磁性材料 一覧とフェライトと永久磁石

磁性材料を「軟磁性材料」と「硬磁性材料」に分け、フェライトや永久磁石の特徴を農業機械・センサー視点で整理します。用途別に何を選ぶべきでしょうか?

磁性材料 一覧

磁性材料 一覧の早見ポイント
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軟磁性材料と硬磁性材料

外部磁界を外したとき「磁気が消えやすい」か「残りやすい」かで大別し、用途(電磁石・モータ・センサー・固定磁石)を先に決める。

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農業では“耐環境”が重要

泥・水・薬品・振動・温度で特性がズレるため、磁気特性だけでなく耐食性・割れやすさ・温度特性も含めて選ぶ。

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指標は透磁率・保磁力

軟磁性は透磁率が高く保磁力が小さいのが基本、硬磁性(永久磁石)は保磁力が大きいのが基本という整理で迷いが減る。

磁性材料 一覧で分かる軟磁性材料と硬磁性材料

 

農業機械や農業用センサーで磁性材料を選ぶとき、最初に押さえるべき分類が「軟磁性材料」と「硬磁性材料」です。軟磁性材料は外部磁界を取り除くと速やかに磁気がなくなり元の状態に戻る材料で、硬磁性材料は保磁力が大きく永久磁石として使われる材料、という整理が基本になります。
この分類は「材料が硬い/柔らかい」ではなく、磁化の残り方(ヒステリシス)という磁気的性質の違いで決まる点が誤解されがちです(硬磁性は磁化を保持しやすく、軟磁性は外部磁界の変化に追随しやすい)。
農業の現場感で言うと、電磁弁・モータ・コイルの“磁心”側は軟磁性、磁気スイッチ・位置検出・固定吸着など“磁石そのもの”が必要なら硬磁性、という切り分けから入ると設計の迷いが減ります。

磁性材料 一覧として押さえるフェライトの種類と特徴

フェライトは酸化物系の磁性材料で、金属磁性材料に比べて電気抵抗が大きい(電気を通しにくい)ことや、耐食性・耐薬品性に優れることがよく挙げられます。高周波で問題になりやすい渦電流損失が抑えられやすい一方で、陶器のように割れやすいなど機械的強度面の注意点もあります。
農業用途では、粉じん・泥水・肥料や薬剤に触れる環境があり得るため、「錆びに強い」「薬品に強い」というフェライトの性格は現場適性に直結します(ただし衝撃がある場所では欠け・割れ対策が必要)。
またフェライト磁石は温度環境でも使われ、例えば高温環境でも磁力が落ちにくい特性が活かされる用途例が示されています(ただし低温減磁など温度域によって注意点が変わるため、想定温度でのデータ確認が重要です)。
農業での見立てのコツ(例)

  • 泥水がかかる:金属系磁石の防錆コーティング前提か、耐食性が強い材料を優先
  • 振動が大きい:割れやすい材料はケース・樹脂で保護、固定方法も再検討
  • 高周波ノイズ対策:フェライトの「電波吸収体」「磁心」用途も視野

磁性材料 一覧で整理する永久磁石(JIS)と保磁力

永久磁石は硬磁性材料に分類され、工業的に重要な硬質磁性材料(永久磁石)の基本的磁気特性の最小値・公称値などを規定するJIS(例:永久磁石材料)が存在します。つまり「なんとなく強い磁石」ではなく、特性が規格・グレードで整理され、設計に落とし込みやすい世界です。
硬磁性材料に求められる代表的な指標は保磁力や残留磁束密度で、要するに「外乱(逆磁界や温度など)でどれだけ磁力が戻らずに保てるか」が重要になります。農業機械では、振動や衝撃だけでなく、モータ近傍の漏れ磁界、鉄粉の付着、温度上昇などが“磁石を弱らせる方向”に働き得るため、保磁力の考え方が実務で効いてきます。
さらにNd-Fe-B系のような高性能磁石では、保磁力の温度依存性や微細組織(結晶粒の微細化)と保磁力の関係が研究として示されており、「温度で弱くなる」を材料学的にどう抑えるかが性能の差になります(農機の電動化が進むほど、この論点が効きます)。
研究の入口として有用な論文(保磁力と温度・組織の関係)
耐熱や高温域での保磁力低下に関する背景理解:Dy を使わない Nd-Fe-B 磁石の開発動向(JIM)
加工条件と結晶粒微細化が保磁力に効く例:Nd-Fe-B磁石の保磁力の温度依存性に関する技術論文(大同特殊鋼)

磁性材料 一覧から選ぶ農業用センサーと磁気検出

農業では、トラクタや播種機、選果ラインなどで回転数・位置・速度を見たい場面が多く、磁石+磁気センサー(ホール素子等)や磁気エンコーダの構成が現実的です。ここでの材料選定は「磁石が強いか」だけでなく、周囲温度・油脂・泥の付着・振動に対して信号が安定するかが決め手になります。
フェライト系は耐食性面で扱いやすい一方、割れやすさや形状制約が出やすいので、筐体設計で補うのが定石です(割れ・欠けが起きると、磁束分布が変わってセンサーの閾値がズレる原因になります)。
また軟磁性材料側(磁気回路のヨークや磁束を通す部材)を適切に選ぶと、同じ磁石でも検出距離が伸びたり、ノイズに強くなったりします(「磁石だけ頑張る」より、磁気回路を整える方がコストが下がるケースもあります)。
参考:軟磁性材料の定義・基本整理(強磁性、硬質/軟質の区分)
基礎の読み合わせに便利:軟磁性材料とは(大同特殊鋼)

磁性材料 一覧にない独自視点:鉄粉付着と磁石の“農業トラブル”

検索上位の「磁性材料 一覧」は材料分類や特性説明に寄りがちですが、農業従事者の実務で効くのは“運用上の磁気トラブル”です。代表例が、整備作業や摩耗で発生する鉄粉が磁石に吸い寄せられて堆積し、センサーギャップを埋めたり、検出対象の形状を擬似的に変えたりして誤検知を起こすケースです。
この問題は材料の強さ(磁束密度)だけでなく、磁石の配置、シールド、清掃性、磁性体の近接(ボルト・ブラケットの材質)で発生確率が大きく変わります。対策としては、(1)磁石を外部露出させない、(2)鉄粉が溜まりにくい形状(角のポケットを作らない)にする、(3)磁性体部品の材質を見直して磁気回路が想定外に形成されないようにする、(4)清掃点検の手順を保守計画に入れる、が現場で効きます。
意外と盲点なのは「磁石が強いほど鉄粉を集めやすい」点で、必要以上に強い永久磁石を選ぶと信号マージンは増えても保守負担が増えるため、目的の検出距離・回転数に必要な強さへ“最適化”した方が長期運用で得になることがあります。
権威性のある日本語の参考リンク(用語・特性の体系整理に有用)
磁性材料の用語(飽和磁束密度、透磁率、コアロス等)をまとめて俯瞰:特集/よくわかる磁性材料(特殊鋼倶楽部)

 

 


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