とうもろこし収穫機を大きく分けると、自走式(機械自体がエンジンと走行部を持つ)と、牽引式(トラクターに牽引・PTO等で駆動させる)に整理できます。自走式は大規模での作業能率を重視しやすく、牽引式は既存のトラクターを軸に導入コストや運用の柔軟性を出しやすい、という方向性が基本です。
さらに飼料用とうもろこしの現場では、ホールクロップ(茎葉ごと)を細断するフォレージハーベスタ系と、雌穂主体を収穫するスナッパヘッド(雌穂収穫用アタッチメント)系が、作りたい飼料(例:WCS/イアコーン等)で選択肢として分岐します。
選定のとき、カタログの「馬力」「条数」だけで決めると、圃場の倒伏・条間・搬出動線で“詰まる”ことがあります。自走式は旋回半径や搬出の段取りまでセットで設計すると強い一方、牽引式はトラクター側(車幅・馬力・PTO・油圧)の制約を受けやすいので、ヘッドの必要動力と実作業速度をすり合わせるのが重要です。
現場でよくあるのは「収穫機はあるのに、運搬が追いつかず踏圧・密封が遅れて品質が落ちる」パターンです。収穫機単体の性能ではなく、ダンプ・ワゴン・踏圧機・ラップ体系まで含めて“ボトルネックがどこか”を見ておくと、投資がムダになりにくいです。
とうもろこし収穫機の世界は「本体」よりも「ヘッド(アタッチメント)」でできる仕事が変わるのが特徴です。例えば自走式フォレージハーベスタでも、ロータリヘッドでホールクロップ収穫、スナッパヘッドでイアコーン収穫のように、目的に応じてヘッド交換して作業体系を組めます。
意外に見落としがちなのが、播種段階の畦幅とヘッドの相性です。雌穂収穫を狙う場合、スナッパヘッドに合わせて畦幅の設定(例:75cm=30インチ系)を揃えておくと、収穫時の雌穂損失が減り、走行も安定しやすくなります。これは「収穫機の話」に見えて、実は「播種設計の話」でもあります。
また、倒伏した圃場でもスナッパヘッドで収穫が可能なケースはありますが、収量減になりやすいので、倒伏させない栽培管理(密植や追肥の設計含む)と機械体系を同時に考える方が合理的です。
飼料用とうもろこしは「収穫できた」だけでは終わらず、サイレージ品質や採食性が最終成績を左右します。ここで効いてくるのが、とうもろこし収穫機(ハーベスタ)の切断長設定と、破砕処理(カーネルプロセッサ/ローラ)調整です。
破砕処理の狙いは、子実(でんぷん)の消化性を上げ、芯の残食を減らし、状況によっては切断長を長くして反芻効果も確保しながら給与量を稼げる点にあります。黄熟期以降は未破砕粒が増えやすいので、ローラ間隔や切断長の“組み合わせ”で、詰込み密度と反芻効果を両立させる発想が必要です。
調整で一番現場差が出るのは「設定どおりに実機が動いているか」の確認です。ローラやバネ等は経年で挙動が変わり、キャビンの表示だけを信じると未破砕が混ざることがあります。詰込み時に実際の破砕状態を見て、通常速度で稼働している条件で再調整する、という運用が堅実です。
また、刃の研磨・調整が甘いと切断が鈍って混合性が落ち、TMRで選び食いが出て残飼が増える、という“収穫後の損失”にもつながります。目に見えるのは収穫中の詰まりですが、損しているのは給餌後、というのが地味に怖いポイントです。
とうもろこし収穫機は回転体・挟まれ箇所が多く、点検手順を省略すると事故と故障が一気に増えます。特に牽引式やアタッチメント運用では、PTO停止・エンジン停止・回転部停止確認を徹底し、終業点検を“作業の一部”として組み込むのが基本です。
点検は精神論ではなく、結果として収穫ロスのブレを減らします。例えば、破砕ローラや刃物、チェーン・搬送部の状態が悪いと、未破砕粒、詰まり、送りムラが起きやすく、設定をいくら詰めても再現性が出ません。逆に言えば、点検ができている現場ほど「毎年同じ設定で立ち上がる」ので、段取りが短縮されます。
チェック項目の例(最低限)を挙げます。
・PTO停止、キーオフ、回転停止の確認(整備・詰まり除去の前)
・刃の研磨・調整(切れ味の低下は品質と作業能率に直結)
・破砕ローラ間隔のズレ(左右差や経年変化)
・異音・異常振動、油圧ホースの滲み(重大故障の前兆)
・カバー類の復帰(“面倒だから外したまま”が事故につながる)
検索上位の多くは「機種選び」「価格」「中古」「メーカー比較」に寄りがちですが、現場で利益差が出るのは“ロスの見える化”です。とうもろこし収穫機は、収穫ロス(落ち穂・未回収・飛散)と、調製ロス(踏圧不足・密封遅れ・変敗)と、給与ロス(選び食い・消化不良)を同時に起こし得ます。つまり、収穫機のKPIは「面積/時」だけでは足りません。
そこでおすすめは、現場でできる簡易スコアリングです。難しい分析ではなく、次の3つを“毎年・毎圃場”で揃えて記録すると改善が回ります。
・収穫直後の圃場観察:落ち穂、残株、倒伏部の取りこぼし(写真でも可)
・搬入時の原料チェック:未破砕粒の割合、芯の硬さ、切断長のばらつき(手で広げて確認)
・開封後の品質:発熱、カビ、匂い、取り出し面の崩れ(密封・踏圧の結果が出る)
意外な盲点は「速く刈れる=得」ではないことです。運搬・踏圧・密封が追いつかず酸素が残ると、カビや酵母でPHや温度が上がり、栄養ロスが増えます。収穫機の速度を少し落としてでも、詰込み・踏圧の密度と密封の速さを守った方が、結果的に“牛の口に入る栄養”が増える年もあります。
さらに、保管側の獣害・鼠害まで含めると、機械の努力が一晩で無駄になることがあります。例えばサイロ周辺の環境整備や、バンカー壁際の金網など、物理的に侵入を抑える手当ては、地味ですが費用対効果が高い領域です。
参考:イアコーン収穫(スナッパヘッド、設定切断長10mm以下、破砕間隙2mm、作業時速目安6km/h、ロールベール保存の考え方等)
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/earcornmanual_ver2.pdf
参考:破砕処理の目的、黄熟期以降の切断長・ローラ間隔の考え方、刃の研磨、破砕状態チェック、ネズミ対策(バンカーの金網等)
https://www.nosai-do.or.jp/manage/wp-content/uploads/2022/03/4dff47103ede64b760561f2e654bb24c.pdf