育苗トレー選びで最初に押さえるべきは、穴数(#72、#128、#200など)とセル容量(cc)の組み合わせです。たとえば東罐興産のセルトレー仕様では、#128はセル容量24cc、#200は15ccと明記されており、同じ「育苗トレー」でも根域の広さが変わります。
この差は、育苗期間の長短と「苗の耐乾性」「追肥の入れやすさ」「根鉢の締まり方」に直結します。短期で回す作型なら穴数多めで面積効率を取り、定植まで日数が伸びる・暑期で水切れが怖いならセル容量に余裕を持たせる、という考え方が実務的です。
また、同一番号でも「インチ規格(278×542系)」と「国内標準規格(300×590系)」のように外形寸法が違う系統があります。東罐興産ではハードタイプとソフトタイプで系統を分けており、移植機・播種機・底面給水台の寸法が絡む現場では、この“外形の規格合わせ”が地味に効いてきます。
現場での失敗が多いのは「穴数だけ合わせたが、台に載らない/播種ラインで詰まる/運搬コンテナに合わない」パターンです。購入前に、トレー外寸・高さ・穴配列まで、手元の治具と突き合わせてください。
(規格・寸法の参考:セルトレーのセル容量、穴配列、寸法が一覧で整理されています)
セルトレーの規格(セル容量・穴配列・寸法)一覧
育苗中の病害は「出たら対処」より「出にくい条件を作る」が基本で、JA全農の資料でも、予防として種子や育苗資材の消毒徹底、病害が発生しにくい環境づくり、適正な灌水管理が重要だと示されています。
特に細菌病は高温・多湿条件で発生しやすく、育苗中は30℃以上の高温を避けるなど温度管理が要点になる、と明記されています。
ここで誤解されやすいのが「ハニカム構造=通気性が上がるから病害が減る」という短絡です。確かに底面形状やリブ・突起は根の空気接触や排水に寄与しますが、育苗ハウス内が高温多湿で、灌水が過多で、用土が長く飽和していれば、構造の差は相殺されます。
参考)【楽天市場】育苗トレー128穴の通販
逆に言えば、トレーの構造メリットを最大化するのは、温度・湿度・灌水の“再現性”です。経験値に依存して水を増減させるより、時間帯・用土水分・天候を記録して、同じ条件で同じ水の入れ方を繰り返せる体制が病害リスクを下げます。
(病害の原因菌の種類、予防の考え方、温度管理の注意がまとまっています)
水稲の育苗中における苗立枯病害の防除対策(JA全農)
灌水は「表面が乾いたからかける」だけだと、乾湿のブレが大きくなり、根の伸び方と病害条件が揺れます。JA全農資料でも適正な灌水管理を励行する重要性が繰り返し示され、過湿・高温の組み合わせが病害を助長しうる前提で書かれています。
ハニカム構造を意識するなら、狙いは“余分な停滞水を作らない”ことと“必要な水はムラなく入れる”ことです(排水が良い構造ほど、与水ムラがあると一部だけ乾きやすい点も同時に出ます)。
底面給水は、上からの散水で起きやすい「セル間の濡れムラ」「表土の締まり」「跳ね返りによる病原の拡散」を抑えやすい一方、給水時間が長いとトレー全体が長時間湿り続けるため、温度・換気とセット設計にする必要があります。
実装する場合は、トレー外寸が給水ベッドのピッチに合うか、トレーの高さが吸水マット・防根シート構成と干渉しないかを事前に確認し、現場の“載せ替え動作”まで含めて決めると失敗が減ります。
検索上位で語られがちなのは「穴数」「根鉢」「排水」ですが、現場で見落とされやすいのが“苗面上の空気の流れ”です。病害条件は高温多湿で強まりやすいとされるため、ハウス内の温湿度が均一でない(端だけ風が当たらない、棚の上段だけ熱がこもる)状態は、それだけでリスクを押し上げます。
ここで発想を借りたいのが、工業用途で語られるハニカム構造の「整流性」です。ハニカムコアは空気などの流体を整流する特性がある、と工業系の解説で示されています。
育苗現場で同じことを材料として持ち込む必要はありませんが、考え方は流用できます。具体的には、換気扇・循環扇・吸気口の配置を「風が当たる/当たらない」で終わらせず、トレー面に沿った風の筋(流れの道)を作り、苗面の結露・滞湿ゾーンを減らすのが狙いです。
参考)工業製品用ハニカムコア
チェック方法は難しくなく、早朝の結露の残り方(端列だけいつまでも濡れている等)や、同じ灌水でも乾きが遅い列の偏りを記録すると、気流ムラの“見える化”ができます。こうしたムラが減るほど、ハニカム構造の排水性・通気性の利点が素直に効き、結果的に苗の揃いにもつながります。