農業現場で資材小屋やビニールハウスの補強、果樹棚を作る際に欠かせない「単管パイプ」。ホームセンターで手軽に入手できる反面、その規格や種類、法律に関わる運搬ルールを正しく理解していないと、思わぬ失敗や法的なトラブルに巻き込まれることがあります。ここでは、農業従事者が知っておくべき単管パイプの基礎データを深掘りします。
農業用として流用される単管パイプには、JIS規格(日本産業規格)に基づいた厳格なルールが存在します。まず、最も基本的な数値として「外径48.6mm」という数字を覚えておきましょう。これは足場用として建築現場で使われる標準サイズであり、農業用資材として販売されているパイプ(19.1mm、22.2mm、25.4mmなど)とは一線を画す太さと強度を持っています。
参考)単管パイプ特集 | -ホームセンター通販サイト・コメリドット…
長さのバリエーションと特注
ホームセンターや建材店で在庫されている定尺サイズは、一般的に以下の通りです。
基本となる「定尺」は4mですが、実際の現場では「あと数センチ足りない」という事態が頻発します。多くの販売店では有料でのカットサービスを行っていますが、端材が出る場合の処理費用が含まれることもあるため、設計段階で「定尺で収まるサイズ(例:間口3.6mハウスなら4mパイプをどう使うか)」を計算することがコスト削減の鍵です。
参考)単管パイプのサイズとは?パイプ製造のプロが直径・厚み・長さに…
また、長さ選びで重要なのが「重量」です。例えば、肉厚2.4mmのパイプの場合、1mあたり約2.73kgあります。4mであれば1本で約11kg。一人で作業する場合、持ち上げられる限界の長さと重さを考慮しないと、施工時の怪我につながります。特に足場の悪い農地での作業では、3m以上のパイプを振り回すのは危険を伴います。
参考)https://kikaim.com/tankantoha.html
参考:コメリドットコム - 単管パイプの寸法図と規格サイズ一覧
※ホームセンター大手のコメリによる詳細な寸法図と重量表があり、購入前の計画に役立ちます。
農家にとって最も身近な輸送手段である「軽トラ」。しかし、単管パイプの購入時、この軽トラが法的な落とし穴になるケースが後を絶ちません。特に注意が必要なのが「4mパイプ」の運搬です。
2022年の道路交通法改正の誤解
以前は「積載装置の長さ+10%まで」しか認められていませんでしたが、2022年5月の改正により「自動車の長さ×1.2倍」まで緩和されました。
一般的な軽トラ(全長約3.4m)の場合、3.4m × 1.2 = 約4.08m まで積載物の長さが許容される計算になります。これだけ聞くと「4mの単管パイプも合法的に積める」と思われがちですが、ここには「高さ制限」という罠があります。
参考)トラック積載の【はみ出しルール】の改正 | 運送業サポート
4mのパイプを軽トラの荷台(鳥居)に斜めに立てかけて積むと、その先端は地上から2.5mを容易に超えてしまいます。これは道路交通法違反となります。
合法的に4mパイプを運ぶには、以下のいずれかの方法をとる必要があります。
「少しの距離だから」という油断が、免許の点数やゴールド免許の喪失につながります。ホームセンターの配送サービスや、2m+2mにカットしてジョイントで繋ぐ方法を検討するのも賢い選択です。
参考)軽トラで4mの長尺物を運搬する方へ!転落のリスクや注意点を知…
「肉厚が厚い方が丈夫に決まっている」と考え、迷わず肉厚2.4mmの従来型単管パイプを選んでいませんか?実は、近年の農業利用においては、肉厚1.8mmの軽量単管パイプの方が圧倒的にメリットが大きいのです。これは単なるコストダウン製品ではありません。
高張力鋼(ハイテン)の採用
肉厚1.8mmのパイプの多くは、素材に「高張力鋼板(ハイテン鋼)」を使用しています。これは自動車のボディなどにも使われる素材で、薄くても非常に高い強度を持ちます。メーカーの試験データによれば、従来品(2.4mm)と比較して、1.8mm品は重量が約25%軽いにもかかわらず、引張強度は同等以上であるケースがほとんどです。
参考)単管パイプ肉厚2.4mmと1.8mmの特徴を図や表でわかりや…
農業現場での具体的なメリット
ただし、注意点もあります。肉厚が薄く素材が硬いため、ドリルでの穴あけ加工が難しく、ビス(テックスネジ)が食い込みにくいという特性があります。加工を多用するDIY的な用途には2.4mm、骨組みとして組むだけなら1.8mmという使い分けがプロの視点です。
参考:大和鋼管工業 - 単管パイプの荷重実験と強度比較データ
※製造メーカーによる強度実験のデータが公開されており、1.8mmと2.4mmの具体的な強度差を数値で確認できます。
農業用ハウスや露地栽培の棚は、常に高温多湿、紫外線、農薬や肥料による化学的影響にさらされる過酷な環境です。ここで重要になるのが「メッキ」の品質です。単管パイプには大きく分けて2種類のメッキ処理が存在します。
1. 先メッキ(プレジンク)
鋼板の段階でメッキ処理を行い、その後にパイプ状に成形する方法です。
2. 後メッキ(ポストジンク・ドブメッキ)
パイプに成形した後、亜鉛のプールにドブ漬け(溶融亜鉛メッキ)する方法、または外面に特殊な吹き付けを行う方法です。
農業に革命を起こした「ZAM」メッキ
近年注目されているのが、日鉄などが開発した高耐食性メッキ「ZAM(ザム)」です。亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)を含有し、従来の亜鉛メッキに比べて10倍以上の耐食性を持つとされています。特に切断面から錆が広がるのを防ぐ「自己修復作用」が強力で、パイプを切断して使うことが多い農業現場に最適です。
参考)http://www.hirabayashi-all.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/07/c4b493f2042de77422127caa9eba5757.pdf
ホームセンターで「とにかく安いパイプ」を選ぶと、数年で赤錆だらけになり、被覆ビニールを劣化させる原因になります。初期投資が多少高くても、ZAMやポストジンク規格のパイプを選ぶことが、長い目で見ればコストパフォーマンスに優れます。
農業の現場では、全てを48.6mmの単管パイプで作る必要はありません。既存の農業用パイプ(19.1mm~25.4mm)と組み合わせることで、コストを抑えつつ機能的な設備を作ることができます。これを可能にするのが「異径クランプ(異径ジョイント)」です。
ハイブリッド構造のすすめ
この組み合わせを実現するためには、48.6mmと25.4mmを連結できる専用のクランプが必要です。「48.6×48.6」のクランプはどこでも売っていますが、「48.6×25.4」や「48.6×19.1」といった異径クランプは、大型ホームセンターやネット通販でないと入手が難しい場合があります。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E7%95%B0%E5%BE%84%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97/
互換性の落とし穴「1.8mm管とジョイント」
先述した肉厚1.8mm(軽量単管)を使用する場合、ジョイント選びに注意が必要です。
従来の2.4mm管は内径が約43.8mmですが、1.8mm管は内径が約45.0mmと広くなります。そのため、パイプの中に差し込んで連結する「ボンジョイント」や「インサート継手」を使用する場合、2.4mm専用の製品を使うとガタつきが発生し、強度が著しく低下します。
軽量単管を使用する場合は、必ず「1.8mm管対応(または兼用)」と明記されたジョイント、もしくは外側から締め付けるタイプの「マルチジョイント」を使用してください。この微細な規格の違いを見落とすと、台風などの強風時に継ぎ目から崩壊するリスクがあります。
参考)軽量単管パイプに最適なジョイント3種の比較
参考:モノタロウ - 異径クランプの人気ランキングと規格一覧
※多種多様なサイズの異径クランプが一覧化されており、手持ちのパイプと単管を接続するための部材探しに最適です。