配線用遮断器の記号と漏電遮断器の図面での見分け方解説

農業用ハウスやポンプの電気図面、正しく読めていますか?配線用遮断器の記号の意味や、漏電遮断器との決定的な違いをわかりやすく解説します。機器を守るための知識、あやふやなままにしていませんか?
配線用遮断器の記号を完全攻略
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記号の基本

四角に「B」が目印。漏電遮断器「BE」との違いを一目で判別する方法を伝授します。

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農業現場での注意点

ポンプやハウス制御盤で多用されるモーターブレーカーの記号と役割を深掘りします。

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意外な落とし穴

JIS規格の記号に隠された「欠相保護」などの独自情報を詳しく解説します。

配線用遮断器の記号

配線用遮断器(MCCB: Molded Case Circuit Breaker)は、電気回路を過電流から保護するための重要な機器であり、図面や設備管理においてその記号を正しく理解することは不可欠です。特に農業現場では、ポンプやファンなどの動力設備が多く、トラブル時の対応速度が作物の命運を分けることもあります。ここでは、配線用遮断器の記号の基本的な形や意味について、専門的な知識がない方でも直感的に理解できるよう解説します。

 

参考)配線図記号5【HOZAN】 第二種電工試験の虎

参考リンク:公益社団法人 日本電気技術者協会(配線用遮断器の基礎知識と選定方法について詳しく解説されています)

配線用遮断器の記号と漏電遮断器の違い

 

電気図面を見る際、最も混同しやすいのが「配線用遮断器」と「漏電遮断器」の記号です。この二つは見た目が非常に似ていますが、保護する対象と機能が全く異なります。配線用遮断器は「使いすぎ(過負荷)」や「ショート(短絡)」から電線を守るのが主な役割であるのに対し、漏電遮断器はそれに加えて「漏電(電気の漏れ)」を検知して遮断する機能を持ちます。

 

参考)配線用遮断器と漏電遮断器の違い - 犬飼たつきちのDIYライ…

違いを見分けるポイントは、記号内のアルファベットにあります。

 

また、実際の機器(外観)においても、漏電遮断器には「テストボタン(緑色や赤色の小さなボタン)」がついているのが特徴です。農業用ハウスの分電盤を開けた際、テストボタンがあれば、それは漏電保護機能付きであると判断できます。

種類 図記号の文字 主な保護機能 農業現場での用途例
配線用遮断器 B 過負荷、短絡 照明、一般的なコンセント、ヒーター
漏電遮断器 BE / ELB 漏電、過負荷、短絡 水回りの機器、水中ポンプ、漏電火災防止

配線用遮断器の記号を電気図面で読む

電気図面(単線結線図など)において、配線用遮断器の記号は単なる四角形だけでなく、その周囲に付記される情報も重要です。図面には、その遮断器の定格電流(どれくらいの電気まで流せるか)や極数(何本の線を接続するか)が記号のそばに記載されています。これらの情報を読み取ることで、その回路にどの程度の負荷を接続できるかが分かります。

 

参考)JISC0303:2000 構内電気設備の配線用図記号

例えば、「3P 30A」と書かれていれば、「3極(3本の線)で30アンペアまで対応する配線用遮断器」という意味になります。

 

  • 極数(P): Poleの略。単相2線なら2P、三相3線なら3Pが一般的です。
  • 素子数(E): Elementの略。過電流を検知するセンサーの数を表しますが、図面では省略されることもあります。
  • フレーム(AF): 遮断器の容器の大きさ。耐久性や遮断容量に関係します。

農業用の大型機械を導入する際は、図面の記号を見て、既存のブレーカー容量で足りるかどうかを確認する必要があります。「B」の記号の横にある数字を見る癖をつけるだけで、設備増設時の失敗を大幅に減らせます。

 

参考)【よく使う電気図記号】JIS規格に基づく初心者向け解説

配線用遮断器の記号と農業用モーター

農業現場で最も多く使われる動力源である「モーター(電動機)」には、通常の配線用遮断器とは少し異なる特性を持つ「モーターブレーカー」が使われることがあり、その記号にも特徴があります。モーターは始動時(動き出し)に定格電流の数倍という大きな電流(始動電流)が流れます。通常の配線用遮断器では、この一瞬の大きな電流を「異常」と誤検知してトリップ(遮断)してしまうことがあります。

 

参考)よく使う電気設備の図面記号186選

そのため、図面上では以下のような記号や表記で区別されることがあります。

 

  • 記号内の文字: 四角の中に「M」または「MB」と書かれることがあります(Motor Breaker)。​
  • 傍記: 通常の配線用遮断器の記号の横に「モーター用」や「電動機保護用」と注釈が入るケースもあります。

    参考)https://www.mlit.go.jp/common/001108579.pdf

ビニールハウスの換気扇や灌水ポンプが頻繁に止まってしまう場合、設置されているブレーカーがモーターの特性に合っていない(通常の「B」がついている)可能性があります。図面の記号を確認し、「M」の表記があるか、あるいは選定が適切かを見直すことは、設備の安定稼働に直結します。

 

参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/mizu/sutomane/pdf/hozen_denki_2505.pdf

参考リンク:三菱電機(モーター保護用遮断器の特性や選び方に関する技術資料が豊富です)

配線用遮断器の記号と欠相保護の盲点

ここからは、一般的な検索ではあまり語られない、しかし農業従事者にとっては死活問題となる「欠相保護」と記号の関係について解説します。三相200Vを使用する農業用ポンプや乾燥機では、3本の電線のうち1本が断線する「欠相」というトラブルが起きると、モーターが焼損してしまいます。

 

実は、全ての配線用遮断器がこの「欠相」を検知できるわけではありません。図面や仕様書で以下の記号や表記を確認する必要があります。

 

  • 欠相保護付: 記号のそばに「欠相保護付」や「3E」といった表記があるか確認してください。「3E」は過負荷(Overload)、欠相(Phase failure)、逆相(Reverse phase)などをまとめて保護できる高機能なリレーを指す場合もありますが、ブレーカー単体で欠相保護機能を持つものも存在します。​
  • 中性線の扱い: 単相3線式の場合、中性線欠相保護機能付きのブレーカーが必要となり、図記号にもその旨が記載される(またはN端子の指定がある)ことがあります。​

「ブレーカーがついているから安心」と思い込んでいると、台風や落雷後の再通電時に欠相状態でモーターを回してしまい、高価な農機具を一瞬で壊してしまうリスクがあります。図面の記号だけでなく、実際に盤内のブレーカーに「欠相保護」の文字があるかを確認することをお勧めします。

 

参考)落雷からビニールハウスの電気設備を守る方法と備え - ニッポ…

配線用遮断器の記号の簡単な覚え方

最後に、現場で図面をパッと見て判断するための、配線用遮断器記号のシンプルな覚え方を紹介します。複雑な理論よりも、視覚的なイメージで記憶に残すのがコツです。

 

  • 「B」はBackbone(背骨)のB: 電気設備の背骨となる基本的なブレーカーだから「B」。あるいはシンプルにBreakerの「B」。

    参考)https://eleking.net/k21/k21i/k21i-symbol.html

  • 「BE」はBad Earth(悪いアース): 漏電(Earthへの漏れ)という「悪い(Bad)」状態を見張るから「BE」と覚えると、漏電遮断器と区別しやすくなります(※本来はBreaker + Earth leakageですが、覚え方として)。
  • 「E」がついたら要注意: 記号に「E」が含まれていたら、「Earth(大地・漏電)」に関係する安全装置だと警戒レベルを上げるイメージを持ちましょう。​

この3つのポイントを押さえておけば、複雑な電気図面を前にしても、「ここは普通の回路」「ここは水気があるから漏電対策がされている回路」といった大まかな構成を即座に把握できるようになります。

 

 


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