、香りが飛ぶ等)では検討価値があります。ただし遮光すると“中身が見えない”ため、販売形態や検品動線との兼ね合いも同時に設計してください。

 

意外と効く改善ポイント(袋以外)

  • 袋の性能を上げる前に「シール不良率」を下げる(ピンホール同様に効く)
  • 箱の内側に当て紙や緩衝を入れて、袋の角折れを減らす
  • 店頭陳列の姿勢(吊り下げ・立て置き)で折れが増えるなら、陳列方法も提案する

参考:青果物のMA包装の原理(ガス透過量調整で低酸素・高CO2を作る図解や考え方がまとまっている)
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2003_chosa02.html
参考:酸素透過度試験(ハイバリア対応の測定法・条件例がわかり、仕入先との数値比較の前提が揃う)
https://www.jcii.or.jp/relays/download/92/367/183/1251/?file=%2Ffiles%2Flibs%2F1252%2F202004031308403181.pdf
参考:脱酸素剤と乾燥剤の違い(目的が真逆になり得るため、農産物での誤用防止に役立つ)
https://www.mgc.co.jp/special/column/freshness-preservative/

 

 


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