アリルイソチオシアネート(以下AITC)は、わさび・からし系の辛味成分として知られ、揮発してガス状になり空間を満たす性質を持つため、包装内で抗菌・防カビ効果を発揮しやすいのが特徴です。根本は「食品に直接混ぜる」のではなく「包装内の空気(気相)を抗菌環境にする」発想で、微生物が増えやすい表面や果頂部付近の環境を変えます。特に、カビ胞子や酵母など真菌類に作用しやすいという知見があり、腐敗の入り口を塞ぐ用途に向きます。
一方で、揮発性が高い=扱いが難しいという裏返しでもあります。放出速度(どれくらいの時間で、どれくらいの量が出るか)が安定しないと、初期に効き過ぎて臭いが出たり、途中で効き目が落ちたりします。そのため現場での「ラップ運用」は、単に包むだけではなく、密閉度・通気・空間体積・温度を含めた“包装設計”として捉える必要があります。
ラップ(フィルム)にAITCを塗工して一定速度で放出させ、鮮度と品質を保つという考え方自体が製品化されており、ガス放出をコントロールして使うのが定石です。密閉が弱いと外へ逃げて効きにくく、逆に密閉が強すぎると臭いが残りやすいので、ここが設計の勘所になります。
権威性ある参考(AITCが褐変やエチレン生成に関与する段階を阻害して品質保持に寄与)。
農研機構:アリルイソチオシアネートによるカットキャベツの品質保持機構
農産物の品質低下は「菌(カビ・腐敗菌)」だけでなく、「褐変」「追熟」「萎れ」「軟化」など生理現象の比率も大きく、AITCはこの生理側にも絡む点が意外に重要です。農研機構の成果情報では、キャベツに含まれるAITCが、カットによる傷害で誘導される褐変やエチレン生成に関与する酵素の段階を阻害する機構で品質保持に寄与することが示されています。つまり、AITCは“菌を殺す”だけでなく、“傷害反応の進行を鈍らせる”方向にも働く可能性があり、カット野菜・加工原料・選果工程で微細傷が避けにくい現場ほど効き筋が見えやすいです。
ただし、ここで誤解しがちなのが「AITCを入れれば何でも長持ちする」という期待です。エチレンが絡む品目では、別途エチレン除去や温度帯の最適化が必要になりますし、結露が多いとカビの勢いが勝つ場面もあります。AITCラップは“単独で万能”ではなく、低温・結露抑制・緩衝・換気(または適度な密閉)とセットで効きます。
現場での導入手順としては、まず「狙いたい劣化」を一つに絞るのが安全です。例えば、①カビクレームが多い、②褐変で見た目が落ちる、③輸送日数が伸びて歩留まりが落ちる、のどれか一つをKPIにして、ラップの種類(通気・バリア)とAITCの放出設計を合わせ込みます。
AITC系の運用で現場が一番つまずくのは、効かせるほど出やすい「ワサビ臭(カラシ臭)」です。福岡県農林業総合試験場の「宅配輸送向け農産物の品質保持の手引き」では、イチジクでAITC系抗菌剤のみが保存5日後まで抗菌効果が認められた一方、種類によって果実にワサビ臭が認められたと明記されています。さらに、同資料では「カラシ臭が強いので濃度および設置方法に注意」と注意喚起があり、効き目と臭いがトレードオフになり得ることが、行政系資料レベルで整理されています。
ここから導ける実務のポイントは3つです。
・臭いの出方は「濃度」だけでなく「置き場所」で変わる(果実に近いほど移りやすい)。
・同じAITC系でも製剤によって臭いの出やすさが違う(“AITCなら同じ”ではない)。
・“効いているか”の判断はカビ率だけでなく、食味・香りの検査も同列に扱う。
また、同資料では、包装形態がAITCの効果に影響すること、設置方法(例:パック底より果頂部付近)で抗菌効果が高まることも示されています。つまり「ラップで包んで同梱」は同じでも、果頂部側に寄せるのか、底に置くのかで結果が変わります。臭いリスクを下げたい場合は、まずは“直接触れない・離して置く・換気し過ぎない”のバランスで、弱めの条件から段階的に上げるのが事故を減らします。
権威性ある参考(宅配輸送の品質保持、AITC系抗菌剤の効果と臭い注意)。
福岡県農林業総合試験場:宅配輸送向け農産物の品質保持の手引き(PDF)
農業現場での「ラップ×AITC」は、加工場の衛生というより、出荷後の“保管・輸送中のロス削減”に効かせる設計が現実的です。ポイントは、①温度、②湿度(結露)、③物理損傷(振動・衝撃)を同時に扱うことです。結露が起きると表面が濡れ、カビの増殖が加速しやすく、AITCを入れても負けるケースが出ます。逆に、結露を抑えられると、AITCの“空間に効く”特性が活きやすくなります。
運用を具体化すると、次のようなチェックリストが役立ちます。
✅ラップ(袋・フィルム)の密閉度は一定か(作業者で差が出ないか)
✅箱内の空間体積は一定か(詰め方で濃度が変わらないか)
✅冷蔵→常温移動のタイミングで結露が出ない導線か(出るなら吸湿・温度慣らしが必要)
✅緩衝資材で傷が増えていないか(傷はカビ・褐変の起点になる)
✅官能検査(臭い・食味)を誰が、いつ判定するか(クレームは数日後に出る)
現場で失敗しやすいのは「小さいテストでは良いのに、出荷規模で悪化する」パターンです。原因は、箱詰め速度が上がると密閉が甘くなる、庫内で温度ムラが出る、荷姿が変わり空間体積が変わる、など“スケールの罠”です。だからこそ、AITCラップは「資材の性能」だけでなく「作業標準(SOP)」を一緒に作ると、再現性が出て投資回収が早くなります。
検索上位では「抗菌・防カビ」「鮮度保持」の話が中心になりがちですが、農業従事者の実務で効く独自視点は、“品目別の許容臭い”を最初に数値ではなく運用で設計することです。AITCは効かせるほど、どうしてもワサビ系の香りが出やすく、これは「安全性」ではなく「商品性」の問題として出ます。つまり、腐らないのに売れない、クレームになる、という逆転が起き得ます。福岡県の手引きでも、AITC系抗菌剤で効果が出つつ、種類によってワサビ臭が果実に認められたと書かれており、“効いて良かった”だけでは終われない現場事情が示されています。
そこで、導入初期におすすめなのが、次のような「許容臭い」ルールを先に決めてしまうことです。
・直売所向け:開封直後にツンと来る香りはNG(購買の第一印象が命)
・加工向け:加工工程で飛ぶなら許容(ただし作業環境の臭気クレームに注意)
・宅配EC向け:開封時の香りはクレーム要因になりやすいので特に厳しめ(レビューが残る)
そして“許容臭い”を支える運用として、①設置位置(果頂部付近に置くと効きやすいが臭いも乗りやすい)、②ラップの密閉度(濃度が上がりやすい)、③保存日数(長いほど移りやすい)を、品目×販路で組み替えます。ここを最初から設計できると、AITCラップは「単なる資材」ではなく、ロスとクレームを同時に減らす“出荷設計”に進化します。

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