エネルギー自給率は、「国民生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、自国内で産出・確保できる比率」を指します。一次エネルギーとは、石油・天然ガス・石炭・原子力・太陽光・風力など、エネルギーの“もともとの形態”です。これらは発電や熱利用を経て電気・ガソリン・蒸気などに姿を変えます。
ここで重要なのは、「電気の自給」ではなく「一次エネルギーの自給」を見ている点です。たとえば、国内で発電していても、その燃料(LNGや石炭)が輸入なら一次エネルギーの観点では自給とは言いにくく、値は上がりません。日本のエネルギー自給率が低水準になりやすい理由は、この一次エネルギーにおける輸入比率が非常に高いからです。
(参考リンク:エネルギー自給率の定義、一次エネルギーの説明、主要国比較と日本の最新水準がまとまっている)
資源エネルギー庁「日本のエネルギー2024:安定供給(エネルギー自給率の推移)」
公的資料(資源エネルギー庁)では、2021年度の日本のエネルギー自給率は13.3%と示されています。さらに2022年度は12.6%で、OECD諸国と比べても低い水準と説明されています。数字が1年で上下するのは、燃料輸入量・発電の内訳・需要(景気や気温など)で一次エネルギー供給が動くためです。
また、同じ資料内で「海外から輸入される石油・石炭・天然ガス(LNG)など化石燃料に大きく依存」と明記されています。つまり、最新値が12〜13%台に戻っても、“構造としての輸入依存”は続いており、短期の改善に過度な期待を置くのは危険です。
(参考リンク:2021年度13.3%、2022年度12.6%という最新水準と定義、輸入依存の説明がある)
資源エネルギー庁「日本のエネルギー2023:安定供給(エネルギー自給率の推移)」
推移を理解するうえで外せないのが、2010年度から2014年度にかけての急落です。資源エネルギー庁の公的資料では、2010年度は20.2%だった一方、2014年度は過去最低の6.3%まで落ち込んだと説明されています。大きな背景は、2011年以降の原子力発電量の減少で、特に2014年度は原子力の発電量がゼロになったことが明記されています。
ここで「意外に見落とされがち」なのは、単に“原子力が止まったから”で終わらない点です。原子力の穴を埋めるために火力が増えると、燃料として原油・LNG・石炭の輸入が膨らみ、一次エネルギーの輸入依存が一段と強まります。結果として、自給率の分子(国内で産出・確保)が増えないまま、分母(一次エネルギー供給)が輸入燃料で積み上がり、自給率が下がりやすい構造が生まれます。
(参考リンク:2014年度6.3%が“過去最低”である理由(原子力発電量ゼロ)まで文章で確認できる)
資源エネルギー庁「エネルギー白書:エネルギー需給の概要(2014年度の自給率低下)」
2015年度以降は、過去最低からは持ち直しています。資源エネルギー庁の資料では、2014年度6.3%を底に、その後は(原子力の一部再稼働や再エネ導入の進展と整合する形で)2021年度13.3%、2022年度12.6%という水準が示されています。つまり、推移としては「急落 → 回復基調 → ただし震災前水準には未達」という読みになります。
一方、輸入構造の頑固さも同時に見ておく必要があります。公的資料では、化石燃料への依存が高いこと、さらに原油は中東に90%以上依存していることが示されています。これにより、国際価格や地政学リスクの影響が国内の電気・燃料費に波及しやすく、現場のコスト計画(特に燃油・電力・輸送)を不安定にします。
(参考リンク:2022年度12.6%、原油は中東90%以上依存、輸入依存の説明がまとまっている)
資源エネルギー庁「日本のエネルギー2024:安定供給」
ここからは検索上位で“正面からは語られにくい”農業視点で、推移を現場の手触りに落とし込みます。エネルギー自給率が低い国では、輸入燃料の価格変動が、農業の「燃油・電力・肥料」に同時多発で効きやすくなります。とくにハウス加温、乾燥調製、選果・冷蔵、揚水・灌漑など、電気と燃料の両方を使う工程が多い経営ほど影響が表れます。
意外な盲点は、電気代だけではなく「肥料コスト」がエネルギーと強く結びついている点です。窒素肥料の主原料・製造はエネルギー価格の影響を受けやすく、燃料高は肥料高に波及しやすい(結果として作付け判断にも影響)という“二段階の効き方”になります。推移を読む目的は、国全体の議論のためだけでなく、経営として「価格が跳ねる局面が周期的に来る前提」を置き、手当て(省エネ・自家利用・契約の工夫)を積むことにあります。
現場で実行しやすい対策の方向性を、エネルギー自給率の文脈に沿って整理すると次の通りです。
- 🔥 燃油の使用量を“固定費化しない”運用:稼働の平準化、設定温度の根拠化、断熱・保温カーテンの投資判断。
- ⚡ 電力のピークを作らない:同時稼働機器の見直し、タイマー制御、契約電力と実負荷の点検。
- 🌿 熱・電気の地産地消:太陽光の自家消費、蓄電や運転時間の最適化、地域資源(未利用熱など)の検討。
- 📦 物流の燃料感応度を下げる:出荷頻度・共同配送・保冷の最適化(燃料と電力を両方節約)。
こうした対応は、ニュースに振り回される“その場しのぎ”ではなく、エネルギー自給率の低さという構造条件に合わせた、再現性のある経営改善になります。
(参考リンク:エネルギー自給率の定義と、化石燃料・原油輸入依存の前提(中東90%以上依存)が一次情報で確認でき、農業コストの議論の土台にできる)
資源エネルギー庁「日本のエネルギー2024:安定供給」