分娩後の乳牛は、泌乳開始で必要エネルギーが急増する一方、乾物摂取量(DMI)がすぐに追いつかず、負のエネルギーバランス(NEB)に入りやすくなります。
NEBが強いほど体脂肪の動員が進み、非エステル型脂肪酸(NEFA)が増えて肝臓へ流入します。
肝臓では本来、NEFAをエネルギーとして燃やしたり(β酸化)、再エステル化してVLDLとして運び出したりしますが、糖質が枯渇しやすい移行期には処理が追いつかず、ケトン体産生が高まり、ケトーシスに傾きます。
ここで重要なのは「ケトーシス=分娩後の一時的な乳量低下」だけでは終わらない点です。潜在性ケトーシスは臨床症状が乏しいまま進むため、気付いた時点で第四胃変位や繁殖遅延など“別の損失”として現れやすく、原因が見えにくくなります。
また、分娩後2週間以内に問題となるⅡ型(脂肪肝・インスリン抵抗性と関連)が、損耗防止の観点で特に厄介だと整理されています。
潜在性ケトーシスの「ゴールドスタンダード」は血液中のβ-ヒドロキシ酪酸(BHBA)濃度で、BHBAは他のケトン体より安定しているため指標として使われます。
診断基準は研究で幅がありますが、近年の研究では潜在性ケトーシスの判定に血中BHBA 1.2 mmol/Lを用いる例が多い、と整理されています。
採材タイミングも精度に効き、BHBAは採食後に上がるため「給与して採食が始まってから4〜5時間後のサンプリング」が推奨されています。
血液検査が難しい現場では、乳汁を用いた簡易検査(乳中BHBAの半定量)も選択肢になります。乳中BHBAを検出できる試験紙(例:サンケトペーパー)が日本で開発され、現場診断に有用とされています。
参考)http://www.nissangosei.co.jp/nissan/075.pdf
さらに、乳検に加入している場合は、乳検情報の乳中ケトン体(BHB)を活用して早期判定ができ、BHBが0.13 mmol/L以上で疑いの目安として早期対応が必要、という現場向けの目安が示されています。
乾乳期に過度に太った牛は、分娩後に急激に削痩し、食欲も落ち、高い確率でケトーシスを発症しやすい傾向があるとされています。
そのため、乾乳期は「太らせない設計」が重要で、泌乳後期からボディコンディションの調整を行うことが、現場向けの予防ポイントとして挙げられています。
分娩直後の飼料設計では、乾乳メニューから急に切り替えたり、いきなり増給したりせず、段階を追ってゆっくり増給することが推奨されています。
この「段階化」は、胃腸の慣れだけでなく、DMIの回復を邪魔しないための実務でもあります。分娩直後はストレスや体調変化が重なるため、濃厚飼料の急増で採食が乱れると、NEBをさらに深くしてしまうリスクがあります。
また、乾乳牛の管理形態として、なるべく無繋留による管理が望ましい、という提案もあります(ストレスと採食の観点で無視できません)。
ケトーシスは、分娩後のNEB由来だけでなく、劣質サイレージを給与した場合に摂取した酪酸により体内でケトン体が増え、発症することがあると説明されています。
つまり「乾乳・分娩・泌乳初期の管理が良いのに発生が止まらない」農場では、飼料側(とくにサイレージ品質)から疑う価値があります。
現場向けには、不良発酵したサイレージの給与を避けることが予防として明確に挙げられています。
意外に見落とされるのが、“サイレージは嗜好性が落ちて初めて問題化する”とは限らない点です。牛が食べているように見えても、酪酸負荷がじわじわBHBAを押し上げ、潜在性として群の乳量立ち上がりや繁殖に影響するシナリオがあり得ます。
「新乳期の個体治療」だけでなく、「飼料ロット・調製・密封・開封後の管理」まで含めて原因を潰すと、再発が止まりやすくなります(獣医・TMR設計者・現場の連携が効きます)。
潜在性ケトーシスは「週1回の検査では不十分かもしれない」という指摘があり、分娩後最初の2週間は週2回程度の検査が望ましい、という研究に基づく提案があります。
さらに、分娩後日数ごとの推移では5日目に発生率・有病率のピークが示されており、「5日目前後で拾えるかどうか」が実務上の分岐点になり得ます。
このピークを知っていると、現場のSOPを“人の都合”ではなく“牛のリスク曲線”に合わせて組めます。
例えば、分娩後のチェック日を「3日目・5〜6日目・9〜10日目」のように固定すると、採材の抜けが減り、担当者が変わっても運用がぶれにくくなります。
加えて、採食後4〜5時間の採材推奨を踏まえ、検査は「朝給餌→作業→採血(採材)」の順に流れを作ると、結果のブレを抑えやすいです。
検査で拾った牛への対策として、潜在性ケトーシス牛にプロピレングリコール(PG)を投与することが手軽で効果が期待できる対策として紹介されています。
周産期の早期対応が遅れると、重篤化して第四胃変位を引き起こしたり、回復後に長期不受胎につながる事例がある、と現場向けに注意喚起されています。
だからこそ、乾乳期の過肥回避・分娩後の段階的増給・サイレージ品質の見直し・BHBA(BHB)による早期判定を「別々の対策」ではなく、同じライン上の再発防止策として統合するのが現実的です。
潜在性ケトーシスの研究動向(BHBA基準、採材タイミング、検査機器、PG投与の考え方)
https://jvma-vet.jp/mag/06801/b1.pdf
現場向けの早期判定(乳検BHB 0.13 mmol/L目安)と、乾乳期・分娩後の飼養管理ポイント(過肥回避、段階的増給、不良発酵サイレージ回避)
https://www.kushiro.pref.hokkaido.lg.jp/ss/nkc/gijyutu/H30/JA06hon.html

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