水田現場で「雑草ホタルイが多い」と言われるとき、実際にはイヌホタルイ等が混ざっていることが多く、まず“その株が何者か”を押さえるのが最短ルートです。
よくある混同相手はクログワイで、遠目だと似て見えますが、ポイントを絞れば判断できます。
見分けのコツは、株を少し近くで見て「茎の先」と「地際」をセットで観察することです。
参考)https://www.syngenta.co.jp/cp/articles/20200401_07
茎の先(茎頂部)では、クログワイは花が先端に付き、イヌホタルイは途中に花穂が付く部分があり、その位置から先端へ縦筋が見える、という整理が実用的です。
地際(茎葉基部)では、クログワイは鞘葉が膜質で縦縞模様、イヌホタルイは硬質で先端が尖る、という差が紹介されています。
さらに“初期の姿”だけで急いで判断したい場合は、最初の葉の展開方向も使えます。
参考)https://www.jaise.jp/main/wp-content/uploads/2024/10/nogyo-inasakusekkeisyo-zasso.pdf
資料では、ホタルイは最初に横向きに葉が展開し、クログワイは最初から垂直方向に葉が抽出するとされています。
現場向けの注意点として、見た目が似るほど「同じ剤でまとめていけるはず」と思いがちですが、クログワイは塊茎・根茎で増える多年生で、ホタルイ類(実態としてイヌホタルイ中心)は種子発生が主、という“増え方の違い”が防除戦略を分けます。
参考)雑草解説(稲作) - 宮城県公式ウェブサイト
見分けが曖昧なまま一発処理に頼ると、残草が出たときに原因(種類なのか、抵抗性なのか、水管理なのか)が切り分けにくくなります。
雑草ホタルイ(資料やラベル上の「ホタルイ」)は、代かき時に水面へ黒い種子が無数に浮くことがあり、その正体がイヌホタルイ種子である場合が多い、と公的資料で説明されています。
水田では“ほとんど種子発生”で、前年に大きな株を残した場合などは越冬株からも出る、とされています。
発芽は湛水条件で良好で、気温15℃で始まり、適温は30℃、出芽深度は地表下1〜2cmが多い、という情報は現場の初期防除(いつ水を張るか、どれだけ均平にするか)と直結します。
また、土中の種子寿命が10〜20年に達し、田畑輪換でも死滅しない、という厄介さが示されています。
ここで重要なのは、「今年きれいにしたのに、来年また出る」が“普通の仕様”だと腹落ちさせることです。
種子寿命が長い雑草は、1年の成功で油断すると、残草株が次の年の種子供給源になって土中在庫が増え、数年単位で難しくなります。
意外に見落とされやすいのが、ホタルイ類の葉齢進展のズレです。
宮城県の解説では、ノビエとイヌホタルイは発生から2葉期頃までの進展がほとんど同じだが、3葉期以降はイヌホタルイがノビエに先行して葉齢が進む、とされています。
「ノビエ基準のつもりで散布したら、ホタルイ側は進みすぎていた」というズレが起きやすいので、葉齢の見方を“ホタルイ側でも確認する”癖が、結果的に安上がりになります。
「効くはずの一発処理でホタルイだけ残る」という相談は、いまや珍しくありません。
公的解説でも、宮城県では本州で早い段階からSU抵抗性生物型が確認され、さらに新規ALS阻害剤に対しても抵抗性を示す“ALS阻害剤交差抵抗性”の個体群が各地で確認されている、と注意喚起されています。
ここが現場判断の核心で、登録上はホタルイに効果があっても、有効成分がALS阻害剤の場合は効果が期待できないことがある、と明記されています。
つまり「銘柄名で覚える」より「成分系統で考える」ほうが、残草時のリカバリーが速くなります。
残草の原因は抵抗性だけではなく、漏水や均平不足などで薬剤の効きが十分に発揮できずに残る事例も多い、と同じ資料で述べられています。
そのため、多発ほ場では“基本的な使用方法の再確認”が必要、というのは精神論ではなく、抵抗性と施工不良が混ざると原因特定が難しくなるからです。
もし抵抗性対策成分を含む剤を使っても残草した場合、使用剤にALS阻害剤が含まれていると、SU抵抗性・ALS交差抵抗性の個体群が残った可能性が高いので、ALS阻害剤を含む中後期剤を避け、ベンタゾン剤等で追加防除し、翌年もALS阻害剤以外を基幹にした体系を組む、という次手が提示されています。
ここまでを踏まえた実務メモ(例)です。
雑草ホタルイは湛水条件で発芽が良好で、しかも出芽深度が浅い(1〜2cmが多い)ため、「代かきで表層を均一にして、薬剤の処理層を切らさない」ことが効きやすい雑草でもあります。
逆に言えば、均平不足で水深がバラつく、漏水で処理層が薄くなる、風や水の動きで薬剤が偏る、といった条件では“薬が悪いわけではない残草”が起きやすいと考えるのが妥当です。
宮城県の資料でも、漏水管理や均平代かきが不十分なほ場等で、除草剤の効果を十分に発揮できずに残草する事例が多い、としています。
この指摘は、抵抗性が疑われる今こそ重要で、管理不良を残したまま成分だけ替えても結果が安定しにくいからです。
現場でのチェック項目を、入れ子にせずに整理します。
また、イヌホタルイは密度が高い水田ほど斑点米被害で落等する確率が高まることが知られている、とされており、「少し残っても収量に直結しないから放置」は品質面でのリスクを増やし得ます。
防除の優先度を決める際は、収量だけでなく品質(等級)も含めて判断するのが合理的です。
雑草ホタルイ(イヌホタルイを含む)は、斑点米被害の原因となるカスミカメムシ類の中間宿主となる、と宮城県の資料で明記されています。
しかも、イヌホタルイの発生密度が高い水田ほど斑点米被害により落等する確率が高まることが知られている、という踏み込んだ指摘があります。
この視点が“検索上位の定番(見分け方・剤)”とは少し違う強みで、雑草対策を「収量確保」から「品質保全」へ拡張できるからです。
たとえば、畦際や水口まわりに少量残ったホタルイを「端だからOK」としがちですが、虫の温床という意味では“端こそ効く”可能性があります。
品質狙いの現場アクション例です。
最後に、ホタルイ類は種子寿命が長いので、単年の勝負ではなく“土中在庫を減らす長期戦”が前提になります。
そのうえで、見分け(クログワイ等との混同回避)→水管理・代かき→成分系統(抵抗性前提)の順に詰めると、同じ労力でも結果が安定しやすくなります。
見分け方(クログワイ等との違い)の要点:https://www.syngenta.co.jp/cp/articles/20200401_07
公的な「ホタルイ(イヌホタルイ等)」の生態・抵抗性・注意点:雑草解説(稲作) - 宮城県公式ウェブサイト
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