新品で購入すると10万円から、高機能なハンマーナイフモアであれば30万円以上もする手押し草刈機ですが、中古市場であればその半額以下、場合によっては数万円で手に入れることが可能です。しかし、単に「安いから」という理由だけで飛びつくと、修理費用がかさんで結局高くついてしまうケースが後を絶ちません。まずは、中古市場における適正な相場感と、激安品に潜む具体的なリスクについて深掘りしていきます。
一般的に、エンジンの始動が確認でき、すぐに実用可能な手押し草刈機(自走式)の中古相場は、3万円〜8万円程度が目安となります。3万円を下回る個体は、何らかの不具合を抱えている「ジャンク品」や「部品取り用」である可能性が極めて高いと考えてください。特に1万円台で出品されている「激安」な手押し草刈機には、致命的な欠陥が隠されていることがよくあります。
激安品に最も多いリスクの一つが、エンジンの「圧縮抜け」です。これは、エンジン内部のピストンリングやシリンダーが摩耗し、爆発に必要な圧力を保てなくなっている状態を指します。リコイルスターター(始動紐)を引いたときに、抵抗がスカスカで手ごたえがない場合はこの症状の可能性が高く、修理にはエンジンのオーバーホール(分解修理)が必要となり、数万円規模の費用がかかります。外見がどれほど綺麗でも、圧縮がない機械は鉄屑同然ですので、現物確認ができる場合は必ず紐を引いて圧縮の有無を確認してください。
また、長期間放置された激安品は、燃料タンク内が錆びていることが多く、その錆がキャブレター(燃料供給装置)に回って詰まりを起こしているケースも散見されます。タンク内の錆取りは専用のクリーナーを使えば可能ですが、重度のものであればタンク交換が必要となり、古い機種ではメーカーの部品供給が終了している(廃盤)リスクもあります。
さらに、見落としがちなのがタイヤの状態です。手押し草刈機のタイヤは特殊なブロックパターンを採用しており、新品に交換すると左右で1万円以上かかることも珍しくありません。激安で購入したものの、タイヤがひび割れてバースト寸前だった場合、追加出費で結局は相場通りの価格になってしまうことがあります。
参考リンク:Yahoo!オークション - 手押し式草刈機の中古品一覧と現在の価格相場
手押し草刈機には、タイヤの駆動力がない「手押し式(非自走)」と、エンジンの力でタイヤが回って進む「自走式」の2種類が存在します。平坦で狭い庭であれば非自走式でも問題ありませんが、傾斜地や広い休耕田、果樹園などで使用する場合は、迷わず「自走式」を選ぶことを強くおすすめします。自走式の中古を選ぶ際に、絶対にチェックすべきポイントを解説します。
まず、エンジンの種類を確認しましょう。手押し草刈機には「2サイクルエンジン」と「4サイクルエンジン」の2種類が搭載されています。
次に確認すべきは、刈刃の駆動方式です。一般的な「ロータリー式(円盤状の刃が回転するタイプ)」は構造がシンプルでメンテナンスが楽ですが、背の高い草や硬い草には弱い傾向があります。一方、「ハンマーナイフモア(縦回転のドラムに多数のフリー刃がついているタイプ)」は、草を粉砕しながら刈り進むため、刈った後の草が集草の手間なく土に還りやすいという大きなメリットがあります。中古市場でもハンマーナイフモアは非常に人気が高く価格も高騰しがちですが、草刈りの後の片付けを減らしたいのであれば、少々高くてもこちらを選ぶ価値があります。
また、自走式の選び方で重要なのが「変速ギア」の有無です。前進1速のみの機種は、草の密度が高い場所でも一定速度で進もうとするため、エンストしやすくなります。前進2速や3速、あるいは後進(バック)ギアがついているモデルであれば、状況に合わせて速度を落としたり、行き止まりで切り返したりするのが格段に楽になります。特に重量のある機種でバックギアがないと、手で引っ張って戻すのは重労働ですので、後進機能の有無は必ずスペック表で確認してください。
最後に、ハンドルの調整機能も重要です。上下左右にハンドル位置を変えられるモデルであれば、木の枝の下をくぐったり、斜面で足場が良い場所を歩きながら刈ったりすることができます。特に「スパイダーモア」と呼ばれる法面(斜面)専用機は、ハンドルが長く伸びる構造になっており、人間は平らな場所に立ったまま斜面の草を刈ることができるため、危険な作業を安全に行えます。
参考リンク:自走式草刈機のおすすめ機種比較と中古選びのポイント解説
中古の手押し草刈機を購入する醍醐味の一つは、不調な機械を自分の手で整備して蘇らせることです。「エンジンがかからない」としてジャンク扱いで安く売られている個体の中には、実は数百円の部品交換と簡単な清掃だけで復活する「お宝」が眠っています。ここでは、DIY整備で狙い目となるポイントと、逆に手を出してはいけない故障の見極め方を解説します。
最も狙い目なのは、「プライマリーポンプ」の劣化による始動不良です。キャブレターの下についている透明な半球状のゴム部品(プライマリーポンプ)は、経年劣化で硬化し、ひび割れて穴が開きます。ここから空気を吸い込んでしまうと、燃料が正しくエンジンに送られず始動しません。この部品はホームセンターやネット通販で数百円で購入でき、ドライバー1本で交換可能です。出品説明に「プライマリーポンプが破れています」と書かれているだけで入札を避ける人が多いですが、これは絶好のチャンスです。
次に多いのが、燃料ホースとフィルターの詰まりです。古い燃料を入れたまま放置されると、燃料がワニス状に変質してホースやフィルターを詰まらせます。これも汎用の燃料ホースとフィルターに交換するだけで直ることが多く、費用も千円程度で済みます。特に、透明なホースが茶色く変色してカチカチに固まっている場合は交換必須ですが、修理難易度は低いです。
少しレベルが上がりますが、「キャブレターのダイヤフラム硬化」もよくある原因です。キャブレター内部にあるゴム製の膜(ダイヤフラム)が硬くなると、燃料をポンプのように送る機能が失われます。これも「キャブレターリペアキット」として千円〜二千円程度で部品が入手でき、分解清掃して組み直すだけでエンジンの調子が劇的に改善します。YouTubeなどで「刈払機 キャブレター 分解」と検索すれば多くの解説動画が出てくるため、初心者でも挑戦しやすい整備です。
一方で、絶対に手を出してはいけないのが、「イグニッションコイルの故障」と「クランクシャフトの歪み」です。
点火プラグから火が飛ばない場合、プラグ自体の不良なら数百円で済みますが、電気を作るイグニッションコイルが死んでいると、部品代だけで1万円近くかかることがあります。
また、刈刃を石や切り株に強くぶつけた履歴がある機械は、エンジンの回転軸(クランクシャフト)が曲がっている可能性があります。これがあると、どれだけエンジンを調整しても異常振動が収まらず、最悪の場合は使用中に分解して怪我をする恐れがあります。エンジンをかけた時に、本体が異常にガタガタ震える個体や、刃の回転軸を目視してブレている個体は、整備で直すのが極めて困難なので避けるのが賢明です。
参考リンク:草刈り機のエンジンがかからない時の対処法とメンテナンス基礎
中古の手押し草刈機を入手するルートとして、代表的なのが「ヤフオク!」などのネットオークションと、農機具店やリサイクルショップなどの「実店舗」です。それぞれのメリット・デメリットを比較する際、最も注意しなければならないのが「送料」と「受け取り方法」の問題です。
ヤフオク!などの個人売買は、市場価格よりも安く購入できる可能性が高いのが最大の魅力です。しかし、手押し草刈機のような大型で重量のある機械は、通常の宅配便(ヤマト運輸の宅急便や佐川急便の飛脚便など)では送れないケースがほとんどです。多くの出品者は「西濃運輸」や「福山通運」などの業務用貨物を利用しますが、ここで「営業所止め」という壁にぶつかります。
業務用貨物の場合、個人宅への配送は基本的に行っておらず、購入者がトラックで最寄りの運送会社の営業所まで引き取りに行かなければなりません。軽トラックやバンを所有していれば問題ありませんが、一般的な乗用車では積載できないサイズの商品も多く、積み込みのためにラダー(道板)やロープを自分で用意する必要があります。また、送料も県をまたぐと1万円〜2万円、遠方であれば3万円以上かかることも珍しくありません。「本体価格1万円で落札したが、送料が3万円かかり、さらにレンタカー代もかかった」となれば、実店舗で買うのと変わらない、あるいは高くなってしまうことさえあります。
一方、農機具店などの実店舗で購入する場合、価格はオークション相場より2割〜3割程度高くなる傾向があります。しかし、その価格差を補って余りあるメリットがあります。
第一に、プロによる整備済みであることです。キャブレターの清掃やオイル交換、刃の研磨などが行われているため、購入してすぐに使える安心感があります。
第二に、近隣であれば軽トラックでの配送サービスを行っていたり、使い方の指導をしてくれたりすることです。特に初めて手押し草刈機を使う場合、エンジンの掛け方やチョークの操作、緊急停止の方法などを実機で教わることができるのは大きな価値です。
第三に、購入後の修理対応です。中古で購入した機械が故障した際、他店やネットで買った機械の修理は断られることがありますが、自店で販売した機械であれば親身に対応してくれるショップがほとんどです。
結論として、以下の基準で選ぶと良いでしょう。
参考リンク:販売業者が教える手押し式草刈機のデメリットと購入時の注意点
手押し草刈機の中古市場において、圧倒的な人気と信頼を誇る2大メーカーが「オーレック(OREC)」と「ホンダ(Honda)」です。それぞれのメーカーには明確な特徴と得意分野があり、自分の使用環境に合ったメーカーを選ぶことが成功の鍵となります。
オーレック(OREC)は、日本の緑地管理機械におけるトップブランドであり、特に「自走式草刈機」の分野では他社の追随を許さないラインナップを誇ります。オーレックの最大の特徴は、その「タフさ」と「悪路走破性」です。
代表的なモデルである「スパイダーモア」シリーズは、4輪駆動とスパイクタイヤを装備し、人間が立っていられないような急斜面(最大傾斜50度)でもグイグイ登って草を刈ることができます。また、「ウイングモア」シリーズは、あぜ道の上面と側面を同時に刈ることができる二面刈り機で、農家の重労働を劇的に軽減させました。
中古市場でもオーレックの機械は非常にタフで、多少外装がボロボロでもエンジンと駆動系さえ生きていれば現役で使える個体が多いです。部品の供給体制も万全で、古い機種でも修理部品が手に入りやすい点は、長く使いたいユーザーにとって大きなメリットです。「とにかく過酷な現場でガシガシ使いたい」「斜面の草刈りを楽にしたい」という方は、オーレック一択と言っても過言ではありません。
対するホンダ(Honda)は、世界に誇るエンジンメーカーとしての強みを活かした製品作りが特徴です。ホンダの手押し草刈機の最大の魅力は、「エンジンの始動性」と「静粛性」です。
ホンダの4サイクルエンジンは、軽い力でリコイルスターターを引くだけで一発でエンジンがかかります。女性や高齢者にとって、重いリコイル紐を何度も引くのは大変なストレスですが、ホンダの機械ならその心配がありません。また、排気音が比較的静かで、排ガスもクリーンなため、住宅地に近い場所や公園管理などでの使用に適しています。
構造もユーザーフレンドリーで、スロットルレバーを握れば刃が回り、離せば止まるといった安全機構もしっかりしています。ただし、オーレックのような特殊な悪路走破性に特化したモデルは少なく、平地や緩やかな斜面での使用を想定したモデルが中心です。「機械の操作に不安がある」「近隣への騒音が気になる」「平らな庭や畑をきれいに管理したい」というユーザーにはホンダが最適です。
このほか、「クボタ」や「ヤンマー」などの大手農機メーカーも手押し草刈機を販売していますが、実はその多くがオーレックからのOEM供給(オーレックが製造し、クボタなどのブランドで販売)であることは意外と知られていない事実です。中古市場で「クボタ製」として売られていても、型番を調べるとオーレックの同型機であることがよくあります。その場合、中身は同じなので性能に差はありませんが、ブランドの知名度で価格が異なることがあるため、OEM元のモデルも併せてチェックすると、思わぬ掘り出し物が見つかるかもしれません。
参考リンク:自走式草刈機のおすすめ10選!オーレック・ホンダ・クボタの比較

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