農道沿いで農薬散布ドローンを飛ばすだけで、警察から書類送検されることがあります。
農業用ドローンを飛ばすとき、「申請は国土交通省だけでいい」と考えている農業従事者は少なくありません。しかし実際には、飛行の内容や場所によって、国土交通省と警察という2つの窓口への手続きが必要になる場合があります。この役割分担を最初に整理しておくと、後の手続きで迷うことがなくなります。
国土交通省(DIPS2.0)が担当するのは、「空の安全」に関する許可・承認です。人口集中地区(DID地区)の上空飛行、夜間飛行、農薬や肥料の散布(物件投下・危険物輸送)など、特定の飛行条件に当てはまる場合は国交省への飛行許可申請が必要になります。農薬散布ドローンは必ずこの申請が必要です。
一方、警察が関わるのは主に「道路の安全・交通」に直結する場面です。農道や一般道の上に離発着ポイントを設けたり、補助者が道路上に立って交通の妨げになったりする場合は、道路交通法に基づいた道路使用許可を管轄の警察署に申請しなければなりません。つまり「空は国交省、道路は警察」という分業体制です。
この2つを混同して「国交省の申請があれば問題ない」と思って飛ばしてしまうと、道路交通法違反で書類送検になるリスクがあります。農業の現場では、農道沿いや畦道に囲まれた圃場でドローンを運用することが多いため、この点は特に注意が必要です。
農業での運用では基本的に「3つの申請」が軸になります。
| 手続き | 窓口 | タイミング |
|---|---|---|
| ①機体登録 | 国交省(ドローン登録システム) | 飛行前に1回(購入後すぐ) |
| ②飛行許可・承認申請 | 国交省(DIPS2.0) | 飛行の10開庁日前まで |
| ③飛行計画登録(FISS) | 国交省(DIPS2.0) | 飛行の都度 |
| ④道路使用許可(必要な場合) | 管轄の警察署 | 飛行前に相談・申請 |
まず①〜③を確認し、その上で農道や道路での離発着が絡む場合は④を確認する、という順番で進めると手戻りが少なくなります。
農薬散布ドローンに必ず申請が必要なのは、農薬の散布という行為が航空法上の「物件投下」かつ「危険物輸送」に該当するためです。これを知らずに申請を省略してしまうと、航空法違反として最大50万円の罰金が科されます。
「物件投下」とは、飛行中に物を落下・散布させる行為を指します。農薬や液体肥料を上空から散布することは、まさにこれに当てはまります。「危険物輸送」については、農薬が法的に危険物として分類されるため、タンクに農薬を積んで飛行させる時点でこの条件を満たします。
申請の際に記載する「飛行許可が必要な理由」の選択欄では、「危険物の輸送」と「物件投下」の両方にチェックを入れる必要があります。圃場が人口集中地区(DID地区)に近い場合や、住宅から30m以内で作業する場合は「人又は家屋の密集している地域の上空」にも追加でチェックします。
飛行申請の種類は「個別申請」と「包括申請」の2種類があります。個別申請は飛行する日時・場所を特定して都度申請するため、天候変更や日程変更のたびに再申請が必要になります。農薬散布は天候に左右されることが多いため、1年間・全国の圃場を一括で申請できる包括申請が実務上の選択肢として有利です。
包括申請の主なメリットを整理すると以下のとおりです。
- 飛行期間:最長1年間(年1回の更新で継続可能)
- 飛行範囲:日本全国(飛行禁止エリアや個別申請対象エリアを除く)
- 複数の圃場を一括申請できるため、毎回申請する手間が不要
- 天候変更や散布スケジュールの変更に柔軟に対応できる
申請は飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前(約2週間前)までに完了する必要があります。実際には申請内容の不備による差し戻しも起きるため、散布シーズンの1カ月前を目安に申請を始めておくのが安全です。
農林水産省の案内にも「散布予定日の少なくとも10開庁日前」と明記されています。申請の遅れが散布シーズンに影響しないよう、早めの対応が重要です。
参考リンク(農林水産省 農薬散布ドローンの飛行許可申請に関する案内)。
農林水産省|航空法に基づく飛行の許可・承認手続きについて(農薬散布)
「畦道や農道から離発着させるだけなら問題ない」と思っていると、思わぬ落とし穴があります。道路上空を単に通過するだけであれば、原則として道路使用許可は不要とされています。しかし、道路上や歩道での離発着・補助者の配置・立看板の設置などは、道路交通法の「危険や交通妨害」に当たる可能性があり、管轄警察署への道路使用許可申請が必要になります。
農業の現場でよく起きるパターンとして以下のものが挙げられます。
- 農道上(または農道に接した畦道)から直接ドローンを離発着させる
- 飛行中に農道上で補助者が立ちっぱなしで誘導・監視する
- 圃場の出入り口を塞ぐ形で機材を置いて操縦する
- 注意喚起の立看板を農道に設置する
農道は、市道や町道として管理されているケースが多く、道路交通法の適用を受ける「道路」に含まれます。畦道も、公道として管理されている場合は同様です。「農地の中だから大丈夫」と判断するのは危険で、まず土地の管理主体(市町村の農林担当や道路管理者)に確認し、必要に応じて警察署への相談に進む流れが確実です。
警察庁の通達では、道路上空の飛行そのものは原則として道路使用許可が「不要」と整理されています。ただし、危険を生じさせたり交通を妨害する可能性がある行為(離発着、補助者の立入、看板設置など)は許可が必要と読み取れます。
参考リンク(警察庁 道路使用許可に関する通達)。
警察庁|無人航空機に係る道路使用許可の取扱いについて(通達)
道路使用許可の申請先は、飛行場所を管轄する警察署(交通課)です。申請書には、現地の見取り図(配置図)、日時・時間帯、補助者の人数や位置を記載します。東京都の場合、申請手数料は工事・作業以外の目的で2,100円程度が目安です(都道府県によって異なります)。迷った場合は「道路使用許可の事前相談をしたい」と電話でつなぐとスムーズです。
農業用ドローンを購入したら、まず行うべき手続きが「機体登録」です。2022年6月20日以降、100グラム以上のすべてのドローンに機体登録が義務化されました。未登録のまま飛ばすと「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。これは警察ではなく国交省管轄の違反ですが、農業用の大型ドローンは確実に対象です。
機体登録の手数料は以下のとおりです。
| 申請方法 | 手数料(1機目) |
|---|---|
| 書類申請 | 2,400円 |
| 免許証・パスポートによるオンライン申請 | 1,450円 |
| マイナンバーカード・gBizIDによるオンライン申請 | 900円 |
マイナンバーカードを活用したオンライン申請が最も安く、スマートフォンでも手続きできるため最初の選択肢として有力です。
農業用ドローンには「リモートID」の搭載も必要です。リモートIDとは、ドローンが飛行中に自分の情報(機体ID・位置・高度など)を周囲の受信機に無線で発信する装置で、自動車のナンバープレートに相当します。現状では農業用ドローンの多くにリモートIDが内蔵されておらず、外付けの機器を別途購入・搭載する必要があります。市販されている外付けリモートIDの価格は4万円台のものが多い状況です。
リモートIDの接続・登録作業は意外に手間がかかり、農繁期前のバタバタした時期に始めると間に合わないケースもあります。機体購入のタイミングで代理店に「リモートIDの搭載と登録サポート」を確認しておくと、手続き漏れを防ぐことができます。なお、代理店によっては②の飛行許可申請もまとめて代行してくれるため、購入時にどこまでサポートしてもらえるか確認するのが得策です。
参考リンク(国土交通省 機体登録ポータル)。
国土交通省|無人航空機登録ポータルサイト
農業従事者の多くは、圃場がどこにあるかを気にしても、その周辺に「重要施設」があるかどうかまでは意識しないのが普通です。しかし「小型無人機等飛行禁止法」では、国会議事堂・首相官邸・原子力発電所・空港など特定の重要施設の周辺300メートル以内は原則飛行禁止とされています。この区域内に圃場がある場合、飛行前に管轄の警察署を経由した「通報手続き」が必要になります。
これは「許可をもらう」というより、所定の様式で届け出る手続きです。添付書類として飛行区域を示す地図が必要で、期限が決まっているため、直前の相談では間に合わないことがあります。
圃場が重要施設に近いかどうかは、地図アプリで圃場の住所と施設の距離を目視で確認するのが第一歩です。距離感が掴みにくい場合、300メートルとは、東京ドームの外野席から内野席まで(約100m)の約3倍程度の距離です。水道施設や電力施設の周辺でも対象になる場合があるため、圃場の周囲を一度確認しておく価値があります。
参考リンク(警察庁 重要施設周辺の通報手続き案内)。
警察庁|小型無人機等飛行禁止法に基づく通報手続きの概要
さらに農業従事者が見落としがちなのが、自治体独自のルールです。都道府県や市町村によっては、ドローン農薬散布の「空中散布計画書」や「実績報告書」の提出を独自に義務付けているところがあります。国の手続きだけを満たしても、地域のルールを守っていなければ、地域農業振興部門や市町村窓口から指摘を受けることになります。
自治体のルールは、圃場がある市町村役場の農林担当窓口に「ドローンによる農薬散布を予定しているが、提出が必要な書類はあるか」と事前確認するのが最も確実です。この確認1本で、追加の手続き漏れをまとめて防ぐことができます。
参考リンク(農業用ドローン法令・手続き参考)。
石川県|農業用ドローン安全確保の手引き(PDF)
これまでの内容を踏まえ、農業用ドローンを農薬散布に使うための申請の流れを整理すると、スムーズに動ける手順が見えてきます。
まず散布シーズンの1〜2カ月前には行動を開始するのが鉄則です。申請期限(10開庁日前)のギリギリに動くと、不備があった場合に散布シーズンに間に合わなくなるリスクがあります。以下に実践的な段取りをまとめます。
ステップ1(機体購入時):代理店でリモートID搭載・機体登録サポートの有無を確認する。
機体が届いたらすぐに機体登録を行い、リモートIDを搭載します。これが完了していないと、次のステップに進めません。機体登録は国交省の「無人航空機登録ポータルサイト」から行います。
ステップ2(散布シーズン1〜2カ月前):DIPS2.0で包括申請を行う。
農薬散布では「危険物輸送」「物件投下」の2項目が必須チェック項目になります。操縦者の飛行経歴(10時間以上)と投下経験(5回以上)も記録しておく必要があります。不安な場合は、行政書士への申請代行(包括申請の相場は1万9,800円〜2万4,200円程度)も選択肢です。
ステップ3(申請後・飛行前):農道や道路での離発着の有無を確認し、必要なら警察署に事前相談する。
圃場周辺の地図を改めて確認し、離発着ポイントが農道・市道・町道に接している場合は、管轄警察署(交通課)に「道路使用許可の要否を確認したい」と相談します。また、自治体独自の提出書類(散布計画書など)の有無も市町村に確認します。
ステップ4(飛行当日):FISS(飛行情報共有システム)に飛行計画を登録する。
飛行の都度、DIPS2.0上のFISSで飛行計画登録が必要です。サイトが混雑して登録に時間がかかることがあるため、余裕を持って当日早めに行います。
申請が完了していても、当日は飛行許可書・通報の控え・連絡先をすぐ提示できるように携行します。飛行中に警察や近隣住民から声をかけられた場合も、書類を見せることで誤解を防ぐことができます。
手続きは複数の窓口に分かれており煩雑に感じますが、「最初の包括申請さえ完了すれば、1年間は申請不要」という状態になります。それが条件を満たせば問題ありません。農繁期に毎回申請の手間を取られないためにも、早めの包括申請が農業従事者にとって最も合理的な選択です。
参考リンク(DIPS2.0 ドローン情報基盤システム)。
国土交通省|ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)

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