凍霜害は、夜間〜早朝の放射冷却で作物体が冷え込み、凍害と霜害が同時に起きる気象災害です。岐阜県の指導要点でも、放射冷却で低温にさらされて発生すると整理されています。
防霜ファン(送風法)は、上空の比較的暖かい空気を下方へ吹き下ろして空気を撹拌し、園地内の気温を上げて降霜を回避する考え方です。岐阜県資料では「上空の暖かい空気を下方に吹き降ろすことで空気を撹拌し、園地内の気温を高める」と明記されています。
この方式のキモは「逆転層」です。降霜時は地上6m前後が株面より4〜5℃高い逆転が起きやすく、逆転が強いほど防霜ファンの効果が出やすい、と岐阜県資料に書かれています。
一方、万能ではありません。現時点の防霜方法は「−3℃前後までしか期待できない」という整理があり、強い冷え込みでは送風だけで守り切れない夜がある点は、運用計画に必ず織り込むべきです。
防霜ファンは「高い位置の暖気を使う機械」なので、設置高さの考え方は逆転層の位置に合わせるのが基本になります。一般論としては地上5〜10m程度に設置して暖気と地表の冷気を混合する、と整理されています。
現場では、機械そのものの仕様も確認が必要です。例えばJA全農の防霜ファンシステム資料では「設置高さ:地上5m以上(高所取付用)」など、運用上の前提が示されています。
また、単に立てれば効くわけではなく、「風の通り道」を作る発想が重要です。岐阜県資料では、冷気の流れを遮る防風ネット等があると風上側で被害がひどくなるため、ネットを巻き上げたり下枝を払う、といった“冷気の交通整理”が予防対策として挙げられています。
ここが意外な落とし穴で、設備投資より先に「冷気が逃げる道」を確保した方が、同じ防霜ファンでも効きが安定する園地があります。防霜ファンの守備範囲を議論する前に、まず霜溜まり(冷気が溜まる低地)や遮蔽物の位置を見直すのが堅実です。
サーモスタットは「何度で回すか」を決める最後のツメで、ここがズレると凍霜害防除機は性能を出し切れません。福島県の技術対策資料では、防霜ファンを制御するサーモスタットは地上1.5mに設置し、気温2〜3℃で作動するよう設定する、という注意点が示されています。
ただし、作物・生育ステージで危険温度が変わるため、画一設定は危険です。岩手県資料では、サーモスタットを地上1.5mに設置し、設定温度は+2℃を基本としつつ、危険温度が高い時期や樹種によって+4〜5℃に高めることもある、という運用が紹介されています。
茶のように発芽・開葉が進むとリスクが跳ねる作物は、より細かい「運転表」を持つのが実務的です。岐阜県資料では、防霜ファン稼働の目安として、萌芽期前後ON3℃→1〜2葉期ON4℃→3〜5葉期ON5℃、OFFはそれぞれ5℃・6℃・7℃、という表が載っています。
同様の考え方は香川県資料にもあり、防霜ファン設置園は「萌芽期前後は3℃、新芽生育期は4〜5℃に設定」と具体的に示されています。
現場でありがちな失敗は、温度計(センサー)の設置位置が「実際に芽が冷える場所」とズレることです。資料でも地上1.5mなど設置位置が指定されているのは、測る高さが変われば“同じ2℃”でも意味が変わるからで、園地内の冷えムラがあるほどセンサー位置の妥当性が重要になります。
凍霜害防除機は、夜中に「回らない」「首振りしない」「温度が拾えない」で初めて故障に気づくと致命傷になりやすい設備です。岐阜県資料でも、防霜ファンやスプリンクラー等は事前に稼働点検を行っておく、と明確に書かれています。
送風法だけで守り切れない夜に備え、併用策を持つのが現実的です。岐阜県資料では直接的な防止対策として、送風法・散水氷結法・燃焼法等を用いて圃場内気温が危険温度まで下がらないよう努める、という方針が示されています。
散水氷結法は「水が氷になる時に放出する熱(潜熱)で0℃前後に保温する」考え方で、理屈を理解していると運転判断がブレません。岐阜県資料では、水滴が氷結する際の放出熱で細胞内凍結を抑制し、0℃前後に保温する方法、と説明されています。
さらに茶では、水量の目安まで踏み込んでおり、必要水量2.6〜4.0mm/hr(10a当たり3〜4t/hr)程度、散水時間は6時間程度、総水量18〜24t/10a程度が必要とされています。水源・配管能力が足りない園地だと「途中で水が尽きる」事故が起きるので、机上計算ではなく“連続で出し続けられるか”を先に確認すべきです。
被覆も有効ですが、やり方で差が出ます。香川県資料では、直接被覆は効果が劣るのでトンネル掛け等の間接被覆を推奨し、樹冠面から被覆位置まで40cm以上など、具体条件が示されています。
燃焼法は、熱で守る一方で火気管理が必須です。岐阜県資料では、燃焼法は園地内で資材を燃焼させ、その熱を利用して被害を防ぐ方法と説明し、固形燃料・灯油・重油・市販資材などが例示されています。
「凍霜害防除機=回しっぱなし」だと電気代が重く、近年は運転制御の工夫が現場課題になっています。農研機構は、自然風が強いと送風による攪拌効果が小さく送風の必要性が低い、という前提から、樹冠面付近とファン設置高の気温差で風の強さを推定して稼働を抑制する“気温差制御”を紹介しています。
この技術では、樹冠面の気温が低いことに加えて「2つの温度センサの気温差が大きい時に稼働」という条件を使い、従来(気温だけでON/OFF)よりムダ運転を減らします。農研機構の試験結果として、設定を気温差1.5〜2.0℃以上、樹冠面3.0℃以下とすることで電気料金削減ができ、CO2排出量は従来制御比で最大6割削減された、とされています。
ここをさらに現場寄りに言い換えると、「逆転が弱い夜に回しても効きにくい」ので、逆転の強さを見ながら回すのが合理的、ということです。岐阜県資料でも逆転度が強いほど効果を発揮すると整理されており、気温差制御はその理屈を自動化する方向性だと理解できます。
独自視点として、凍霜害対策は“当夜の防除”だけでなく、翌日の品質・作業まで含めて設計すると事故が減ります。岐阜県資料には、降霜のあった朝は日の出前に散水で霜を溶かす、またはべたがけ資材で覆うなどして直射日光を当てない、とあり、凍結→急な日射で傷む二次被害を避ける発想が含まれています。
つまり、夜は防霜ファンで守り、朝は“解凍のさせ方”まで作業手順に入れると、凍霜害防除機の投資効果が一段上がります。被害後の管理(せん除・病害虫防除・結実安定等)も岐阜県資料に整理されているので、当夜を越えた後の動きも事前に決めておくと判断が速くなります。
有用:国の技術指導通知(気象災害時の技術指導)がまとまっている(全作目の“その時期の注意”の一次情報)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/gijyutu_sido.html