フィブリンとフィブリノーゲンの違い

フィブリンとフィブリノーゲンの違いを、止血の流れ・構造・役割・検査の見方まで整理し、現場での「出血」「炎症」とのつながりも解説します。あなたの疑問はどこにありますか?

フィブリンとフィブリノーゲンの違い

この記事でわかること
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フィブリンとフィブリノーゲンの違い

「血液中に溶けている材料」と「固まって網目になる最終産物」を、工程として理解できます。

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止血のしくみ(トロンビン・第XIII因子)

フィブリノペプチドA/Bの切断、フィブリン重合、架橋で「強い血餅」になる流れを整理します。

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農作業のケガ・応急手当との接点

大出血ではまず圧迫止血が基本で、体内ではフィブリン網が“止血材”として働く、という視点で現場に落とします。

フィブリン フィブリノーゲン 違いの結論を一言で整理

 

フィブリノーゲンは血漿(血液の液体成分)に高濃度で存在する「水に溶けるタンパク質」で、血液が固まる材料として待機しています。
一方のフィブリンは、トロンビンの作用でフィブリノーゲンが切断・変換された後に生じる「水に溶けにくい繊維状の網目」で、血餅(血のかたまり)の骨格になります。
つまり違いは、物質名の言い換えではなく「工程の前(材料)か、工程の後(網目)か」という位置づけの差です。
ここを混同しやすい理由は、どちらも止血に関わり、しかも臨床現場や記事では「フィブリン(ogen)」のように括弧付きで併記されることがあるためです。

 

参考)https://haematologica.org/article/view/9514

ただ、現場で役立つ覚え方はシンプルで、「フィブリノーゲン=のり前(溶ける)」「フィブリン=のり後(固まって網)」の関係だと押さえると迷いにくくなります。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6462751/

フィブリン フィブリノーゲン 違いを生むトロンビン切断とフィブリン重合

フィブリノーゲンがフィブリンへ変わる直接のスイッチは、トロンビン(活性化凝固第II因子)による切断で、まずフィブリノペプチドA(FPA)が外れ、続いてフィブリノペプチドB(FPB)が外れる、という順序で進みます。
FPAが外れることでフィブリンモノマーができ、分子同士が結合して二本鎖のプロトフィブリル(細い“ひも状の芯”)を作り始めます。
その後、FPBが外れると側方重合(lateral aggregation)が進み、より太い繊維ができて「フィブリン網」になっていきます。
この「切断→重合」という段階があるため、単に“固まる成分が増える”だけでなく、血餅の性質(密度、強度、溶けにくさ)が条件次第で変わります。

実際、フィブリン重合反応はpH、塩(NaCl)、Ca2+、フィブリノーゲン濃度、トロンビン濃度などに影響されると整理されています。

 

参考)フィブリン重合 | 一般社団法人 日本血栓止血学会 用語集

読み物としては難しく見えますが、要点は「体内条件や病態で、同じ“フィブリン”でもでき上がりの網目が変わる」という点です。

フィブリン フィブリノーゲン 違いと第XIII因子の架橋(安定化)

フィブリン網は、できた時点で完成ではありません。
活性化第XIII因子(FXIIIa)がトランスグルタミナーゼとして働き、フィブリン同士を架橋して「安定化フィブリン」にすることで、血餅はより丈夫になります。
この工程が入ることで、単なる“糸のからまり”ではなく、外力や血流に耐える「補強された網」へと変わります。
農作業を例にすると、刃物や機械で皮膚が裂けたとき、外側からは圧迫止血で血流を抑えつつ、内側ではフィブリン網が形成・補強されて出血が止まる、という二重の仕組みで考えると理解しやすいです。

 

参考)多量の出血|講習の内容について|講習について|日本赤十字社

「圧迫止血が基本」という救急の原則は、出血を物理的に減らして、体内の凝固(フィブリノーゲン→フィブリン→安定化)に時間と条件を与える行為だ、と言い換えられます。

フィブリン フィブリノーゲン 違いを検査値・臨床で誤解しないコツ

検査で「フィブリノーゲン値」と言うと、多くは血漿中のフィブリノーゲン(材料)の量を指し、低いと出血リスク、高いと血栓リスクなどの文脈で語られます。
一方で「フィブリン」という言葉は、血餅の構造成分としての意味だけでなく、体内で“形成された結果”や“沈着”として病態と結びつけて語られることが多い点が違います。
このため、記事や説明を読むときは「量を測っているのは材料(フィブリノーゲン)か」「生成物(フィブリン)の沈着や性質を論じているのか」を切り分けると混乱が減ります。
意外と重要なのが、「フィブリンができる=良いこと」と単純化できない点です。

フィブリン(ogen)は止血や創傷治癒に不可欠である一方、炎症、感染、血栓など多様な病態にも関わることがレビューで整理されています。

つまり、農業従事者の健康管理(脱水、長時間の同一姿勢、喫煙、生活習慣病など)という文脈でも、「凝固が過不足なく働くこと」が大切だと読み替えられます。

フィブリン フィブリノーゲン 違いを農業従事者の視点で活かす(独自視点)

農作業の現場では、転倒や刃物による切創だけでなく、「小さな傷が汚れやすい」「水仕事で皮膚がふやける」「手袋内の蒸れで皮膚バリアが落ちる」など、微小外傷が積み重なる状況が起こりがちです。
このとき体内では、フィブリノーゲンがフィブリンに変わって“傷口に一時的な足場”を作り、止血だけでなく治癒過程の基盤にもなる、という考え方ができます。
実際、フィブリン(ogen)は止血だけでなく創傷治癒・炎症・感染などとも関連する多面的な働きがある、と整理されています。
もう一つ、知っておくと得をする現場知識は「大出血は迷わず圧迫」が最優先だという点です。

専門用語を知らなくても、ガーゼやハンカチで傷口を直接強く押さえる直接圧迫止血が基本、という救急の説明が日本赤十字社の講習内容として明記されています。

“体の中のフィブリン網”は頼もしい仕組みですが、出血量が多いと追いつかないことがあるため、外からの圧迫で条件を整えることが最短の安全策になります。

意外な切り口として、フィブリンの形成は「トロンビンがフィブリンに吸着して局在する」こととも関係し、凝固反応が進む場を作るという見方も研究で示されています。

 

参考)Thrombin interaction with fibr…

要するに、血が固まるのは“成分が増える”だけでなく、“反応が起きやすい場ができる”という側面もあるため、フィブリンは単なる最終産物ではなく反応の舞台装置でもあります。

農作業のケガを減らす観点では、そもそも深い創を作らないこと(手袋・保護具、刃物の扱い、足場確認)が最重要で、起きたら圧迫止血と早期受診、という行動が結局いちばん合理的です。

止血の基本(直接圧迫)の公的解説:
日本赤十字社「多量の出血」:直接圧迫止血法と止血帯止血法の考え方がまとまっています
フィブリン重合(機序・用語)の専門解説:
日本血栓止血学会 用語集「フィブリン重合」:FPA/FPB、A-knob/a-hole、FXIIIa架橋まで工程が整理されています
図解レビュー(英語だが一次情報として強い):
Pieters & Wolberg, 2019「Fibrinogen and fibrin: An illustrated review」:フィブリノーゲン/フィブリンの役割が俯瞰できます

 

 


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