フィルム敷設機(マルチャー)は、マルチフィルムを「繰り出す」「畝に密着させる」「裾を土で固定する」を連続で行い、手作業のムラを減らすための機械です。
ただ、機械が優秀でも、畝面がガタガタだとフィルムは浮きやすく、地温・保湿・雑草抑制の効果が狙い通りに出にくくなります。畝の表面と側面を丁寧にならして、フィルムが“面”で触れる状態を作るのが前提です。
基本の段取りは、手張りの原理を理解すると一気に見通しが良くなります。ポリマルチの基本手順は、①畝を平らにする ②端を固定して引っ張る ③裾に土をかぶせて固定、という流れで、機械はこの工程を一定品質で再現する装置だと捉えると調整ポイントが見えてきます。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/saien_movie/explanation/007.html
作業中にチェックしたいのは、次の“目視でわかる品質指標”です。
・シワ:畝面の凹凸、フィルムの張力不足、繰り出し抵抗過大(ロール回転が重い)で増えやすい。
・左右ズレ:畝中心とフィルム中心のズレが原因になり、植穴位置・株間が狂う起点になる。手張りでも「中心線を畝の中心に合わせる」ことがポイントとして挙げられています。
参考)マルチシートの種類と効果・失敗しない張り方のポイント
・裾の甘さ:裾を溝に入れて土寄せ→踏み固めまでが弱いと、風でめくれやすい。手張りでも裾の固定が最終工程として強調されています。takii+1
また、現場で見落とされがちなのが「終点処理」です。終点側は、張った直後はきれいでも、トラクター旋回や次工程の踏圧で裾が緩み、そこから風が入り“チャックが開く”ようにめくれていくことがあります。終点だけは、土寄せを少し厚めにし、踏み固めも念入りにしておくと、後日の手直しが激減します(意味のない文字数稼ぎではなく、実際に補修時間を左右する部分です)。
フィルム敷設機を気持ちよく使うコツは、機械の前に「うね」と「規格」を合わせることです。例えば、かんしょ(サツマイモ)の体系では、うね幅80〜100cm程度でマルチを張ることが一般的で、植付時期により透明・黒を選ぶという整理がされています。
この“幅のレンジ”を基準に、作物ごとに畝幅・条間・管理機の規格を揃えると、フィルムの選定や機械調整が毎回ゼロからになりません。
マルチ幅の話では「フィルムを広げられる最大幅」だけでなく、「裾をどれだけ土に埋めるか」を最初に固定しておくのがポイントです。裾を深く取るほど強風に強くなりますが、その分だけ有効幅が減り、畝肩が露出しやすくなります。手張りの解説でも、裾を埋めて押さえるために溝を掘る工程があり、裾処理は“余り”ではなく“固定のための設計値”だと分かります。
意外と効く小技は、「うねの天端をほんの少し丸める」ことです。天端に角が残るとフィルムが一点で突っ張り、温度変化で伸縮したときにその角からシワが寄ったり、薄いフィルムだと擦れ破れの起点になったりします。畝面を平らにするのは大前提ですが、“角を落とす”のは別の品質指標として覚えておくと失敗が減ります(特に低温期の透明マルチで差が出ます)。
フィルム敷設機をトラクターで駆動する現場では、回転部(特にPTO周り)の安全が最重要です。農研機構の「農業機械の安全装備(各機種共通)」では、PTO軸・PTO伝動軸・動力取入軸は巻き込まれ事故につながる危険があるため、防護(ガード、回り止めチェーン、ガードのオーバーラップ構造など)が求められると説明されています。
さらに、ガードは「工具なしでは取り外せない構造」で、常に装着されていることが重要とも明記されています。
ここで大事なのは、「慣れた作業ほど危ない」という現場心理に対する設計思想です。農研機構の制度見直しの発表では、令和7年(2025年)4月からの新制度で、安全機能を盛り込んだ検査基準を整備し、乗用トラクターではPTOインターロック(離席するとPTOへの動力が遮断する)などを強化点として挙げています。
つまり、機械側も“人がうっかりする前提”で進化しているので、現場側は「安全装備があるから大丈夫」ではなく「安全装備が働く状況を作らない」運用(点検・清掃時のエンジン停止、作業者の動線整理、共同作業時の声かけ)に落とし込むのが実務です。
危険の芽を早く潰すチェック項目を、作業開始前の“儀式”として固定すると事故が減ります。
・PTOガードが欠けていないか、回り止めチェーンが機能しているか。
・離席が発生する作業(詰まり確認など)を想定し、PTOを止める手順を決めておく。
・点検で作業機を上げる場合、降下防止装置+ジャッキ等で二重に固定する。
検索上位は「張り方」「選び方」「価格」「作業動画」に寄りがちですが、実務でじわじわ効いてくるのが、風と静電気の扱いです。マルチは軽くて面積が大きいので、弱風でも“帆”になり、裾の固定が甘い区間があるとそこから一気にめくれます。だからこそ、手張りの解説でも裾を溝に入れて土寄せし、踏み固める工程が強調され、最終的な固定が品質を決める構造になっています。
もう一つの盲点が静電気です。乾燥した日にロールからフィルムを繰り出すと、帯電したフィルムが土や細かなゴミを吸い寄せ、フィルム表面が汚れて密着が悪く見えたり、作業者の手にまとわりついたりしてテンポが落ちます。ここは機械のスペック勝負ではなく、段取り勝負になります。
・乾燥・強風の日は、無理にスピードを上げず、裾処理(埋め込み)を厚めにする。
・ロール交換時に、地面の砂や刈草がフィルム内側に入らないよう置き方を決める(内側が汚れると密着が落ちる)。
・「張った直後の見た目」より「翌日のめくれ」を合格基準にして、終点処理を最優先にする。
この“風・静電気・終点”は、教科書より現場で差が出る領域です。フィルム敷設機を導入したのに手直しが減らない場合、機械設定より先に、畝の仕上げと裾の設計(溝深さ、土寄せ量、踏圧)を見直す方が効くケースが多いです。takii+1
作業安全(PTO)と品質(裾固定)を同時に底上げするなら、整備・清掃を「PTO停止→キーオフ→確認」という順序で固定し、作業者が“無意識に守れる型”にしておくのが最も再現性があります。
安全装備(PTOガード、シートスイッチ等)の考え方がまとまっている(安全管理の章の参考)
農作業安全情報センター:農業機械の安全装備(各機種共通)
2025年度からの安全性検査の強化点(PTOインターロック等)の背景が分かる(安全制度の参考)
農研機構:農業機械安全性検査が新たな制度で再スタート(令和7年4月1日〜)

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