ビーンカッター(豆類収穫機)は、豆類の茎を切って圃場に倒し、後で拾いやすい状態に整えるための機械です。従来の豆類収穫では、ビーンハーベスタやビーンカッタで刈り取りした後に「にお積み」を行い、圃場で乾燥を進めてから脱穀する体系が一般的でした。ところが工程数が多く労働力が必要なため、現在は「にお積み」を省略したピックアップスレッシャ体系や、コンバインのダイレクト収穫も広がっています。こうした流れの中でも、ビーンカッターは「刈り倒し工程を確実にやる」ことで、ピックアップ時の拾い残しや、脱穀時の品質低下を抑えるための重要な選択肢になります。特に小豆のように莢先が地際にあることが多い作物では、刈り取り精度がそのまま収穫損失に直結します。
作業イメージを現場寄りに分解すると、①地際近くで切る(または地下部に近い位置を狙う)→②倒した株を一定方向に寄せる/姿勢を揃える→③乾燥を進める→④ピックアップや脱穀へ、という流れです。ここで「刈ったあとに株がバラける」「途中で莢が切れる」「枝が飛散する」と、拾う段階でロスが出ます。北海道の研究では、地下部(培土された畔の頭部)を切断することで、分枝の飛散や莢の中途切断を回避する設計思想が示されています。つまりビーンカッターは、単に“切れればよい”ではなく、倒れ方・まとまり方まで含めて設計と調整が効いてきます。
ビーンカッター(豆類収穫機)は「どの圃場でも万能」というより、向く条件・向かない条件がはっきり出ます。十勝農試型の豆刈機(ビーンカッター)に関する普及資料では、洪積性火山灰地や沖積性の各種土壌に適応できる一方、石礫地や拳大の石がある土壌では刈取刃の損傷・摩耗が大きく使用できない、と明記されています。現場でありがちな落とし穴は、表面はきれいに見えても「埋もれ株」「石」「硬い塊」が残っていて、刃が欠けたり、刈り深さが安定しなかったりすることです。導入前に、収穫期に“刃が入る深さ”を想定して障害物の除去・整地精度を上げておかないと、機械の性能以前に損失が出ます。
地形についても同資料は、若干の傾斜は運転技術で補えるが、傾斜より地表面の凹凸が作業成績に大きく影響すると述べています。凹凸があると、刈りたい高さが一定にならず、①高く刈って莢が残る、②低く突っ込み過ぎて土を噛む、の両方が起きます。土を噛むと刃の摩耗が一気に進むだけでなく、倒した株に土が付いて後工程の汚れや調製ロスの原因にもなります。したがって、ビーンカッターを活かす圃場づくりは「播種床を平坦にする」だけでなく、培土も含めて“均一な高さ”を作るのが実務的な要点です。
豆類の収穫は、作物の特性(最下莢の位置、裂莢のしやすさ、倒伏の出方)で機械選択も調整も変わります。小豆は裂莢しやすく、莢先が地際にある場合が多い作物だと整理されており、刈り取り部での損失が問題になりやすい、と研究報告で述べられています。つまり「少し高く刈っただけ」で、拾う以前に畑に豆を置いてくることになります。ビーンカッターで先に刈り倒し工程を確実にやる狙いは、こうした低位着莢のロスを抑えつつ、後工程が安定する状態を作る点にあります。
培土は、単なる雑草対策や倒伏軽減だけでなく、収穫工程そのものの品質にも関係します。研究報告では小豆について「中耕除草時に高さ10cm程度の培土」を行うことで、ディバイダで莢を少し持ち上げて茎を切断するよう収穫できる、と説明されています。ビーンカッター運用でも同じで、培土が低すぎる・バラつくと、刃の狙いが定まらず、莢を巻き込む・株が抜ける・土を噛む、といった不具合が連鎖します。
ここで、あまり知られていない実務ポイントを1つ入れます。十勝農試型ビーンカッターでは、刈取刃の土中貫入深を3~4cm程度に調節する、という具体値が提示されています。貫入深は「深ければ安心」ではなく、深すぎると抵抗が増え、根部が付着したり、土を持ち上げて株が乱れたりします。逆に浅いと根際を切れず引き抜ける割合が増えて、後工程で拾いづらい塊ができやすい。結局、培土の均一化と貫入深の適正化はセットで考えるのが得策です。
ビーンカッター(豆類収穫機)は、刈り方だけでなく「いつ刈るか」で損失が大きく変わります。十勝農試型の普及資料では、裂莢を開始する9時前頃までには作業を終了すること、とかなり踏み込んだ目安を示しています。これは、乾いてくる時間帯ほど裂莢が進み、機械の振動や搬送で豆が落ちるリスクが上がるためです。裏を返すと、曇天で裂莢が進みにくい日には作業を続行できる場合がある、と同資料は述べており、「天気=作業中止」ではなく“裂莢状態を見て判断”する運用が推奨されています。
作業速度も、損失と能率の綱引きです。同資料では刈取速度2.5~3m/secで作業した場合、根部の付着が10%程度で他は完全に刈取られ、ほぼ完全な刈取状態になる、と示されています。つまり速度は遅すぎても抜けや倒し不良が増える可能性があり、単に慎重運転が正解ではありません。もちろん圃場条件や草量、倒伏で最適は変わるため、最初の数十メートルで、①抜け(引抜け)②土噛み③倒れ方(株のまとまり)④刃への付着、の4点を見て微調整するのが現場的です。
さらに「作業の段取り」も重要です。十勝農試型では枕地として12畦を横畦としておく必要がある、と作物条件として書かれています。枕地をケチると旋回で踏み倒しが増え、踏み倒した部分ほど拾い残しが出ます。枕地=面積の損に見えても、収穫ロスと作業の詰まりを減らす保険と考えると納得しやすいはずです。
検索上位の説明では「刈って乾かして脱穀」が中心になりがちですが、実は“乾燥のさせ方”が品質を決める局面があります。北海道の研究では、豆類の機械収穫体系は省力化できる一方で、収穫損失や脱穀時の損傷、汚粒による品質低下など、クリアすべき課題があると整理されています。つまり、ビーンカッターで刈り倒して終わりではなく、乾燥・調製・脱穀にロスが移動するだけのこともあります。
意外性のあるポイントとして「乾燥速度」があります。研究報告では金時豆の乾燥において、乾燥開始後1時間の平均乾燥速度が2.0%を超える場合に皮切れ粒が発生し、乾燥速度が大きくなるほど発生量が増える、という実験結果が示されています。さらに、初期水分・外気温・相対湿度の組み合わせで皮切れを防止できる相対湿度の下限条件を提示し、例えば初期水分23%、外気温15℃では外気湿度60%以上なら皮切れが発生しないが、60%未満では危険性が高い、という具体例まで示されています。これは「晴れたら一気に乾かすほど良い」という直感と逆で、急乾燥が割れや皮切れを誘発することを意味します。
ビーンカッター運用に引き寄せると、刈り倒し後の並び方・塊の大きさ・地表との接触面積が、乾燥速度を左右します。倒した株が土に埋もれる、あるいは逆に風通しが良すぎて急乾燥する、といった“乾きムラ”があると、脱穀時の損傷や調製ロスに出やすい。乾燥工程は機械ではなく天候に支配される部分が大きいからこそ、刈り倒しの時点で「乾き方を設計する」意識が、最終的な歩留まりに効きます。
参考:十勝農試型ビーンカッターの構造・普及注意(石礫地不可、刈取時刻、刃の貫入深3~4cm、作業能率試算など)
https://www.hro.or.jp/agricultural/center/result/kenkyuseika/gaiyosho/s36gaiyo/1960024.html
参考:豆類の機械収穫体系、損失低減の考え方、金時豆の乾燥で皮切れを抑える「乾燥速度2.0%/h」目安や湿度条件の具体例
https://www.mame.or.jp/Portals/0/resources/pdf_z/069/MJ069-03-TK.pdf