膨張剤コンクリート配合でひび割れ抑制効果と施工手順

農業用水路や土間コンクリートの寿命を延ばす鍵、膨張剤。その正しい配合比率と、ひび割れを防ぐ施工・養生の重要手順を現場視点で解説。あなたの配合は間違っていませんか?

膨張剤のコンクリートの配合

膨張剤配合の極意
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基本配合は20kg/m³

多くの製品で1立米あたり20kgが標準。セメント袋換算の計算が必須。

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湿潤養生が命

膨張反応には水が必要。練り混ぜ後5~7日間は絶対に乾燥させてはならない。

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ケミカルプレストレス

内部から圧力をかけ、乾燥収縮による引張応力を相殺しひび割れを防ぐ。

膨張剤コンクリート配合のひび割れ抑制のメカニズムと種類


なぜコンクリートは割れるのか、そしてなぜ膨張剤を入れるとそれが止まるのか、その根本原理を理解することは、適切な配合を行う上で不可欠です。


  • 乾燥収縮の罠: コンクリートは水分が蒸発する過程で体積が小さくなり(乾燥収縮)、その際に引っ張られる力が働いて「ひび割れ(クラック)」が発生します。農業用水路や納屋の土間など、広い面積を打設する場合、このリスクは顕著です。
  • ケミカルプレストレス: 膨張剤を配合すると、コンクリート硬化初期に内部で膨張反応が起きます。この膨張圧が、あらかじめコンクリートに圧縮力(プレストレス)を与えます。将来的に乾燥収縮で「縮もうとする力」が発生しても、先に与えておいた「伸びようとする力」が相殺するため、ひび割れが抑制されるのです。

    参考)膨張コンクリートの種類やメリット、配合、膨張材の種類を解説

主な膨張剤の種類
膨張剤は主に2つの化学反応タイプに分かれます。現場の環境や目的に応じて選定されますが、一般流通品(デンカ、太平洋セメント等)の多くはこれらを複合利用しています。


種類 反応物質 特徴 用途
エトリンガイト系 針状結晶 反応が早く、水密性が向上しやすい。 一般建築、水路補修
石灰系 水酸化カルシウム 膨張量が大きく、持続的な効果が期待できる。 大規模構造物
複合系 両方 両者のメリットを併せ持ち、制御しやすい。現在の主流。 汎用(20kg/m³タイプが多い)

膨張コンクリートの種類やメリット、配合、膨張材の種類を解説(コンクリートの専門サイト)
※この記事では、エトリンガイト系や石灰系の化学反応の違いと、それぞれのメリットについて専門的な視点で詳述されています。


膨張剤コンクリート配合の単位量の計算とセメント比率

「適当に混ぜれば強くなる」わけではありません。膨張剤は「単位量(kg/m³)」の厳密な管理が求められます。多すぎれば過膨張で破壊され、少なければ効果がありません。


基本の配合ルール:20kg/m³
現在流通している「低添加型」と呼ばれる膨張剤(例:デンカパワーCSAタイプS、太平洋エクスパンなど)の多くは、コンクリート1m³あたり20kgを標準使用量としています。


参考)https://www.soc-tec.com/mix/pdf/super_sacs_s.pdf?ver=1.0.3

【重要】セメントとの置換(内割り)
配合計算において、膨張剤は「セメントの一部」として扱います。


例えば、単位セメント量が300kg/m³の配合設計の場合。

  • 間違い: セメント300kg + 膨張剤20kg
  • 正解: セメント280kg + 膨張剤20kg(合計で結合材300kg)

DIY・小規模現場での計算(1袋単位)
農業現場でミキサーを回す際、1m³も一度に練ることは稀です。セメント1袋(25kg)に対する割合を知っておく必要があります。


  • 計算式:

    一般的なコンクリート(セメント量 約300kg/m³想定)の場合、膨張剤の比率はセメント重量の約6.6%~7.0%程度です。


  • 実用目安:

    セメント25kg 1袋に対して、膨張剤 約1.6kg~1.7kg を投入します。


⚠️ 注意点: 必ず計量器で測ってください。「スコップ1杯」などの目分量は、強度不足やポップアウト(剥離)の原因になります。


低添加型コンクリート用膨張材スーパーサクス タイプS(住友大阪セメント)
※製品カタログですが、標準配合量20kg/m³の根拠や、「内割り」での配合計算方法が図解で示されており、計算ミスを防ぐのに役立ちます。


膨張剤コンクリート配合の現場での投入手順と練り混ぜ

良い配合設計ができても、ミキサーへの投入タイミングを間違えると、膨張剤がダマになり、その部分だけが異常膨張してコンクリートを破壊する恐れがあります。


正しい投入順序

  1. 骨材(砂・砂利)を入れる。
  2. セメントを入れる。
  3. 膨張剤を、セメントの上に広げるように投入する。
    • ポイント: 水を入れる前に、セメントと膨張剤、骨材を「空練り」して分散させることが理想です。
  4. を投入し、練り混ぜる。

やってはいけないNG行動

  • 水への先行溶解: 膨張剤を水に溶かしてから投入してはいけません。即座に反応が始まり、効果が失われます。
  • 後添加(あと添加): 練りあがったコンクリートに後から膨張剤を振りかけるのは厳禁です。分散不良を起こします。
  • 練り置き: 膨張剤入りのコンクリートは、通常のコンクリートよりも硬化(スランプ低下)が早い傾向があります。練り混ぜたら、できるだけ早く(30分〜1時間以内)打設を完了させてください。

低添加型コンクリート用膨張材 デンカパワーCSA(白石建設)
※「セメントと同時にミキサに投入してください」という具体的な投入指示や、過剰添加による強度低下のリスクについて明記されています。


膨張剤コンクリート配合後の湿潤養生の期間と重要性

ここが最も多くの人が失敗するポイントです。「膨張剤を入れたからひび割れない」のではありません。「膨張剤を入れて、水をたっぷり与えたからひび割れない」のです。


なぜ水が必要なのか?
膨張剤(特にエトリンガイト系や石灰系)が結晶を作り出し体積を増やすためには、大量の水分を消費します。もし養生期間中に乾燥してしまうと、膨張反応が止まるばかりか、逆に乾燥収縮が加速し、膨張剤を入れた意味がなくなります。


参考)https://www.fujita.co.jp/tech_center/img/up/2024/2024_11.pdf

推奨される養生方法

  • 湛水(たんすい)養生: 水路底盤や土間なら、周囲を囲って水を張るのが最強の養生です。
  • 散水+シート: 水を撒き、その上からブルーシートや養生マットを被せて水分の蒸発を防ぎます。乾いたらすぐに水を補給します。

養生期間の目安

  • 期間: 最低でも5日間、理想は7日間の湿潤状態を維持してください。
  • 特に打設直後の1~3日目は、膨張圧が立ち上がる重要な時期です。この期間の乾燥は致命的です。

湿潤養生期間が膨張材を用いたコンクリートの膨張・収縮特性に及ぼす影響(フジタ技術センター)
※養生期間が不足すると膨張ひずみが十分に得られず、収縮補償効果が低下することを実験データに基づいて解説している専門論文です。


膨張剤コンクリート配合の農業用水路補修での活用事例

農業現場、特に用水路の補修において、膨張剤は単なる「割れ防止」以上の価値を発揮します。検索上位ではあまり語られない、現場の実益に焦点を当てます。


コールドジョイント(打ち継ぎ目)の止水
長い水路を補修する場合、どうしても数回に分けてコンクリートを打つことになります。古いコンクリートと新しいコンクリートの境目(打ち継ぎ目)は、乾燥収縮により隙間ができやすく、そこから漏水します。


膨張剤を配合することで、新しいコンクリートが膨らみ、古いコンクリートに「押し付けられる」力が働きます。これにより、継ぎ目の密着性が高まり、漏水リスクを大幅に低減できます。


鉄筋の防錆効果
膨張剤(特にエトリンガイト系)を使用すると、コンクリートの組織が「緻密」になります。これは、内部の微細な空隙が膨張反応生成物で埋められるためです。


  • 結果: 水や酸素、塩分がコンクリート内部に浸透しにくくなります。
  • メリット: 内部の鉄筋が錆びにくくなり、水路や施設の耐用年数が飛躍的に延びます。特に凍害や塩害が懸念される地域の農業施設では、20kg/m³の投資対効果は非常に高いと言えます。

補修材との併用
最近では、水路補修専用のポリマーセメントモルタルにも膨張機能を持たせた製品が登場しています。DIYレベルを超える大規模な補修では、こうした専用プレミックス製品(水を混ぜるだけのもの)を選ぶのも賢い選択です。


参考)農水路規格適合 補修材 「PWモルタル/PW目地(タイプA)…

農水路規格適合 補修材 「PWモルタル」(前田工繊)
※農業水利施設の補修に特化した製品ページ。短繊維とポリマーを配合し、さらに膨張機能を持たせることで水路特有の過酷な環境に耐える設計思想が参考になります。




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