シスプラチンによる悪心・嘔吐は、抗がん薬投与開始後24時間以内に起こる「急性期」と、24~120時間(2~5日目)に続く「遅発期」に分けて整理されます。
ガイドライン上も「全期間」は投与開始から5日間程度として扱われる一方、120時間(6日目)以降にも持続する“超遅発期”が報告され、油断しやすい点が注意事項になっています。
国立がん研究センターの解説では、標準的な制吐療法でも急性期は抑えやすい一方、遅発期(2~5日目)で抑制率が下がることが課題として示されています。
吐き気の時期を知っておくメリットは、「症状が出てから我慢する」のではなく、出やすい期間に合わせて先回りで対策を組み立てられることです。
参考)診療ガイドライン
たとえば、投与当日に落ち着いていても、2~5日目に食事量が急に落ちるケースは珍しくありません。
農作業や現場仕事のように体力を使う人ほど、遅発期の脱水・低栄養がダメージになりやすいので、「2~5日目は休みやすい日程にする」など生活設計と結びつけて考えるのが現実的です。
関連の日本語参考リンク(急性期・遅発期・超遅発期という“時期の定義”の根拠に便利)
日本がんサポーティブケア学会:制吐療法ガイドライン(悪心・嘔吐の時期分類)
シスプラチンは腎毒性がよく知られており、腎機能評価には血清クレアチニンが一般的に使われ、特に初回サイクルでは「1週間以内に確認することが望ましい」とする手引きがあります。
また、腎障害の現場では「投与3~4日後の血清クレアチニンの50%以上の増加」を指標にすることが多い、という整理もされています。
別の解説では「毒性は投与後10日目に発症」など、時間差で表に出る特徴(クレアチニン上昇、GFR低下、マグネシウム・カリウム低下)がまとめられています。
意外に見落とされがちなのは、「腎障害は症状だけでは気づきにくい」点です。
参考)https://www.haigan.gr.jp/wp-content/uploads/2024/06/1022.pdf
尿量が保たれていても検査値が悪化することがあるため、自己判断で“いつも通り”の水分量・作業量を続けるのは危険になり得ます。
研究ベースでは、血清クレアチニンより早く動く可能性のある指標として尿中L-FABPを投与後2時間・6時間・1~7日などで追跡し、クレアチニンが3日目・7日目に差が出たという報告も紹介されています(早期検出の発想)。
参考)尿中L-FABPはシスプラチン誘発性急性腎障害の予測因子|s…
関連の日本語参考リンク(“1週間以内の腎機能確認”“マグネシウム補充”など実務寄り)
肺癌診療ガイドライン系資料:シスプラチン投与のショートハイドレーション手引き(腎機能確認の時期、Mg補充)
末梢神経障害(しびれ)は、生活の質を長く下げやすい副作用で、重症化すると回復が難しい場合があるとされています。
資料によっては、発症時期として「投与3~5日後から起こる」と説明されており、かなり早い段階から違和感が出る可能性があります。
一方で、神経障害は累積投与量や併用薬で目立ち方が変わるため、「初回から必ず出る」というより「気づいた時点で申告して悪化を防ぐ」性格の問題として捉えるのが現実的です。
しびれの厄介さは、“痛み”ほど警報が大きくないのに、転倒・道具の取り落とし・細かな作業ミスにつながる点です。
参考)https://www.scchr.jp/cms/wp-content/uploads/2016/02/masshousinkei8.pdf
農業従事者の場合、剪定ばさみ・刈払機・運搬など、手指感覚と足の安定が安全に直結するため、しびれが出た時期(投与何日後、何コース目か)をメモして医療者に共有すると対策が立てやすくなります。
症状が軽いうちに相談できれば、支持療法や作業計画の調整など“悪化させない”方向に舵を切りやすいのがポイントです。
関連の日本語参考リンク(末梢神経障害の注意点を患者向けに整理)
静岡がんセンター:お薬別の末梢神経障害(発症時期の目安など)
シスプラチンの聴覚への影響は、高音域から変化が出ることがあり、会話に使われにくい周波数帯だと自覚しにくい、という臨床的な注意点が示されています。
また、累積投与量が増えるにつれて高音障害型の感音難聴が進行した、という経過観察の報告もあり、「時期」というより“回数・総量とともに進む”タイプの副作用として理解するとズレが減ります。
一般向け解説でも、治療から数カ月~数年後も影響が残り得るという趣旨が述べられており、短期だけでなく長期目線でのフォローが重要です。
意外な落とし穴は、「本人は聞こえているつもり」でも、警告音・虫の音・機械の異音など高音成分の情報が抜けて安全リスクが上がることです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/64/6/64_331/_pdf/-char/ja
農業現場では、バック音・周囲の呼びかけ・設備の異常音など、聞き取りの微差が事故防止に関係するため、耳鳴りや聞こえの違和感が出た“時期”を具体的に残すのが有効です。
早期から純音聴力検査や必要な評価につなげることで、作業環境の工夫(騒音回避、合図の見える化など)も検討しやすくなります。
関連の日本語参考リンク(高音域からの変化・経過観察の具体例)
耳鼻咽喉科系報告:シスプラチン累積投与と高音域聴力変化の経過
吐き気は急性期(24時間以内)と遅発期(2~5日目)があり、全期間として投与開始から約5日間を警戒する整理が基本になります。
腎機能は初回サイクルで1週間以内の確認が望ましいとされ、数日~10日前後で検査値が動く可能性も踏まえると、「投与後7~14日」を体調・受診・採血の山として置く考え方が作れます。
さらに、骨髄抑制は治療開始後7~14日頃に血球が最も少なくなる(nadirが来る)という一般的な説明があり、感染対策を強める期間の目安になります。
この3つ(2~5日、7~14日、累積で進むもの)を“作業計画”に落とし込むと、体感的にかなり事故と消耗を減らせます。
参考)https://www.keiju.co.jp/wp/wp-content/uploads/20240606_cancerboard.pdf
例として、投与後2~5日は吐き気・食欲低下で脱水になりやすいので、重い収穫・長距離運搬・炎天下作業を避け、短時間で終わる点検系に寄せる、といった組み替えが合理的です。
投与後7~14日は感染リスクが上がり得るため、人混み・粉じん作業・けがをしやすい作業(刃物、トゲの多い作物の処理)を減らし、手袋・マスク・手洗いなど基本策を強化する、という“農業版の副作用カレンダー”が組めます。
実務で役立つチェック項目(メモして診察時に提示しやすい)
・投与日から数えて「何日目」に吐き気が強いか(0~1日目か、2~5日目か、6日目以降も続くか)。
・投与後「3~4日目」「7日目」あたりで、採血(クレアチニン等)をいつ確認したか。
参考)薬剤師のためのBasic Evidence(腎障害編:シスプ…
・しびれや耳鳴りが「初回から」か「何コース目から」か、そして作業上の困りごと(落とす、つまずく、警告音に気づかない)。
必要に応じて、悪心・嘔吐の時期分類の根拠(急性期24時間以内/遅発期24~120時間)を扱う資料として、以下の論文PDFも参照になります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsot/25/3/25_109/_pdf
悪心・嘔吐の急性期・遅発期の分類に触れた日本語論文PDF