中手玉ねぎの栽培と収穫時期の特徴保存に強い品種選び

中手玉ねぎは保存性と味のバランスが良く、家庭菜園でもプロの農家でも人気の作型です。収穫時期の見極めから、腐敗を防ぐための乾燥技術、そして長期保存に強い品種選びまで、成功の秘訣を知りたくありませんか?
中手玉ねぎ栽培の要点
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収穫時期の見極め

5月中旬~6月、葉が倒れてからが勝負

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追肥のデッドライン

3月上旬の「止め肥」遅れは腐敗の元

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乾燥とキュアリング

切り口からの菌侵入を防ぐ徹底乾燥

中手玉ねぎの栽培特徴と魅力

中手(なかて)玉ねぎは、早生種のみずみずしさと晩生種の高い貯蔵性を併せ持つ、非常にバランスの取れた作型です。主に5月中旬から6月上旬にかけて収穫され、適切に管理すれば年内から翌年2月頃までの長期保存が可能となるため、家庭菜園から営農栽培まで幅広く選ばれています。特に淡路島などの名産地では、この中手品種が主力として栽培され、吊り玉状態で乾燥・熟成されることで甘みとコクが増すことが知られています。早生種が終わった後の端境期を埋める重要な役割を果たし、市場価値も安定しているのが特徴です。

 

参考)収穫時期によって変わる玉ねぎの種類 ~早生・中生・晩生~

栽培における最大のメリットは、その環境適応能力の高さです。温暖地から寒冷地まで広い地域で栽培が可能であり、極早生種に比べてトウ立ち(抽苔)のリスクが比較的低い品種も多く開発されています。しかし、貯蔵性を最大限に引き出すためには、収穫後の「乾燥」プロセスや、栽培後半の「肥料切り」のタイミングが非常にシビアであるという側面も持っています。ただ漫然と育てるのではなく、収穫後の姿を見据えた計画的な管理こそが、中手玉ねぎ栽培の成功の鍵を握っています。

 

参考)玉ねぎの収穫時期は春!良い玉ねぎの見極め方や抑えておくべきポ…

中手玉ねぎの収穫時期と見極め

 

中手玉ねぎの収穫適期は、一般的に5月中旬から6月上旬とされていますが、最も重要なのはカレンダーの日付ではなく、玉ねぎ自身が発する「サイン」を見逃さないことです。収穫の合図となるのは、地上の葉がパタパタと倒れる「倒伏」現象です。新玉ねぎとして食べる早生種などでは倒伏直後や倒伏中に収穫することもありますが、貯蔵を目的とする中手種の場合、倒伏が全体の8割から9割に進むまでじっくり待つのが鉄則です。

 

参考)玉ねぎの収穫時期の見極め方は?収穫後の処理や干し方、保存方法…

倒伏してからも、玉ねぎは葉に残った養分を球(玉)へと転送し続け、最後の肥大充実を図ります。この期間をしっかりと確保することで、玉の締まりが良くなり、充実した重みのある玉ねぎに仕上がります。しかし、完全にすべての葉が枯れ果てるまで放置してしまうと、今度は雨による腐敗のリスクが高まるほか、根が再生してしまい貯蔵性が低下する「裂球」などの原因にもなります。

 

参考)たまねぎ

参考:JAひだ たまねぎ栽培における収穫適期の見極めと倒伏後の管理について
具体的な収穫の手順としては、晴天が2~3日続いた乾燥した日を選びます。土が湿っている状態で引き抜くと、土壌細菌が付着しやすく、その後の乾燥工程で腐敗菌が繁殖する原因となります。引き抜いた玉ねぎは、その場(畝の上)に2~3日並べて天日干しを行い、表面の水分を飛ばす予備乾燥を行います。この工程を丁寧に行うかどうかが、数ヶ月後の歩留まり(腐らずに残る割合)を決定づけると言っても過言ではありません。

 

長期保存を実現する吊り玉技術

中手玉ねぎの最大の武器である「貯蔵性」を活かすためには、「吊り玉」と呼ばれる保存方法が最も効果的です。これは、収穫後に乾燥させた玉ねぎを数個ずつ紐で縛り、雨の当たらない風通しの良い軒下などに吊るしておく伝統的な手法です。淡路島の「玉ねぎ小屋」に代表されるように、風通しを確保することで湿気を逃がし、カビや腐敗菌の繁殖を物理的に防ぐことができます。

吊り玉を行う際のポイントは、直射日光を避けること個体同士の接触を最小限にすることです。収穫直後の予備乾燥では日光に当てますが、保存期間中は直射日光が高温を引き起こし、玉ねぎの呼吸を過剰にして消耗させたり、日焼けによる傷み(煮え)を引き起こしたりします。必ず北側の軒下など、涼しく通気性の良い場所を選んでください。

また、長期保存においては「選別」も重要な技術です。首(茎の付け根)が太すぎるもの、分球しているもの、あるいは収穫時に傷がついたものは、どれだけ上手に吊るしても早期に腐敗し、隣接する健康な玉ねぎまで巻き込んで腐らせてしまいます。これらは「すぐ食べる用」として選別し、硬く締まって首が細く乾いている良品のみを長期保存に回すことが、結果として全体の廃棄率を下げることにつながります。

 

参考)タマネギ 貯蔵用 つり玉葱|種(タネ),球根,苗,資材,ガー…

失敗しない追肥の最終デッドライン

中手玉ねぎ栽培において、初心者が最も陥りやすい失敗の一つが「追肥(ついひ)のやりすぎ」と「時期の遅れ」です。大きく育てたいという親心から、収穫間際まで肥料を与えてしまうと、玉ねぎにとっては致命的な結果を招きます。中手品種の場合、「止め肥(最後の追肥)」のデッドラインは3月上旬と覚えておきましょう。

 

参考)玉ねぎ栽培の手引き【植え付け・追肥の時期から収穫まで】 | …

3月以降、玉ねぎは急速に肥大を始めますが、この時期に土壌に窒素分が過剰に残っていると、いわゆる「ブヨブヨ病」のような状態になりやすくなります。過剰な窒素は、玉ねぎの細胞を軟弱にし、水分過多の状態を作り出します。その結果、収穫後の腐敗が早まるだけでなく、貯蔵中にカビが生えやすくなったり、食味が水っぽくなったりする弊害が生じます。

 

参考:Yuime 玉ねぎ栽培で止め肥のタイミングを見極める重要性と過剰施肥のリスク
また、遅すぎる追肥は「青立ち」と呼ばれる現象の原因にもなります。これは、収穫時期になっても葉が青々としたままで倒伏せず、首部分が太く残ってしまう状態です。首が締まらない玉ねぎは、そこから雑菌が入りやすく、長期保存には全く向きません。立派な玉ねぎを作るためには、3月上旬にきっぱりと肥料を切り、その後は玉ねぎ自身が持つ力で肥大させる「スパルタ教育」が必要不可欠なのです。

 

参考)玉ねぎ栽培で止め肥のタイミングを見極めるにはどうすればいいの…

稼げる品種選びとネオアースの強み

中手玉ねぎと一口に言っても、品種によって貯蔵性や食味、栽培のしやすさは大きく異なります。営農的な視点、あるいは家庭菜園での確実性を重視する場合、現在の主流となっているのが「ネオアース」や「ターザン」といった品種です。

 

参考)【玉ねぎの品種一覧】初心者におすすめの種類や特徴を紹介

特に「ネオアース」は、中晩生に分類されることもありますが、その圧倒的な貯蔵能力でプロ農家から絶大な信頼を得ています。5月下旬から6月に収穫した後、翌年の2月頃まで、場合によっては3月まで萌芽(芽が出ること)せず、硬い玉の状態をキープできるのが最大の特徴です。皮の色ツヤも良く、市場に出荷する際の見栄えも優れています。病気にも比較的強いため、安定した収量を計算できる「稼げる品種」の代表格と言えるでしょう。

 

参考)https://www.hana-umi-store.com/shopdetail/000000000897/

一方、少し早めに収穫したい場合や、年内までの保存で十分という場合は「ターボ」などの品種も推奨されます。「ターボ」は肥大性が良く、病気に強いという特性を持っており、栽培の失敗が少ない品種です。自分の栽培目的が「とにかく長く保存して買わずに済ませたい」のか、「作りやすさを優先したい」のかによって、最適な品種を選定することが重要です。種苗メーカーのカタログスペックにある「貯蔵可能期間」を必ず確認し、自分の地域の気候(暖地か寒冷地か)に合った品種を選ぶことが、栽培成功の第一歩です。

品種名 収穫時期 貯蔵性 特徴
ネオアース 6月上中旬 ◎ (翌2月) 玉締まり良く、長期貯蔵の決定版。プロ御用達。
ターボ 5月下旬 ○ (年内) 病気に強く作りやすい。家庭菜園初心者にも推奨。
O・P黄 5月中下旬 △ (~9月) 昔ながらの品種。病気に強いが貯蔵性はやや劣る。
ソニック 5月早中旬 △ (~8月) 早生に近い中生。食味は良いが長期保存には不向き。

乾燥徹底で腐敗防ぐプロのキュアリング

検索上位の一般的な栽培ガイドでは「収穫したら根と葉を切って吊るす」と簡単に説明されがちですが、プロの領域ではここに決定的な技術介入が存在します。それが「キュアリング(治癒)」と、「葉と根を切るタイミング」の厳密な管理です。ここを間違えると、せっかく作った玉ねぎが保存中に次々と腐っていくことになります。

 

最も重要な「意外な」事実は、「収穫直後の生乾きの状態で、葉(首)を短く切りすぎてはいけない」ということです。収穫直後の玉ねぎは水分を多く含んでおり、すぐに首を切り落とすと、切断面から白い乳液状の水分が滲み出てきます。この水分は細菌の格好の栄養源となり、そこから軟腐病などの原因菌が侵入して、内部から腐敗を進行させます。

 

参考:農林水産省 北海道におけるタマネギのキュアリング処理と品質保持の実証
プロの技術としては、以下の手順でリスクを最小化します。

  1. 予備乾燥: 畑で抜いた後、葉付きのまま2~3日天日干しする。
  2. 徐々にカット: 葉が完全に枯れてカサカサになるまで待つか、あるいは首から10~15cmほど余裕を持って長く残してカットし、断面が乾燥して塞がるのを待つ。
  3. 本乾燥: 首の切り口が完全に乾いてコルク状に閉じてから、最終的な長さに調整する。

この「首の乾燥(ネックドライ)」こそが、玉ねぎという生きたカプセルを密封するための蓋の役割を果たします。特に湿度の高い日本の梅雨時期に収穫を迎える中手品種においては、この「切り口の処理」に対する意識の差が、半年後の在庫量に直結します。ただ干すだけでなく、「傷口を乾かして塞ぐ」という意識を持つことが、プロレベルの貯蔵を実現する秘訣です。

 

 


OP玉ねぎ苗(中手)50本