貧酸素水塊と釣り|時期や影響、回避ポイント選び

海底に発生する貧酸素水塊は、夏季の釣果を左右する重要な現象です。魚の行動や分布にどのような影響を与え、どう対処すれば釣果を維持できるのでしょうか?

貧酸素水塊と釣り

この記事のポイント
🌊
発生メカニズム

夏季の成層化と底層の酸素消費により海底付近に酸素不足の水塊が形成される現象

🐟
魚への影響

底生魚や根魚が酸素のある表層や潮通しの良い場所へ移動し、釣果が激減

📍
回避策

分布予測システムの活用や潮通しの良い外海側ポイントの選択が有効

貧酸素水塊の発生メカニズムと時期


貧酸素水塊は、海水中の溶存酸素濃度が極端に低下した水の層を指す水産学の用語で、特に閉鎖性の高い内湾で夏季に発生する現象です。東京湾や大阪湾などの内湾では、春から夏にかけて表層水温が上昇することで、水温の低い底層水との間に明確な境界(成層)が形成されます。この成層により上下の海水混合が抑制されると、底層への酸素供給が途絶えてしまうのです。


参考)貧酸素水塊についてABU好きがアブなげなくまとめてみた - …

さらに、陸域から流入した栄養塩によって富栄養化が進み、植物プランクトンが大量発生します。死滅したプランクトンが海底に沈降すると、バクテリアがこれを分解する過程で大量の酸素を消費し、底層の溶存酸素濃度が急速に低下します。東京湾では梅雨明け後の7月から9月にかけて、特にお盆前後に貧酸素水塊が最大規模に達することが知られています。


参考)大阪湾貧酸素水塊分布情報

発生条件として重要なのは以下の要素です。


  • 🌡️ 高水温による強い成層の形成
  • 💧 陸域からの栄養塩・有機物の流入増加
  • 🌾 植物プランクトンの大量発生と沈降
  • ⏱️ 上下混合の停滞による酸素供給の遮断
  • 🏗️ 埋め立てや浚渫による海底地形の変化

    参考)貧酸素水塊|貧酸素水塊、青潮|東京都環境局

環境省による貧酸素水塊の発生メカニズムの詳細な図解資料(PDF)

貧酸素水塊が釣りに与える影響

貧酸素水塊の発生は、釣り人にとって「釣果が激減する、あるいは全く釣れなくなる」という深刻な現象です。一般的に溶存酸素濃度が3mg/L以下になると多くの魚介類に何らかの悪影響が現れ始め、2mg/L未満では底生魚介類の生息に深刻な影響を及ぼします。カサゴやアイナメなどの根魚、カレイなどの底生魚、さらには海底を這うタコやイイダコまで、通常は居付きの生き物でも酸素のある場所へ逃避します。


参考)貧酸素水塊に襲われた三番瀬のシーバスは釣れたのか!?|くわー…

東京湾の三番瀬では、20年ほど前まで盛んに釣れていたイイダコが、晩夏の貧酸素水塊(その後青潮に変化)の発生が常態化してから全く釣れなくなったという報告があります。また、シーバスについても、貧酸素水塊が底生生物を主食とする個体の索餌空間を著しく制限し、成長や生残に負の影響を与えている可能性が指摘されています。特に東京湾奥部では、慢性的な低酸素ストレスがシーバス個体数の減少要因の一つとなっているという研究結果も報告されています。


参考)【ブログ】 東京湾奥におけるシーバス個体数減少とクロダイ個体…

魚種別の影響をまとめると以下のようになります。


魚種カテゴリ 主な影響 行動パターン
回遊魚(アジ・サバ等) 即座に他海域へ移動​ 酸素のある外海へ逃避
根魚(カサゴ・メバル等)

表層や浅場へ移動
参考)若洲海浜公園の釣果は?2025最新情報と釣れるポイント完全解…

酸欠を察知し退避
底生魚(カレイ・ハゼ等)

生息域の著しい制限
参考)東京湾奥における夏の水質悪化と釣り|棚部裕貴|東京湾チニング

貧酸素域から離脱
タコ・イイダコ 接岸の減少、漁獲激減​ 深場から浅場へ

貧酸素水塊発生時の釣り場選びと対策

貧酸素水塊が発生した場合、釣り場の選択が釣果を左右する最重要ポイントとなります。最も確実な対策は、潮通しの良い磯や外海に面した浜で釣りを楽しむことです。東京湾の場合、湾奥よりも湾口部や外洋側(太平洋側)の釣り場を選ぶことで、貧酸素の影響を大幅に回避できます。


参考)暑い時期の湾奥釣行には貧酸素水塊分布予測が必見かも :へた釣…

千葉県や神奈川県は、東京湾の貧酸素水塊の分布予測システムをウェブ上で公開しており、釣行前に底層の溶存酸素濃度の分布状況を確認できます。この予測図では、青色の海域(低酸素濃度)での釣りは極めて厳しく、緑色以上(比較的高酸素濃度)のポイントを選ぶことが推奨されています。ハゼ釣りのような底生魚を狙う釣りでは、特に水質の良し悪しが釣果に直結するため、この予測図の活用が不可欠です。

ポイント選定のチェックリスト。

千葉県の東京湾貧酸素水塊分布予測システム(リアルタイム情報)

貧酸素水塊発生時に有効な釣法と狙い目

貧酸素水塊が広がっている状況でも、釣法や狙う層を変えることで釣果を得られる可能性があります。最も有効なのは、表層を狙う釣りへのシフトチェンジです。夏の東京湾奥では、盛夏の表層でクロダイ(チヌ)の好釣果が得られることが知られており、5月頃の赤潮発生時にはチニングで爆発的な釣果が期待できます。これは、赤潮自体は魚に毒性を持たず、むしろ酸素濃度が高い表層に魚が集まるためです。

また、防波堤や護岸の足元にある捨て石周りや人工磯の隙間は、海底本体よりも高い位置にあるため、貧酸素水塊の直接的影響を受けにくい特性があります。若洲海浜公園などの人工磯エリアでは、ブラクリ仕掛けやワームを使った穴釣りでカサゴやメバルを狙うことが効果的です。これらの根魚は完全に海域から去るわけではなく、より酸素濃度の高い浅場や構造物周辺に避難している可能性が高いのです。

貧酸素時の実践的な釣法。

  • 🎣 表層サビキ:回遊魚(アジ・サバ・イワシ)を表層で狙う​
  • 🎣 トップウォータープラグ:シーバスやクロダイの表層捕食を誘う​
  • 🎣 穴釣り・ヘチ釣り:構造物周辺の局所的高酸素域を攻める​
  • 🎣 メタルバイブ:濁り時でも目立つキラキラと波動が効く​
  • 🎣 ルアーフィッシング:底を這わせず中層をトレースする釣法に変更

貧酸素水塊の消滅条件と好転の兆候

貧酸素水塊は永続的な現象ではなく、気象条件や季節の変化によって解消されます。最も効果的な解消要因は、台風や前線通過に伴う強風です。風速が通常の約1.5倍程度に強まると、海水の上下混合が促進され、貧酸素水塊が解消することがシミュレーション研究で明らかになっています。実際の釣り場でも、台風通過後は海水が撹拌されて酸欠が緩和され、釣果が回復する傾向が報告されています。


参考)頻発する猛暑が湖底の貧酸素化を引き起こす可能性|2023年度…

秋から冬にかけては、気温と水温の低下により成層が弱まり、自然に貧酸素水塊が消滅していきます。大阪湾では10月頃に表層と底層の密度差が僅かになり、底層の溶存酸素濃度が回復することが確認されています。東京湾でも11月以降には貧酸素水塊がほぼ解消し、シャコなどの底生生物の分布が湾全域に広がることが観測されています。


参考)アーカイブ集(Meiのひろば:生物のひろば05)

貧酸素水塊の消滅・緩和のサイン。

興味深いのは、貧酸素水塊の縁辺部では餌生物や捕食者が集積する現象が報告されている点です。貧酸素耐性の範囲内で境界部に留まる魚もおり、この「境界ライン」を見極めることができれば、釣果につながる可能性があります。ただし、この判断には溶存酸素計などの専門機器が必要となるため、一般の釣り人にとっては予測システムの活用が現実的な対応策となります。


参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejoe/74/2/74_I_498/_pdf

大阪湾貧酸素水塊分布情報(大阪府)
貧酸素水塊は、釣り人にとって避けられない夏の課題ですが、発生メカニズムを理解し、適切な情報収集と釣り場選択を行うことで、厳しい状況下でも釣果を得ることは可能です。特に近年は地球温暖化の影響で海水温上昇が進み、貧酸素水塊の発生規模や期間が拡大する傾向にあるため、釣り人としても環境変化への適応が求められています。日射や気温が平年並みであれば底泥による酸素消費が抑制され、貧酸素水塊の発生自体が抑えられることも研究で示されており、長期的な環境改善への取り組みも重要な課題となっています。


参考)https://www.ysk.nilim.go.jp/kakubu/engan/kaiyou/kenkyu/tokyo240820/01.tokyo23th_report.pdf




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