竹を切るチェーンソーは「普通のチェーンソーでも切れる」が、竹の現場では“切れはするけど進みにくい・毛羽立つ・噛む”が積み重なり、結果として疲労とリスクが増えます。竹は節間が空洞で、刃を当てた瞬間にしなって逃げやすい一方、繊維が硬くて切り粉が出にくい局面もあり、刃が鈍いと押し込みが増えて姿勢が崩れやすいのが厄介です。
そこで効くのが「竹切り用チェンソー」という考え方です。竹切り用は、ソーチェーンがフルカッタータイプ、ガイドバーがカービングバー、ハンドルがトップハンドルなど、竹林での取り回しと切れ味に寄せた構成になっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10762704/
農業従事者の作業として現実的な判断基準は、買い替えより先に“段階的に寄せる”ことです。竹を切る頻度が少ないなら既存の一般チェーンソーで十分、頻度が中程度なら竹用フルカッターの替刃交換、頻度が多いなら竹切り用本体の導入が合理的、という整理ができます。
意外と見落とされがちなのは「竹専用に寄せるほど、竹以外の運用コストが上がる」点です。フルカッターは目立ての手間が増える(刃の管理がシビアになる)ため、雑木・薪づくり等も同じ1台で回したい人は、替刃を使い分ける方がトータルで楽になります。
竹を切るチェーンソーを「竹向け」に最短で近づけるのは、替刃(ソーチェーン)の交換です。竹用としてよく使われるのはフルカッターで、既存の本体を活かしつつ切れ味の立ち上がりと切断のスムーズさを改善できます。
替刃で重要なのは、感覚ではなく“適合情報”で決めることです。少なくとも次の3点が合わないと、そもそも装着できないか、危険な状態になります。
竹用替刃の見分け方として、品番の前半(例:25Fや91Fなど)で規格やタイプが分かり、後半(例:60Eや52Eなど)でドライブリンク数(長さ)が分かる、という「品番のルール」があります。
ここでのコツは、作業前に替刃を買いに走るのではなく、まず手元のガイドバー・チェーンの刻印や現品情報を見て、規格を“確定”させることです。現場あるあるとして「たぶんこの長さ」で買ってしまい、忙しい時ほどムダが出ます(再注文、返品、作業停止)。竹林整備は段取りで勝負なので、替刃は“予備を含めて同規格で統一”すると管理が一気に楽になります。
参考リンク(竹用替刃の考え方・竹切り用チェンソーの特徴、品番の見方の根拠)
https://www.noukaweb.com/chainsaw-bamboo-cutting/
竹を切るチェーンソーで一番怖いのは、切断そのものより「キックバック」と、重なった竹・地面近く・障害物での“刃先接触”です。実際に竹の伐採作業中、重なり合った竹を切断している最中に刃先が触れてキックバックが発生し、足指を切創した事例が報告されています。
この事例で重要なのは、防護ズボンではなく「防護ブーツが未着装」だった点です。竹林は足元が見えにくく、切った竹が跳ねたり転がったりもするので、足先の防護が抜けるとケガが“指先に直撃”しやすい構造になります。
安全の要点は、上手い切り方というより「キックバックを起こしにくい条件を作る」ことです。公的資料でも、ガイドバー先端を物に触れさせない、先端上部は使わない、周囲の枝や石などを除去、両手で保持(左手親指を回して握る)、ローキックバックチェーンの使用、チェーンブレーキ等の安全装置、きちんと目立て、切り始め・切り終わりは回転速度を落とさない、といった留意点が並びます。
現場で効く運用の工夫(意味のある範囲で、すぐ効く順)
参考リンク(竹の伐採中に起きたキックバック事例、再発防止対策と留意点)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/routai/anzen/attach/pdf/index-9.pdf
竹を切るチェーンソーを“竹林向け”にする時、替刃と同じくらい効くのが取り回しです。竹切り用チェンソーの特徴として、カービングバーとトップハンドルが挙げられており、密な竹林での小回りと姿勢の作りやすさに寄与します。
ただし、トップハンドルは「片手で扱いやすい」ことと「片手で扱ってよい」は別問題です。竹林では体の向きが固定されがちで、枝・倒れ竹・足場が不安定になりやすく、片手操作は反動に耐えにくくなります(結果としてバー先が当たりやすい)。だからこそ、両手保持を前提に“取り回しやすい形状を選ぶ”のが安全と能率の両立になります。
カービングバーは先端が細く、狙った場所に刃を入れやすい一方で、竹の重なりや密集で「先端が意図せず接触する」状況も作りやすいです。つまり、道具の自由度が上がるほど、作業前の整理(障害物除去、切る順番、退避方向)の価値が上がる、という逆転現象が起きます。
農業の現場では、伐採そのものより「搬出・集積・処理」まで含めた段取りで時間が決まります。取り回しのよい構成は、1本あたり数秒の差でも、100本単位で効いてきますが、焦って切断速度だけを上げるとキックバック条件も同時に増えるので、“早く切る”ではなく“止まらずに切る(段取りで止めない)”を目標にするのが現実的です。
竹を切るチェーンソーの不調は、エンジンやバッテリーより先に「刃の状態」に出ることが多いのに、忙しいと見逃されます。そこで独自視点として、作業者がその場でできる“切り粉と体感”のセルフ診断をルール化しておくと、事故の芽(押し込み増加→姿勢崩れ→刃先接触)を早めに摘めます。
診断の軸は難しくありません。次のどれかが出たら、その日は目立て(または替刃交換)を優先して「押して切る」状態を作らない方が安全です。
意外なポイントは「切れないとキックバックが起きやすい」のではなく、“切れないから押す→押すからバー先がブレる→ブレた先端が何かに触れる”という連鎖で起きることです。資料でも、きちんと目立てをして切れ味を良くしておくことがキックバック対策として明記されています。
運用に落とすなら、朝礼や作業開始前にチェックを固定化すると再現性が出ます。
このセルフ診断は、技能差があっても共有しやすいのが利点です。「音が変」「進まない」を言語化しづらい新人でも、「切り粉が細い・少ない」という基準なら報告しやすく、結果としてチーム全体の安全度が上がります。