牧草乾燥機とロールベールとサイレージ

牧草乾燥機を軸に、乾燥の目標や作業体系、ロールベールやサイレージの失敗要因まで整理し、導入判断と事故防止に直結するポイントを深掘りします。乾燥の「ちょうどいい」を決められていますか?

牧草乾燥機と牧草

牧草乾燥機の全体像(導入前に押さえる要点)
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乾燥の目的は「品質」と「作業安定」

水分調整は発酵品質・栄養ロス・事故リスクに直結するため、天候任せのブレを減らす視点が重要です。

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周辺機械(ロールベーラ等)とセットで考える

乾燥だけ最適化しても、梱包・密封・保管までの流れが崩れると品質は落ちます。

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乾燥不十分は火災の芽になる

乾草火災は「成形後しばらくしてから」起き得るため、乾燥と保管の管理が安全面の核心になります。

牧草乾燥機と予乾と水分含量の目安


牧草乾燥機を検討する前に、まず「何のために乾かすのか」を作業体系ごとに言語化すると判断が速くなります。サイレージ(きざみサイレージ)では、牧草水分を70〜75%(理想70%)程度まで下げる“予乾”が品質面で重要だと整理されています。特に水分が高い状態だと酪酸発酵のリスクやアンモニア態窒素の増加が懸念されるため、可能な範囲で予乾することが推奨されています。
一方で、予乾を引っ張りすぎると別の損が出ます。刈取りから収穫までが長いほど降雨リスクが上がり、さらに呼吸による栄養ロスも増えるため、乾燥は「長くやれば良い」ではありません。 ここで牧草乾燥機の価値が出るのは、“あと半日分”や“あと一段階の水分”を、天候の揺れから切り離して詰めやすくなる点です。


参考)牧草収穫とサイレージ調製編 - アグリポートWeb

また、サイロで調製する一般的なサイレージでは、水分含量が60〜70%になるよう予乾するのが基本で、水分が高すぎると排汁による養分ロスや不良発酵に陥りやすく、水分が低すぎると嫌気性の保持が難しくなると解説されています。 つまり「乾かし過ぎ」も品質事故の入口で、乾燥は“目標レンジに入れる技術”です。牧草乾燥機はこの“レンジ管理”を補助する装置として捉えると、投資対効果を説明しやすくなります。


参考)飼料作物の生産と調製—理論と実際— ≪第4回≫牧草の調製利用…

意外に見落とされやすいのが、乾燥の判定を“触感”に寄せすぎることです。触ってパリッとしていても、茎部や塊の中心が湿っているケースがあり、梱包後に内部で問題化します。乾燥機導入の有無に関わらず、「水分の測り方(計測の癖)」を現場の共通言語にするだけで、失敗率が下がります。


参考:サイレージ調製での予乾目安(60〜70%)と水分過不足のリスク説明
酪農学園大学:サイレージ調製の基本(予乾・水分目安)

牧草乾燥機とロールベールとロールベーラの作業体系

牧草乾燥機の導入効果は、単体性能より「前後の機械と工程」が噛み合うかで決まります。ロールベールは、牧草や干し草、藁などを大型機械で円筒形に圧縮して梱包したもの、という整理が一般向けにも示されています。 現場では、刈取り→反転・拡散(乾燥促進)→集草→梱包→保管(またはラッピング)という連続工程になり、どこかが詰まると乾燥機があっても全体が停滞します。
ロールベーラ(ベーラー)の構造理解は、乾燥設計にも直結します。ベーラーは干し草や藁のような作物を圧縮して梱包し、トワイン等で結束するための機械と説明されています。 ロールベーラはピックアップ装置・成形室・結束装置で構成され、集草した牧草等を拾い上げながら円柱状に成形する、と農業技術事典でも整理されています。wikipedia+1​
ここで重要なのは、同じ「乾いた牧草」でも、ウインドロー(集草列)の作り方や拾い上げ状態でベール密度が変わり、結果として内部の空気量・熱のこもり方・保管安定性が変わることです。実際、ロールベーラー牽引時は、中央部だけ密度が高い樽型ベールを防ぐために蛇行走行する、といった運用上の注意が述べられています。 乾燥機を入れるなら、乾燥後の搬送・集草・梱包の“詰まり”を減らすために、風列の幅、拾い上げ速度、結束タイミングまで作業標準を作ると効果が出ます。


参考)ベーラー - Wikipedia

また、ロールベールをサイレージ化する場合は、専用のラップフィルムで覆ってロールベールサイレージ(ラップサイレージ)にする、という基本も押さえておくべきです。 乾燥機は「乾草化」だけでなく、「ラップ前の水分を狙いに寄せる」用途でも意味を持ちます。乾燥不足で品質が崩れるだけでなく、過乾燥で嫌気維持が難しくなる点は、工程全体の設計として意識してください。nlbc+1​
参考:ロールベーラの構成(ピックアップ・成形室・結束)
ルーラル電子図書館(農業技術事典):ロールベーラ

牧草乾燥機と乾草火災と保管の注意

牧草乾燥機の話題で、導入効果と同じくらい重要なのが「事故を減らす」観点です。乾燥不十分な牧草をロールベールに成形すると、ロールベール内部からの発火により火災が発生する危険がある、という注意がメーカー取扱説明書の安全項目として明記されています。 この“内部からの発火”が怖いのは、外から見て異常が分かりにくい点で、乾燥判定の甘さがそのままリスクになります。
さらに厄介なのはタイミングで、注意文には「成形後2〜3日間」といった形で、成形直後だけでなく時間差で危険が顕在化する趣旨が含まれています。 つまり「その日は問題なかった」が通用しないため、保管場所(近接物、換気、温度の見回り導線)を含めた運用が必要です。乾燥機導入時は、乾燥工程の強化と同時に、成形後の保管ルールも更新しないと、事故率は下がりません。


参考)https://www.takakita-net.co.jp/dl_setumeisyo/pdf/rb_cr1255wx.pdf

現場で実効性が高い対策は、次のように“機械導入より先に決められる項目”を標準化することです。


  • 乾燥判定:触感ではなく、水分計など数値の基準を決める(個人差を潰す)。
  • 成形直後:ベールを密集させず、当面は熱が逃げやすい配置にする。
  • 2〜3日:見回り・異臭・熱感の確認をルーチン化する(時間差リスクを前提に)。

火災は一度起きると機械・飼料・建屋・家畜まで巻き込むため、「乾燥機=効率化」だけでなく「乾燥機=安全投資」という説明は、上司や経営側の意思決定にも通りやすくなります。
参考:乾燥不十分による乾草火災リスク(安全注意)
タカキタ取扱説明書(PDF):乾草火災に注意

牧草乾燥機とサイレージと品質低下の落とし穴

乾燥は「品質を上げる操作」ですが、乾燥の狙いを外すと逆に品質が落ちます。水分含量が高いと不良発酵のリスクが高まりやすい一方で、乾かし過ぎるとサイロ内で嫌気性を保ちにくくなる、と基本原理として説明されています。 つまり牧草乾燥機の役割は“ひたすら乾かす”ではなく、“狙った水分帯に寄せる”ことです。
また、きざみサイレージでは水分70〜75%(理想70%)まで減らすことが推奨され、水分が高いと酪酸発酵やアンモニア態窒素の増加が懸念されるとされています。 この「水分が高い=発酵が荒れる」は理解されやすいのですが、現場では“雨に当てないために急ぐ”あまり、予乾不足のまま詰めてしまう失敗が起きます。乾燥機で補助できる範囲を見極め、間に合わせの詰め込みを減らすと、結果的にコスト(廃棄・嗜好性低下・生産性低下)を下げられます。

さらに、サイレージの水分は給与設計にも影響します。研究資料では、水分含量が異なるサイレージで乾物摂取量に差が出得ることが示され、水分が高いサイレージほど摂取量が制限要因になり得る、という趣旨が述べられています。 牧草乾燥機は「収穫のための機械」と見られがちですが、実際には“給飼まで含めた生産性”に効く領域があるため、乳量や増体の議論につなげると導入の説明力が上がります。


参考)https://www.snowseed.co.jp/wp/wp-content/uploads/grass/grass_200010_03.pdf

参考:サイレージ水分と乾物摂取量の関係(飼料利用面の根拠)
雪印種苗(PDF):サイレージの品質と乾物摂取量との関係

牧草乾燥機とロールベールサイレージの独自視点(“密封の穴”を減らす発想)

検索上位で語られやすいのは「乾燥の目標」や「機械の種類」ですが、現場の損失は“密封の小さな破綻”から始まることが少なくありません。ロールベールサイレージは、ロール状に梱包した牧草を専用のラップフィルムで覆うことで作る、と説明されています。 この方式は便利な一方で、ラップに穴が開くと空気が入り、局所的に加熱・カビ・二次発酵が進む入口になります。
ここで牧草乾燥機の“意外な効き方”は、乾燥を安定させることでベールの性状(表面の荒さ、飛び出し茎、形の崩れ)を抑え、ラップ時の微細な破れリスクを減らす方向に働き得る点です。もちろん穴の原因は鳥害・猫・フォークの扱いなど多因子ですが、原料の状態が荒いほどラップの弱点は増えます。乾燥機を導入するなら「ラップ工程の事故率が下がったか」をKPIに入れると、機械投資が“品質管理投資”として見える化できます。


また、ベール移動に関しては、密封ラップに穴を開けるおそれがあるため、油圧式のベールグラブ等の利用や、穴が開いた場合の補修・速やかな給飼が必要になる、といった扱いの注意も述べられています。 乾燥機で乾燥が揃っても、運搬・保管で穴を開ければ品質は戻りません。乾燥機導入時に合わせて、次の“穴を減らす運用”をセット導入すると、ロスが目に見えて減ります。

  • ベールの移動具:ラップを傷つけにくいアタッチメントを優先する(ベールスパイク運用の見直し)。
  • 保管場所:尖った資材・金属片・砕石の上を避け、置場の整地を徹底する。
  • 補修の標準化:穴の大きさ別に、補修テープ・手順・判断基準を決める。

“乾燥機を入れたのに品質が安定しない”ケースは、乾燥そのものではなく、密封と保管の小さな破綻が原因であることが多いので、乾燥機は工程全体の再設計のトリガーにすると成果が出ます。




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