エンジン式チェーンソーの「燃料」で最初に決め打ちしてはいけないのが混合比です。混合比は機種・メーカー・指定オイルのグレードで変わり、同じ2サイクルでも50:1と40:1が普通に混在します(例:ゼノアは純正2サイクルオイルFD級で50:1、FC級で40:1という案内があります)。
また、メーカー側は混合比を外すこと自体をリスクとして明言しており、規定外の燃料や混合比だと摩耗やピストン焼き付きなど重大損傷の原因になる、という注意があります。農業現場だと「今日はA機、明日はB機」で燃料を共用しがちですが、混合比が違う機種を同じ携行缶で回すと事故の芽になります。
混合比の計算は慣れれば単純ですが、現場で間違えるのは「暗算のズレ」より「前提(比率)の取り違い」です。目安として、50:1はガソリン1Lに対してオイル20cc相当、40:1はガソリン1Lに対してオイル25cc相当です(ゼノアの表現でも同様の換算が示されています)。
参考)https://www.zenoah.com/jp/support-pages/faq/
ここで意外と知られていないポイントとして、混合比を合わせても“オイルの等級”が合っていないと狙った潤滑にならないことがあります。メーカーがFD級・FC級などを分けて案内しているのは、燃焼性や清浄性を含めた設計側の前提があるからで、混合比だけ真似しても安全側とは限りません。
✅現場でのルール例(間違いを潰す運用)
参考)チェンソーに適切な混合燃料
燃料トラブルで本当に怖いのは「エンジン不調」ではなく、携行缶の噴出・引火です。ガソリンは揮発性が高く、蒸気は空気より重いので、蓋を開けた瞬間に可燃性蒸気が出て小さな火源でも火災になる可能性がある、と消防庁資料で整理されています。
さらに、夏場の直射日光や高温環境では携行缶の内圧が上がり、蓋を開けた際に蒸気が噴き出すだけでなく、条件次第では突沸的に噴出する危険があることも示されています。
国民生活センターのテストでは、車内放置で内容物温度が60℃以上まで上昇した事例が示され、内圧が上昇した状態でキャップを外すとガソリンが激しく噴出し、飛散したガソリンに火花があれば広範囲に燃え上がった、という再現結果が掲載されています。農業の現場では「軽トラの荷台に積みっぱなし」「昼休憩で日なたに置いたまま」が起きやすいので、ここは知識ではなく作業標準に落とすべき部分です。
参考)ガソリン携行缶の取り扱いにご注意ください!!:徳島市公式ウェ…
✅携行缶の保管・置き場(現場向けの基準)
参考)https://www.mdpi.com/2673-4141/5/2/16/pdf?version=1715779267
ここも意外な落とし穴ですが、温度変化による内圧変化が繰り返されると、携行缶に亀裂が生じて漏えいする可能性がある、というテスト結果も示されています。つまり「噴出だけ気をつければOK」ではなく、保管環境が悪いと“缶そのものが傷む”方向でも事故確率が上がります。
給油は“こぼさない”より先に“噴出させない”が重要です。消防庁の留意事項では、携行缶を扱うときは周囲の安全確認をしたうえで、発電機などへ注油する際は蓋を開ける前にエンジンを停止することが必要、とされています。チェーンソーでも同じで、近くに火気や火花源がある状況で開放操作をすると、燃料が気化しているだけでリスクになります。
また、蓋を開ける前に少しずつエア抜きを行うことが望ましい、と消防庁資料で示されています。国民生活センターも、エア調整ねじがあるものはキャップを外す前に圧力調整を行うことで噴出を防げる、と説明しています。
ここで現場で起きがちな誤りは「とりあえずエア抜き」ですが、消防庁は直射日光や排気口などで温められている場合、蓋の開放だけでなく“エア抜きも厳禁”としており、日陰に移動して常温に下がるまで(目安として6時間程度)置いた後にゆっくりエア抜きをする、という強い注意があります。この“エア抜きさえ危ない条件がある”点は、上位記事でも薄く触れられがちなので、現場教育の核にすると事故予防の質が上がります。
✅給油の基本動作(最低限ここだけは固定)
混合燃料は「混ぜたつもり」になりやすいのが問題です。メーカーは、許可された携行缶の中で混ぜ、混合後によく振って均一化することを勧めています。この“よく振る”は単なる形式ではなく、混ざりムラがあると、給油するタイミングによって実質的な混合比がブレてしまうからです。
混合の順番も、現場の時短で逆にしがちですが、メーカーは携行缶に「先にオイル、その次にガソリン」を注ぎ、混合してから給油する手順を示しています。オイルを先に入れる意図は、流入するガソリンの勢いで攪拌を助け、容器底でオイルが偏るのを減らすことにあります。
そして重要なのが、混合燃料は“不適切な燃料や混合比”がエンジンの重大損傷につながりうる、というメーカー注意です。農業従事者の方は機械の稼働停止がそのまま作業停止になるので、燃料で不確実性を増やすのは割に合いません。
✅混合のミスを減らす工夫
独自視点として強調したいのは、「燃料の危険は真夏だけではない」という現場ギャップです。国民生活センターは夏場の車内放置を代表例として取り上げていますが、農業だと春秋でも“日なたの軽トラ荷台+昼の気温上昇+作業待ち”で条件が揃います。真夏にだけ気をつける運用は、その他の季節に油断が出る分、事故の波が残ります。
もう一つ、見落とされやすいのが「変形した缶は危険サイン」という点です。国民生活センターは、内圧上昇で一度でも変形した携行缶は、その後の比較的小さな内圧変化でも繰り返しで亀裂が生じ漏えいする可能性があるため、変形したことがある携行缶の使用は控えるように、としています。農業現場の倉庫は温度変化が大きく、道具が密集しやすいので、携行缶が少しでも膨らんだ・へこんだ経験があるなら、それは“燃料管理を見直せ”という合図です。
✅季節を問わない対策(現場で続く形)
携行缶の「高温・内圧・噴出」は、チェーンソーの燃料作業の中でもっとも事故の重さが大きい領域です。混合比の正確さと同じくらい、開放手順と置き場のルール化が、作業者と現場を守る実務になります。
携行缶の高温・噴出・エア抜き注意(行政・公的テストの根拠)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20210218_2.pdf
携行缶の留意事項(直射日光回避、エンジン停止、エア抜き、温められた場合の厳禁事項)
https://www.fdma.go.jp/publication/ugoki/assets/2511_08.pdf
メーカーの混合燃料手順(携行缶で混合、50:1、よく振る、不適切燃料の損傷リスク)
チェンソーに適切な混合燃料