馬油と畜産副産物と油脂精製と飼料

畜産副産物としての馬油を、原料の出どころから精製、衛生・安全、販路づくりまで農業従事者の目線で整理します。副産物の価値を上げるには、現場で何を押さえるべきでしょうか?

馬油と畜産副産物

馬油と畜産副産物:現場で押さえる要点
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副産物の位置づけ

馬油は「食用馬の脂肪」を活かす発想が出発点。廃棄コストを価値に変える設計が重要。

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品質は工程で決まる

鮮度管理→加熱→ろ過→不純物除去など、油脂精製の基本が品質差を作る。

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出口を複線化

化粧品・石けん等の用途だけでなく、レンダリング由来の油脂・固形分の使い分けも検討。

馬油の畜産副産物としての原料と価値


畜産の現場で「副産物」という言葉は、単に“余りもの”を指すのではなく、処理・流通・加工の設計次第で収益源にもコスト要因にもなる資源を意味します。
馬油は、その典型例です。馬油メーカーの説明でも、馬油は「食用馬の副産物」を原料にしていることが明記されています。つまり、馬油は“馬油のために馬を育てる”のではなく、“食肉工程で生じる脂肪を無駄にしない”ところから始まります。
農業・畜産の立場で重要なのは、ここにある「ストーリーの強さ」です。副産物活用は、循環型・もったいない・資源の有効利用といった文脈で説明しやすく、消費者の理解も得やすい傾向があります(販促・広報の武器になります)。


加えて馬油は、用途が化粧品・石けん等に広がりやすい油脂で、同じ脂肪でも“出口の単価差”が出やすい点が特徴です(売り先の設計が利益を左右します)。


ここで一つ、意外に見落とされがちな論点があります。馬油の価値は「脂肪が採れるか」だけでなく、「どの部位の脂肪か」「どう分別できるか」でも変わります。たとえば、製造工程では静置によって固液分離し、層ごとに性状の違う馬油原料が得られるという説明があります。


参考)馬油について

畜産側が理解しておくと、加工側との会話で“原料の揃え方”を提案でき、結果として買い取り条件や継続取引に影響し得ます。


馬油の油脂精製と鮮度管理の要点

馬油を「畜産副産物」から「商品」に変える最大の分かれ目は、精製と品質管理です。
具体的には、原料脂肪には酸化した脂肪油や血液成分などの不純物が混じり得るため、どれだけ不純物を除去して純度を高めるかが品質差になる、という趣旨が馬油メーカーの解説に示されています。
工程のイメージを掴むには、次の流れで整理すると現場に落ちます。


  • 原料脂肪を鮮度の良い状態で冷凍保管する(酸化・劣化を抑える)​
  • 加熱して溶かし、肉カス等を除去し、ろ過して一次精製を行う​
  • 真空タンク内で蒸気のみを用いて不純物を再除去する(最終精製)​
  • 静置して固液分離させ、層ごとに取り分ける(性状が分かれる)​

畜産側の実務で刺さるポイントは「原料の鮮度は加工側任せにしない」ことです。油脂は酸化が進むと臭い・色・使用感に影響し、最終製品のクレーム原因になりやすいからです。


結果として、同じ“脂肪”でも、回収〜保管〜搬送の温度管理と時間管理ができているロットは、加工側から見て価値が上がります。


もう一つの意外な点は、「完成までに時間をかける」設計です。静置を長期間行い自然分離させる、という説明があり、短期で回転させるだけでは出せない品質を狙っていることが読み取れます。

農業従事者が加工参入を考える場合、“すぐ売れる”事業ではなく、在庫・タンク・保管スペース(資金繰り)まで含めた設計が必要になります。


馬油のレンダリングと畜産副産物の循環利用

馬油単体だけを見てしまうと、「化粧品向けの特殊な油」と捉えがちです。けれど畜産副産物の全体像で見ると、油脂はレンダリング(脂肪を溶かして精製し油脂にする工程)という大きな枠組みの一部に位置づきます。
レンダリングでは、肉を除いた“直接食用にできない脂肪”を熱で溶かして油脂にし、さらに油脂生産後の絞りかす(肉粉)がペットフード原料などに利用できる、と説明されています。


この枠組みを理解しておくと、畜産経営での判断が変わります。副産物は「油脂だけ」ではなく、油脂と固形分(蛋白・カルシウム等)に分かれ、油脂は工業用や飼料に、固形分は肥料や飼料に回る、と整理されています。


つまり、現場の副産物は“単品勝負”よりも「分別・処理・用途の組み合わせ」で収益化する設計が基本です。


またレンダリングの説明では、原料の鮮度を維持して運搬し、工場ではその日のうちにレンダリングする工程をとる、と明記されています。


これは畜産側にとって、回収頻度・保管条件・搬送の契約条件(温度帯・時間)を“価格交渉の論点”にできることを意味します。副産物ビジネスは、品質規格だけでなく物流設計が利益を左右します。


参考:レンダリングの定義、油脂・肉粉・固形分の用途(飼料・肥料・工業用など)の全体像
一般社団法人 日本畜産副産物協会:レンダリングとは

馬油の安全性と畜産副産物の分別ルール

畜産副産物は、用途が広い分だけ「分別のルール」が実務の肝になります。特に飼料・肥料・工業用・食用・化粧品用で要求が変わり、混入リスクがあると販路が途切れます。
公的資料では、馬由来の副産物(馬原料)について、馬由来以外の動物質原料と分別されていること、工程で混入しないよう分離されていること、といった考え方が示されています。
農業従事者の現場感としては、「衛生」よりも先に「混ざらない運用」を仕組みにするのが効果的です。混ざらない運用とは、たとえば以下のような設計です。


  • 収集容器を用途別・畜種別に固定する(ラベル運用ではなく物理的分離)
  • 搬送業者と温度帯・回収頻度を契約化する(口約束を減らす)
  • 置き場(保管場所)を“人の動線”から切り離す(作業ミスを減らす)

さらに、加工側・販売側と長く取引するなら「説明できる状態」を作ることが大切です。どの処理工程から出た副産物か、いつ回収したか、どう保管したかが言語化できると、販路が安定しやすくなります。


畜産副産物は“品質=成分”だけでなく、“品質=履歴”の側面が強いからです。


参考:馬由来副産物(馬原料)の分別・混入防止の考え方(飼料関係の基準解説)
農林水産省:飼料関係資料(馬原料の分別等)

馬油の畜産副産物を活かす独自視点:農場の「におい設計」

検索上位の解説は、原料・精製・用途の説明が中心になりがちです。けれど、現場で本当に効いてくるのは「におい(臭気)をどう管理し、どう言語化するか」です。副産物は“腐敗”と紙一重なので、臭気対策の成否が取引継続を左右します。
レンダリングの説明でも、未利用資源は生ものなので腐敗するため適切に処理することが極めて重要、という趣旨が明確に述べられています。


ここでの独自視点は、臭気対策を「クレーム回避」ではなく「付加価値」に変換する発想です。たとえば馬油のような油脂原料は、酸化・混入・保管温度で匂い立ちが変わり、その差が“精製コスト”として加工側に乗ります。


つまり、農場側で臭気要因(時間・温度・異物)を潰せば、加工側の歩留まりや精製負担が減り、結果として“原料としての信用”が積み上がります。


実務に落とすなら、次のように管理ポイントを「見える化」すると強いです。


  • ⏱️ 回収までの時間:脂肪発生→冷却→回収の標準時間を決める。
  • 🌡️ 温度帯:冷凍・冷蔵・常温のどれかを用途ごとに固定する(例外運用を作らない)。
  • 🧽 異物:毛・敷料・土・洗浄剤が混ざると、匂いと精製難度が上がるため、“混入しない作業手順”を最優先にする。
  • 📝 記録:ロット番号が難しければ、日付・回収時刻・保管条件だけでも記録し、説明可能性を上げる。

馬油を含む畜産副産物のビジネスは、派手な設備投資よりも「混ざらない」「腐らせない」「説明できる」の3点を積み上げた現場が最後に勝ちます。


そしてこの3点は、農場の作業標準化(誰がやっても同じ)に落とし込めるため、規模の大小に関係なく取り組めます。レンダリングが畜産・食肉加工業を支える重要産業である、という説明にも通じる考え方です。




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