ビート収穫機(ビートハーベスター)は、トラクター牽引で走行しながら、タッパー(茎葉処理機)で葉を切り落とし、その後に掘り上げ、土を落としてタンクへ送る流れが基本です。参考として、ホクレンの紹介では「タッパーで葉を切り落とし、自動で掘り上げ、土を落としてからタンクへ送る」と整理されています。
この一連の工程で重要なのは、「タッパーの切り過ぎ」と「土落とし不足」を同時に避けることです。切り過ぎは根頭部のロスや傷につながり、土落とし不足は運搬重量増と工場での洗浄負荷増につながるため、現場の“手戻り”が増えます。
実務では、収穫を急ぐほど土が湿った条件で土落としが追いつかず、タンク内で土団子が増えたり、コンベア周りで詰まりやすくなります。そこで、圃場の水分条件(降雨後の待機判断)と、土落とし系(ローラー・コンベア)の回転やクリアランス調整を、収穫初日に決め打ちせず「午前/午後で微調整する」運用が効きます。
また、収穫は10~11月の晩秋に集中し、冬支度前の大仕事として位置付けられています。収穫時期が近づくほど天候リスクが増えるので、「機械の調子が良い日に前倒しする」だけでなく、「濡れた日に無理をしない」という判断軸も、結果的に総作業時間を短縮します(スタックや破損の復旧が重い)。
参考(収穫工程の全体像/タッパー・掘り上げ・土落とし・タンク搬送の説明)
ホクレンGREENWEB|てん菜の収穫(ビートハーベスターの工程解説)
てん菜(ビート)は北海道の畑作で輪作の一角を担い、収穫期はおおむね10~11月にかけて進みます。ホクレンの現場紹介でも、晩秋の収穫が「冬の前の大仕事」とされ、一定量がまとまると大型車両で製糖工場へ運ばれる流れが示されています。
ここで見落とされやすいのが、収穫機の能力より「搬出のボトルネック」が収穫全体を支配する点です。タンク満杯→荷受け→トラック積み→出荷のどこかが詰まると、収穫機を止める時間が増え、日没や降雪前に終わらせたい作業が延びます。
段取りのコツは、圃場内の集積位置を“雨が来ても持ち出せる地点”に寄せることです。圃場出口付近は踏圧で荒れやすいので、必要なら出口動線に砕石やマットを入れて泥濘化を抑え、トラックが躊躇なく入れる状態を作ります。結果として収穫機が「タンク満杯で待たされる」頻度が下がります。
さらに、製糖工場側の受け入れ時間や輸送手配に合わせ、圃場ごとに「今日は収穫だけ」「今日は収穫+搬出まで」など、日単位のゴール設定を作ると、人員の疲労も均されます。収穫期は連日になりやすいので、ミスが出る前提で“止め方”まで決めておくのが現場向きです。
参考(収穫期の位置付け/搬出して工場へ運ばれる流れ)
ホクレンGREENWEB|てん菜の収穫(搬出・工場搬入の説明)
ビート収穫機は、うね(列)に掘取口を正確に合わせ続けるほど、掘りこぼし・傷・土の巻き込みが減り、結果として作業速度と品質が両立します。特に、日農機製工の事例では「うね合わせセンサー」により掘取口を自動的にうねに合わせ、熟練の操縦負担を軽くしつつ、きれいに収穫できることが紹介されています。
現場感としては、うね追従が甘いと「掘り取り深さを深めて保険をかける」運転になりがちです。しかし深掘りは土の持ち上げ量が増え、土落としが追いつかず、結果的に詰まりと土混入が増える方向に働きます。うね追従の精度が上がるほど、必要最小限の掘り取りで済み、土落とし系も楽になります。
また、熟練者の不足が進むと「運転者の交代」が起きやすく、うね合わせのクセが変わって品質がブレます。センサー等で“誰が乗っても同じ結果”に寄せる設計思想は、単なる快適装備ではなく、収穫期の安定稼働そのものです。
意外と効く小技は、うね合わせの基準がズレないよう、圃場の入口で最初の数十メートルだけ速度を落として機械の追従を安定させることです。ここでズレ癖が付くと、後半に修正しても掘りこぼしが出やすく、結局「拾い直し」や「工場クレーム」を招きます。
参考(うね合わせセンサー/熟練負担低減/掘りこぼし低減の考え方)
エア・ウォーター|日農機製工(ビートハーベスタ、うね合わせセンサーの紹介)
てん菜は掘り上げた後、土を落としながらタンクへ送られ、一定量がまとまるとトラックで製糖工場へ運ばれます。ホクレンの説明でも、掘り上げ→土落とし→タンク→トラック搬送という線で語られており、品質と効率の両面で「土と損傷」が主要テーマになります。
品質低下の典型は、(1)根部の傷(擦過・切断)、(2)根頭部の過剰切除、(3)土混入の増加です。傷は保管・輸送の過程で腐敗や劣化を進めやすく、土混入は“運搬しているのが作物なのか土なのか”という状態になり、燃料と時間を奪います。
実務対策としては、次の3点が効きます。
- タッパー設定:葉柄の残りを恐れて深く切りすぎない。切り過ぎは歩留まりロスが目に見えにくいが累積します。
- 掘り上げ設定:深掘りで安心しない。うね追従が安定しているなら浅め・適正に寄せ、土の持ち上げ量を減らす。
- 土落とし運用:湿土条件では“落ちないものは落ちない”と割り切り、無理に速度を上げず、詰まり前に停止して清掃する(止める判断を早くする)。
意外な盲点は「圃場の石れき・硬盤」と「直播由来の根形」の影響です。根が長い・曲がる条件では掘り取り抵抗が変わり、同じ設定でも傷が出やすくなります。収穫直前の圃場観察で、根形のばらつきが大きい圃場は“速度を出さない日”をあらかじめ割り当てると、全体最適になります。
さらに、土混入を減らす取り組みは工場側のメリットにも直結します。工場では洗いながら流し込む工程があり、余分な土は水・エネルギー・排泥処理の負担になるため、圃場側で減らせるほどサプライチェーン全体が軽くなります。
参考(工場での洗浄・流送があること/搬入後の工程イメージ)
農林水産省|「てん菜」と「さとうきび」の生産現場(工場で洗いながら流し込む工程の説明)
収穫期の最大の損失は「故障そのもの」より、「故障に気づくのが遅れて土・葉・根が絡み、復旧が重くなること」です。日農機製工の紹介では、収穫はタイミングが重要で農機トラブルが緊急事態になり得るため、当日または翌日に技術者が対応する体制を取っているとされ、収穫期の停止が致命傷になり得る現実が示されています。
現場で効く“前兆管理”は、整備士でなくてもできる観察の標準化です。例えば、音・振動・コンベアの脈動・土落ちの均一性は、詰まりやベアリング不良の早期サインになりやすいので、運転者が交代しても同じ基準で「今日はいつもと違う」を言語化できるようにします。
具体的には、次のチェックを「午前の始業前」「午後の始業前」「日没前」の3回に固定すると、トラブルが軽いうちに止められます。
- 駆動部の異音(ローラー・チェーン・ベルト周り)
- 土落としの抜け方(片側だけ土が残る/土団子が増える)
- タッパー周りの切れ味(葉が引きちぎられる感触が増える)
- タンクへの搬送の詰まり(一定周期で詰まる=どこかが偏摩耗)
さらに、収穫期は部品待ちが長期化しやすいので、消耗品(ベルト、チェーン、主要ベアリング、刃周り)の“在庫の持ち方”が実力差になります。圃場が広い地域ほど、部品調達が半日遅れるだけで、天候悪化に間に合わず、結果として大きな減収や品質低下を招くことがあります。
この「前兆で止める」「止めても当日復旧する」思想は、上位記事には出にくい一方で、現場の実利益に直結します。収穫機の性能競争は進んでいますが、最後に差が付くのは“止まった後の復旧設計(段取りと部品)”です。
参考(収穫期のトラブルが緊急事態/迅速なアフターサービス体制の背景)
エア・ウォーター|日農機製工(収穫期トラブルと迅速対応の説明)