電動の散粒機は、粒剤をインペラー(回転体)で飛ばす方式が多く、散布幅は機種仕様として「最大○m」と書かれていても、実際は作業状況で変動します。たとえば電動散粒機の取扱説明書でも、散布能力は「散布幅7m(最大)」としつつ、作業状況で変わる旨が明記されています。つまり、カタログ上の最大散布幅だけで優劣を付けると失敗しやすいです。
丸山製作所「電動散粒機」取扱説明書PDF(主要諸元・散布幅・散布量調節・散布方向調節がまとまっている)
散布ムラを減らす鍵は「散布量調節ツマミ(開度)」と歩行速度のセット運用です。取扱説明書では、散布量は調節ツマミでシャッター開度を変え、作物や歩行速度に合わせて調節するよう書かれています。ここで重要なのは、散布量を増やしたいときに“開度だけ”を上げないことです。粒剤・肥料は粒径や比重が違い、同じ開度でも落下量が変わります。現場では「まず閉じ側から少しずつ開け、一定速度で歩き、落ち方を目視で確認→必要なら速度と開度をセットで詰める」が結果的に最短です。
片側散布ができる機種は、畦際や隣接圃場への飛散を抑えるのに効きます。説明書には、回転方向切換スイッチと散布方向切換レバーの組み合わせで正面散布・左側散布・右側散布を切り替える手順が示されています。畦畔側だけを狙いたいとき、用水路沿いで外へ飛ばしたくないとき、片側散布の有無は作業品質に直結します。
タンク容量は、単に「多いほど良い」ではありません。背負い型や手持ち型では、満タン重量がそのまま疲労になり、結果的に歩行速度が落ちて散布ムラが増えることがあります。小規模圃場やスポット散布が多い人ほど、タンク容量を欲張らないほうが総合効率が上がるケースが多いです。
一方で、運搬車に載せて散布するタイプは、容量が作業の段取りに直結します。例として「撒きざんまい」はホッパー容量60Lを特徴として挙げ、補充回数が減ることで時短になる旨を示しています。さらに、散布範囲が約5m、回転インペラーの速度をダイヤルで無段階調整できる、といった運用イメージも示されています。面積が大きい圃場や、肥料袋の往復がボトルネックになっている現場では、こうした“大容量+運搬一体”の考え方が効きます。
和コーポレーション「電動散布機 撒きざんまい」特長(ホッパー容量60L・散布範囲・無段階調整・バッテリー仕様)
また、乾電池式の電動散粒機でも「軽量・取り回し」で作業効率を稼げます。電動散粒機(丸山の取扱説明書例)ではタンク容量11.5L、乾電池2本または4本で運用でき、連続使用時間の目安も記載されています。タンク容量と電源構成は一体で考えるべきで、「補充が少ない=正義」ではなく、「最後まで同じ散布品質を保てるか」が判断軸になります。
電源は大きく「乾電池式」と「充電バッテリー式」に分かれ、ここで機械の性格が変わります。乾電池式は、予備電池さえ持てば現場復帰が早く、機体が軽い利点があります。取扱説明書の例では、単一乾電池2本または4本で使用でき、広い範囲なら4本で使用する、といった運用の指針が書かれています。さらに乾電池の容量が減ると散布距離・散布能力が低下するので早めに交換するよう注意があり、「電源が弱ると散布品質が落ちる」点がはっきりしています。ここが電動散粒機の落とし穴で、散布ムラの原因が“設定”ではなく“電源の劣化”だった、ということが普通に起こります。
充電バッテリー式(運搬車一体の散布機など)は、長時間運用と出力安定を狙いやすい反面、バッテリーの仕様と寿命設計を確認したいところです。例えば「撒きざんまい」ではリン酸鉄リチウムバッテリー採用、容量48,000mAh/153Wh、充電時間約4時間、充電回数約1000回など具体値が示されています。さらに満充電で連続2時間の作業、1反分はおよそ15分(計測値)といった、作業の目安も提示されています。ここまで情報が揃うと、導入後の段取り(何枚回れるか、昼休憩で追充電が必要か)が逆算できます。
意外に見落とされるのが「粒の状態による詰まり」と電源の相性です。詰まりが出るとモーター負荷が増え、電圧降下→回転低下→飛距離低下→ムラ増加、という連鎖が起こりやすいです。電源の強さだけでなく、詰まりにくい投入と、詰まったときの解除手順(目詰まり防止ハンドル等)の有無までセットで見たほうが、現場トラブルが減ります。
散粒機は「使ったら終わり」ではなく、使った直後の処理が寿命と安全を決めます。取扱説明書では、作業後にタンク残りの粒剤を元容器へ戻し、幼児や無用な人の手の届かない所へ保管すること、本機に付着した汚れは固く絞った濡れ雑巾で拭き取り、丸洗いしないことが示されています。粒剤の粉と湿気は固着の原因になり、インペラー周辺に溜まると次回の回転ムラや異音につながります。
保管の要点は「電池を抜く」「水分の多い場所を避ける」「水を直接かけない」です。説明書では、保管時は必ず乾電池を取り出すよう明記され、雨水のかかる場所や水分の多い場所は故障原因になるとされています。さらに清掃時に直接水をかけないことも繰り返し注意されています。電装部がある以上、これは基本ですが、忙しい時期ほど省略されがちなので、作業終盤の“ルーティン化”が重要です。
もう一つのポイントは「分解清掃の難易度」です。説明書では、インペラー上側やアンダーカバー部の汚れがひどい場合、付属L型レンチでセットスクリューを緩めてインペラーを外し、汚れを拭き取って再組付けする手順が載っています。ここまで具体的に手順が示されている機種は、現場で“詰まりがち・汚れがち”な運用を想定しているとも読めます。購入時は、付属工具や、部品供給年限(製造打ち切り後9年など)も含めて「長く使える設計か」を見ておくと後悔が減ります。
検索上位の記事は「おすすめ機種」「価格」「性能比較」に寄りやすい一方で、現場で揉めやすいのは“飛散”です。特に住宅が近い圃場では、粒剤でも風で流れ、隣接地・道路・洗濯物などへの影響が問題になります。自治体の注意喚起として、農薬散布は無風または風が弱いときに行い、風向きやノズルの向きに注意し、飛散防止に最大限配慮するよう求める情報が公開されています。これは動力噴霧だけでなく、粒剤散布でも同じ考え方で、散粒機の片側散布機能や、散布方向調節の使い方が“近隣対策の装備”になります。
広島市:農薬散布の飛散防止(無風・風向き・ノズルの向き等の注意点)
意外な実務ポイントとして、「最大散布幅を出そうとしない」ほうがクレームを減らせます。最大飛距離を狙う設定は、粒が浮いて横へ流れやすく、畦際で外に出る確率が上がります。散布幅は“少し狭め”に設定し、歩行ラインを増やして重ね幅を管理したほうが、外へ飛ばさず、結果的に均一になりやすいです。これは作業時間が増えるように見えて、飛散トラブル対応や再散布の手戻りを考えると総コストが下がることがあります。
最後に、散布前の段取りとして「周辺への一言」も効きます。農繁期は全員が忙しく、散布日程が読めないのは普通ですが、住宅が近い場合は「風が弱い時間に短時間で終える」「散布方向を内側へ寄せる」「粒剤形状を選ぶ」などの説明ができると、現場の心理的コストが下がります。電動散粒機の価値は“速さ”だけではなく、“コントロールできる散布”にあります。