植物プランクトンは、水中に浮遊して光合成を行う微細な生物の総称であり、その種類は多岐にわたります。農業用水やため池、水田などで日常的に見られる代表的なグループには、大きく分けて「珪藻類」「緑藻類」「藍藻類」「鞭毛藻類」などが存在します。それぞれの特徴を知ることで、水質の状態や農業への影響を予測する手がかりとなります。
参考)https://www.thr.mlit.go.jp/bumon/b00037/k00290/river-hp/kasen/study/umi/umi04-2.html
参考)https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/eikyou_hyouka/attach/pdf/damu_suisitu-4.pdf
参考)https://mbrij.co.jp/wp-content/uploads/2024/04/2009_k6.pdf
国土交通省 東北地方整備局:植物プランクトンの種類と形の特徴についての解説
※上記リンクは、珪藻類や鞭毛藻類の基本的な形状や特徴について、図解を交えて分かりやすく解説している国土交通省のページです。
植物プランクトンと農業の関係は、単なる「水中の生き物」という枠を超え、肥料や土壌改良材としての積極的な利用が進んでいます。特に注目されているのが、珪藻類に関連する資材と、栄養塩の循環プロセスです。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7cf3d2b48ecbb8e8ad4ad3502761d55b11150e8c
AGRI SWITCH:ケイ酸肥料の効果と使い方について
※上記リンクは、珪藻土の成分であるケイ酸が、稲の倒伏防止や病害虫対策にどのように役立つかを農家向けに詳しく解説している記事です。
農業用ため池や貯水池において、植物プランクトン、特に藍藻類が異常増殖して水面が緑色のペンキを流したようになる現象が「アオコ」です。アオコの発生は農業現場において深刻なトラブルを引き起こすことがあります。
アオコの発生原因
主な原因は「富栄養化」です。畑から流出した肥料成分(窒素やリン)が池に蓄積し、夏場の高水温と強い日差しが加わることで、藍藻類が爆発的に増殖します。水温が25℃〜30℃になると発生リスクが最大化します。
参考)池のアオコ対策!安全なバイオの力でアオコをなくす方法をご紹介…
農業への悪影響
具体的な対策
参考)https://www.abios.gifu-u.ac.jp/education-member/ltdunion/file/8e4b9859e0acc4f21c09064de9673d47.pdf
農林水産省:農業用貯水施設におけるアオコ対応参考図書
※上記リンクは、農林水産省がまとめたアオコ対策のガイドラインで、発生メカニズムから具体的な防除技術まで網羅されています。
農業用水の状態を知るために、簡易的な顕微鏡観察を行うことは非常に有効です。水の色がおかしいと感じた時、それが泥の濁りなのか、特定のプランクトンの増殖なのかを見分けることができます。高価な研究用顕微鏡でなくても、倍率200倍〜400倍程度が見られる学習用顕微鏡で十分観察が可能です。
参考)藻類 Q & A
観察の手順
観察のポイント
自分の田んぼの水にどのような生物がいるかを知ることは、環境への理解を深め、より良い水管理につながる第一歩です。
理科のクエスト:プランクトンの観察方法を徹底解説
※上記リンクは、顕微鏡の使い方の基礎から、プレパラートの作り方、動くプランクトンを観察するコツまで初心者向けに丁寧に解説されています。
近年、植物プランクトンの「増殖」能力を積極的に農業や産業に利用しようとする研究が進んでいます。これは従来の「発生して困るもの」という視点から、「育てて利用する資源」という視点への転換です。特に注目されているのが、増殖スピードが極めて速い「スーパー珪藻」や、家畜排せつ物を利用した循環型農業システムです。
スーパー珪藻の活用
通常の珪藻よりも数倍速く増殖する「スーパー珪藻」と呼ばれる株が発見・育種されています。これらを培養することで、以下の用途が期待されています。
家畜排せつ物を利用した循環システム
農業分野で特にユニークな取り組みとして、家畜の尿や排水に含まれる高濃度の窒素やリンを、植物プランクトンの「肥料」として利用する研究があります。
通常、処理にコストがかかる家畜排水を使って有用な微細藻類(珪藻など)を培養します。育った藻類は、そのまま肥料として畑に戻したり、飼料として家畜に与えたりすることができます。これにより、廃棄物を資源に変え、肥料代や飼料代を削減する「資源循環型農業」が実現します。
参考)スーパー珪藻を速く、大量に、エコに増殖させる
この技術はまだ実用化に向けた実証段階のものが多いですが、将来的には農家が自分の敷地内でプランクトンを培養し、それを肥料や燃料として利用する時代が来るかもしれません。植物プランクトンは、単なる水中の微生物ではなく、未来の農業を支える「小さな巨人」としての可能性を秘めています。
香川大学:スーパー珪藻の増殖生態解明と活用手法の開発
※上記リンクは、スーパー珪藻の特性や、家畜排水を利用した培養試験など、最先端の農学連携研究について詳しく紹介されています。