リセッション(景気後退)は「経済活動が広い範囲で低下する期間」を指す言い方で、国や機関によって判定の仕方が異なる点が出発点です。
日本の実務では、内閣府が作成・公表する景気動向指数が参照され、DIは「改善している指標の割合=波及度」を見るための指標とされています。
DI一致指数は、景気拡張局面では50%を上回り、後退局面では下回る傾向があると内閣府の解説に明記されています。
ここで重要なのは、「リセッションはいつ始まったか」は“後から”確定されやすい、という性質です。
参考)World Economic Outlook, Octobe…
内閣府の説明でも、景気転換点(山・谷)の判定には通常のDIとは別の「ヒストリカルDI」を用いるとされ、月々の数字だけで即断しない設計になっています。
つまり、農業者の意思決定(肥料発注、借入、設備投資)では「宣言を待つ」より、「兆候の組み合わせで備える」ほうが現実的です。
参考)https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ri/J0911.html
実務の読み替えとしては、次のように押さえるとブレにくくなります。
景気動向指数にはCIとDIがあり、CIは景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは景気の波及度を測る目的だと内閣府が整理しています。
農業で役立つのは、「売上が下がる前に、取引先や消費の弱さが広がっているか」をDIで見て、「弱さがどれくらい強いか」をCIで確認する、という役割分担です。
内閣府の解説では、CI一致指数が上昇していると拡張、低下していると後退で、景気転換点と概ね一致すると書かれています。
ただしCIは単月で不規則に動くため、移動平均で“ならして”基調を見るのが望ましい、という注意も明示されています。
農業の現場感に置くと、「単月の相場・単月の気温」だけで判断せず、「複数月のトレンド」で設備投資や資材発注のサイズを決めるのに近い考え方です。
DIについても、DIは“加速”ではなく“波及”を示す点に注意が必要だと説明されています。
この注意は農業で特に効きます。例えば、外食・観光が冷えた時に野菜の需要が落ちても、輸入原料や物流費の影響で資材価格がすぐ下がるとは限らないため、「需要の波及」と「コストの波及」を分けて扱う必要があるからです。
参考)第2節 足下での原油・物価高騰の影響と対応:農林水…
参考:景気動向指数のDI/CIの目的(波及度・量感)と見方
内閣府 経済社会総合研究所「景気動向指数の利用の手引」
リセッションが近づくと「需要が弱い→物価が落ち着く」と想像されがちですが、現実には原油・輸入・供給制約が絡むと“景気が弱いのにコストが高い”局面が起きます。
農林水産省も、原油・物価高騰が飼料・肥料・燃料などを通じて農業経営に影響すること、そして対応策(供給安定化や影響緩和)を講じてきたことを白書の節として整理しています。
白書側の記述では、肥料原料の国際価格上昇や調達困難が農業経営へ影響しうる状況になったこと、対策を講じたこと、そして「輸入依存構造の転換が課題」だと示されています。
この「構造の転換が課題」という一文は、リセッションの“いつ”よりも、景気が悪い局面で資材が供給・価格面でブレるリスクが残る、という現場の意思決定に直結します。
金利については、一般論として利上げ局面の後に景気が減速しやすいと言われますが、農業経営では「借入の更新」「設備投資の回収期間」「運転資金の厚み」が影響を受けやすいです。
参考)Recession: When Bad Times Prev…
景気指標を見て「売上が鈍る可能性」と「金利・返済負担の増減」を同時に点検し、投資は“全部やる/ゼロ”ではなく段階化(規模を分ける)すると事故が減ります。
農業向けチェック項目(景気×物価×金利を一枚で)
参考:原油・物価高騰が肥料・燃料などに与える影響と、供給安定化・影響緩和の考え方
農林水産省「原油・物価高騰の影響と対応」
「リセッション いつ」を知りたい時、現場で一番効くのは“受注が落ちる前のサイン”を複数拾うことです。
内閣府の景気動向指数は、生産・雇用など景気に敏感に反応する指標を統合して景気の現状把握と将来予測に資するために作成された、と目的がはっきり書かれています。
DIは「改善している指標の割合」で、景気の波及度を見るものです。
この性質を農業に落とすと、「卸売・小売・外食・物流・製造」など周辺産業の弱さが広がるほど、農産物の価格交渉力や数量がじわじわ効いてきます。
一方でDIは“勢い”ではないため、DIが戻っても売上が急回復する保証はなく、販路の回復にはタイムラグが出る点も押さえておくべきです。
農業者が見やすい“兆候の束”としては、次の組み合わせが実務向きです。
検索上位の「リセッション解説」は株価やGDP中心になりがちですが、農業従事者にとっての独自論点は「肥料・燃料・資材の在庫設計」が景気局面と噛み合わないことがある点です。
農林水産省の白書の記述でも、肥料原料の国際価格上昇や調達困難が影響しうること、対策で影響緩和を図ったこと、そして輸入依存構造の転換が課題であることが示されています。
これは、景気が後退して需要が弱くなっても、供給側の理由で資材価格が粘る(あるいは再上昇する)リスクが残る、という意味になります。
このズレを前提にすると、「リセッションはいつか」より、次の“経営の安全装置”を先に作るほうが成果が出やすいです。
さらに意外に効くのが、「在庫=安心」と決めつけない視点です。
保管スペース、品質劣化、資金拘束、そして急な作付け変更への弱さ(在庫が意思決定を縛る)まで含めると、景気後退局面では“在庫の柔軟性”が利益を守るケースがあります。
白書が指摘するように、輸入の安定化・多角化や依存構造の転換は時間がかかる課題なので、個々の経営では「調達の分散」と「使用量の最適化」を同時に走らせるのが現実的です。