ベンレート使い方さつまいも消毒苗基腐病対策水和剤

さつまいもの苗消毒に欠かせないベンレート水和剤。基腐病や黒斑病を防ぐための正しい希釈倍率や浸漬時間は?植え付け前の手順を徹底解説します。効果的な使い方は?

ベンレートの使い方さつまいも

ベンレート水和剤のポイント
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基腐病対策

苗の植え付け前にベンレートで消毒することで、基腐病や黒斑病のリスクを大幅に低減できます。

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希釈倍率と時間

基本は500倍〜1000倍希釈で30分間の浸漬処理。時間は厳守しましょう。

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耐性菌対策

連続使用は避け、他の殺菌剤とローテーション防除を行うことが推奨されています。

ベンレート水和剤でさつまいも苗を消毒する希釈倍率と時間


さつまいも栽培において、苗からの病害持ち込みを防ぐことは収穫量を確保するために最も重要な工程の一つです。特に「ベンレート水和剤」を用いた消毒は、多くの農家や家庭菜園で採用されている信頼性の高い方法です。しかし、適切な希釈倍率と時間を守らなければ、十分な効果が得られないばかりか、薬害のリスクも生じます。ここでは、最も一般的で効果的な希釈方法について具体的に解説します。


まず、さつまいもの苗消毒におけるベンレート水和剤の標準的な希釈倍率は500倍から1000倍です。これをバケツやタンクなどの容器に作り、苗を浸します。例えば、10リットルの水に対してベンレート水和剤を使用する場合、500倍希釈液を作るには薬剤を20g(または20ml相当)溶かします。1000倍希釈であれば10gです。一般的に、病害のリスクが高い圃場や、予防を徹底したい場合は、より濃い500倍希釈が推奨される傾向にあります。


次に重要なのが「浸漬(しんせき)時間」です。推奨されている時間は30分間です。数秒くぐらせるだけの「瞬間浸漬」では、薬剤が組織の内部や重なり合った葉の隙間まで十分に浸透せず、消毒効果が不完全になる可能性があります。逆に、長時間浸けすぎると苗が弱る原因にもなりかねません。30分という時間は、薬剤の効果を最大限に引き出しつつ、苗への負担を抑えるバランスの取れた設定です。


また、水和剤を使用する際は、粉末が沈殿しやすいため、使用直前によく撹拌(かくはん)することが重要です。特に大量の苗を一度に処理する場合、底の方だけ濃度が高くなったり、上澄みだけ濃度が薄くなったりしないよう注意が必要です。展着剤を加えるかどうかについては、製品のラベルや地域の指導指針に従うべきですが、ベンレート単体でも十分な浸透性を持っています。


ベンレート水和剤の適用病害虫と使用方法(グリーンジャパン)

ベンレートのさつまいも基腐病や黒斑病への殺菌効果

近年、全国のさつまいも産地で猛威を振るっているのが「基腐病(もとぐされびょう)」です。この病気は、カビ(糸状菌)の一種が原因で、茎の地際部分が黒く変色し、最終的にはイモが腐敗してしまう恐ろしい病害です。ベンレート水和剤は、この基腐病に対して登録を持っており、初期段階での菌の密度を減らすために非常に有効な手段とされています。


ベンレートの主成分であるベノミルは、浸透移行性を持つ殺菌剤です。これは、薬剤が植物体の表面だけでなく、内部に浸透して効果を発揮することを意味します。
の段階でベンレート処理を行うことで、苗が既に保有している病原菌を殺菌し、畑への持ち込みを防ぐことができます。特に基腐病菌は、外見上は健康に見える苗の茎や葉にも潜んでいる可能性があるため、植え付け前の予防的な消毒が不可欠です。


また、ベンレートは古くから「黒斑病(こくはんびょう)」の対策としても利用されてきました。
黒斑病もまた、さつまいもの品質を著しく低下させる病気であり、貯蔵中に被害が拡大することもあります。ベンレートによる消毒は、これら複数の重要病害を同時にターゲットにできるため、効率的な防除手段と言えます。


ただし、注意点もあります。ベンレートは治療効果と予防効果の両方を兼ね備えていますが、すでに症状が進行して茎が変色しているような苗には効果が期待できません。あくまで「保菌しているかもしれないが見た目は健康な苗」を消毒し、発病を抑えるためのものです。明らかに病徴がある苗は、消毒液に浸けるのではなく、直ちに廃棄することが鉄則です。


サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策(農研機構)

ベンレートでさつまいも苗の植え付け前に行う浸漬消毒手順

実際にベンレート水和剤を使って、さつまいものを消毒する具体的な手順を解説します。作業は植え付けの直前、または当日に行うのがベストです。作り置きした消毒液を使用すると効果が落ちる可能性があるため、必ず使用当日に調整してください。


手順1:苗の準備と調整
まず、親株からつるを切り取る(採苗する)際、地際から5cm以上離れた位置でカットします。これは、地表面近くに病原菌が多く存在するためです。切り取った苗は、しおれていない新鮮な状態で消毒作業に入ります。


手順2:消毒液の作成
規定の倍率(通常500〜1000倍)になるように水を計量し、ベンレート水和剤を溶かします。粉がダマにならないよう、少量の水で溶いてから全量の水に混ぜるとスムーズです。容器は、苗の束がすっぽりと入る大きめのバケツやプラスチックコンテナが適しています。


手順3:浸漬(消毒)
以前は、切り口に近い部分だけを浸ける「基部浸漬」が一般的でしたが、現在は基腐病対策として、苗全体を薬液に浸ける「全身浸漬」が推奨されるケースが増えています。農林水産省や各都道府県の指針でも、苗全体を30分間しっかり浸け込むことが指導されています。苗が浮いてこないよう、軽い重石をするか、カゴに入れて沈めると良いでしょう。


  • 推奨処理: 苗全体を薬液に浸す
  • 浸漬時間: 30分間
  • ポイント: 葉の裏側まで薬液が行き渡るようにする

手順4:乾燥と植え付け
30分経過したら苗を取り出し、風通しの良い日陰で表面を乾かします。濡れたまま直射日光に当てると葉焼けを起こすことがあるため注意してください。ある程度乾いたら、速やかに畑へ植え付けを行います。消毒後の苗を長時間放置すると、再汚染のリスクがあるため、段取りよく作業を進めましょう。


サツマイモ基腐病のまん延を防ぐために(農林水産省 九州農政局)

ベンレート使用時のさつまいも収穫時期と残留農薬の安全性

農薬を使用する際に最も気にかけなければならないのが、収穫物への安全です。特に家庭菜園では「農薬を使うといつ食べられるのか?」という疑問を持つ方が多いでしょう。ベンレート水和剤をさつまいもの苗消毒(植付前浸漬)として使用する場合の安全性について解説します。


ベンレート水和剤のさつまいも(かんしょ)に対する登録内容は、使用時期が「植え付け前」に限定されています。つまり、イモが肥大して収穫する時期よりも数ヶ月前に使用するものです。このため、正しく使用している限り、収穫されたさつまいもに基準値を超える農薬が残留することは極めて考えにくい設計になっています。


具体的には、使用回数は「1回」と定められています。これは、苗を消毒液に浸けるその1回の処理を指します。植え付け後に、葉っぱの上からジョウロや噴霧器でベンレートを散布することは、さつまいもの場合、一般的な登録使用方法とは異なる場合が多いため注意が必要です(※作物や登録変更により異なる場合があるため、必ず最新のラベルを確認してください)。苗の段階での処理であれば、収穫までに長い期間が空くため、成分は分解・消失し、食卓に上がる頃には安全性が確保されます。


また、作業者の安全も重要です。ベンレートは比較的毒性の低い普通物に分類されますが、微粉末であるため吸い込みやすい形状です。希釈液を作る際や苗を浸ける際は、必ず農薬用マスク、保護メガネ、ゴム手袋を着用してください。特に水和剤の粉末を計量する瞬間は舞い上がりやすいため、風向きに注意し、吸入しないよう対策を行いましょう。


ベンレートと他剤とのローテーションと薬剤耐性菌対策

最後に、独自の視点として非常に重要な「薬剤耐性菌(たいせいきん)」の問題について触れておきます。これは、同じ薬ばかり使い続けると、その薬が効かない菌が生き残って増えてしまう現象です。ベンレート(成分名:ベノミル)は、作用機序として「FRACコード:1」に分類されるベンズイミダゾール系の殺菌剤です。この系統は、効果が高い反面、連用すると耐性菌が発生しやすいことでも知られています。


さつまいも栽培において、「毎年ベンレートだけで消毒している」という状態はリスクが高いと言わざるを得ません。もし、ベンレートで消毒したのに基腐病やその他の病気が出てしまった場合、その圃場にはベンレートが効きにくい耐性菌がいる可能性があります。


これを防ぐためには、異なる作用機序を持つ薬剤とのローテーション(輪番使用)が不可欠です。例えば、以下のような薬剤が候補に挙がります。


  • ベンレート水和剤(ベンズイミダゾール系)
  • トップジンM水和剤(ベンズイミダゾール系・同系統なのでローテーションにはならない注意が必要)
  • Zボルドーなどの無機銅剤(保護殺菌効果が高く、耐性菌が出にくい)
  • アミスター20フロアブルなど(ストロビルリン系・基腐病に登録があるか要確認)

特に基腐病対策では、苗消毒にベンレートを使用し、植え付け後の畑での防除には銅剤(Zボルドーなど)を使用するといった「体系防除」が推奨されています。また、苗消毒の薬剤自体も、年ごとに変えるか、地域の防除暦(指導指針)に従って選定することが、長く安定してさつまいもを作り続けるコツです。「いつもの薬だから」と漫然と使用せず、戦略的に消毒剤を選ぶ視点を持ちましょう。


令和8年産サツマイモ基腐病対策の防除暦(鹿児島県)




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